エコノミストはいかにソーシャル訪問者を購読者にしたか?

英経済誌「エコノミスト(The Economist)」は、印刷版広告売上の減少をデジタル広告売上で埋め合わせきれていない。そのため、デジタル購読者の増大による収益増に注力している。

エコノミストが各プラットフォームに求めるものはきわめて明確だ。非購読者にリーチし、エコノミストのサンプルコンテンツを読んでもらい、購読者を増やすことである。

エコノミストのソーシャルメディアのフォロワーはこの1年間で、Facebook、Snapchat(スナップチャット)、Twitter、およびLinkedIn(リンクトイン)を中心に、25%増大し、4400万人に到達。購読者数も、まずイギリスのEU離脱後に急増し、最近ではドナルド・トランプ氏の当選後にも大きく伸びた。デジタル購読者は、2016年の1年間で30万3500人から34万5500人へと、14%近く増加している(エコノミスト全体の購読者基盤は150万人)。

「我々は気前がいい」

「無料で配信するコンテンツの量については常に議論している」と語ったのは、エコノミストの最高マーケティング責任者(CMO)で流通担当のマネージングディレクターを務めるマイケル・ブラント氏だ。「気前が良すぎると、購読の意味がなくなる。しかし、我々の考えはそれと逆だ。たくさんのプラットフォームにコンテンツを流通させ、雰囲気を知ってもらうことに懸命に取り組むという意味で、我々は気前がいい」。

エコノミストのペイウォールは従量制で、非購読者も週に3本の記事を閲覧できる。エコノミストでは、10名からなるソーシャルメディアチームがコンテンツを各プラットフォーム向けに再利用している。

たとえば、2015年に米国の殺人発生率が11%増加したという次のような内容は、Facebookに投稿する独立したコンテンツになる。それと同時に、詳細な記事へのティーザーも兼ねているのだ。

こうした赤いカードは独立したソーシャルメディアへの投稿として機能する

こうした赤いカードは独立したソーシャルメディアへの投稿として機能する

Facebookキャンペーン事例

エコノミストの計算によると、通常、読者が購読者に変わるのには9週間かかるという。エコノミストはニューイヤーのキャンペーンとして、リベラリズムの今後を理解するために2016年を振り返る記事を複数Facebookに投稿した。これによりオーガニックな投稿が増大し、それがよい効果を上げている。まず読者を似たコンテンツでリターゲティングし、それから購読を促すターゲティングしたディスプレイ広告を表示するのだ。

Facebook広告のニューイヤーキャンペン

Facebook広告のニューイヤーキャンペン

エコノミストはまた、大学に戻る学生たちと結びつくため、Facebookで6週間かけてコンテンツ主導の記事を120本投稿。テクノロジーの発展で変わりつつある職場に注目した内容で、資金を投じた投稿の効果は上々だった。

すべての投稿は仕事の未来に関する内容を集約したページにつながっており、そこで関連記事を無料で読めるようにしてある。このサンプルを、購読者になってもらう広告でリターゲティングしたところ、現在、購読の促進という意味ではエコノミストのなかでも極めて大きな成功を収めたキャンペーンになった。

世界で7600万人の潜在読者

エコノミストのデジタル購読者は2016年、着実に14%増加したが、これはその前年の30%増と比べると見劣りする。

「デジタル購読者数の伸びが鈍化したのは驚きではない」と語ったのは、調査会社エンダーズ・アナリシス(Enders Analysis)のメディアアナリスト、トーマス・カルデコット氏だ。製品の問題ではなく、より大きな経済情勢を反映したものだと同氏は言う。

また、エコノミストはデジタル版に移行する印刷版購読者の数も減少している。エコノミストには潜在読者がまだたくさんいる(エコノミストの調査によると、世界で7600万人が興味をもっているという)ものの、こうした潜在読者はどうしても、印刷版の読者よりもコンバージョンに長い期間と多くのコストがかかる。

新規顧客の獲得コストを節約

ブラント氏によると、Facebookからのコンバージョンはコスト効率がよく大規模に実現可能だという。同氏は、「読者はすでに軽く引き込まれているため、穏やかな売り込みになる。だとすると、そんな相手に購読をお願いするのはうまいやり方だ」と語った。

このターゲティング方法により、エコノミストは獲得コストを半分に下げられた。獲得コストは現在、「非常に低く、数十ポンド程度」だとブラント氏は言う。年間購読料は179ポンド(約190ドル=約2万5100円)だ。「生涯価値が高い。このルートで募った読者はロイヤリティが非常に高い。エコノミストの記事が習慣のなかに入り込むのだ」とブラント氏は語った。

失った購読者の数についてエコノミストは数字を提供していないが、2年間購読した人の離脱率は、1桁にまで減少している。

すぐれたケーススタディ

「うまく設計し、賢く実行する限り、無料コンテンツ提供で広告規模を拡大し、新規読者にリーチできることを示す、非常にすぐれたケーススタディだ。エコノミストが制作しているコンテンツを使えば、たいていの広告よりもうまく掲載される」と、カルデコット氏は語る。

エコノミストはまた、昨年10月に開始したSnapchatの「ディスカバー(Discover)」で毎週末に300万~400万人にリーチ。購読者のカスタマージャーニーの一部とするため、こうした閲覧に価値を置くモデルに取り組んでいる。現在、広告売上は「記事の制作費を超えている」と、ブラント氏は語った。

Lucinda Southern (原文 / 訳:ガリレオ)
Image: courtesy of The Economist, via Facebook.