脱インプレッションベースに舵を切る「エコノミスト」:アテンションベースなら認知率は約5倍

「エコノミスト」は、アテンション(注目)ベースの販売の最前線にいるパブリッシャーのひとつだ。問題は、この方式をどうやってさらに広めるかである。

「エコノミスト」は手はじめに、測定基準の確立に取り組んでいる。最初のキャンペーンの成果を明らかにして、広告の買い手たちをより多く、インプレッションベースから移行させようとしているのだ。アテンションベースでの販売という考えは、パブリッシャーにとっては魅力的だが、ほとんど広まっていない。同誌は2015年11月以降、アテンションベースの本格的なキャンペーンを展開し、つい最近第2弾を開始したばかりだ。

「エコノミスト」は2015年11月、大手アクセサリーブランドとともに初めてのタイムベースの広告キャンペーンを展開した。読者の「アクティブな」視聴時間が5秒間を超えた広告インプレッションに対して、クライアントに料金を請求したのだ。アクティブな視聴時間には、ページの上下スクロールやマウスの使用、キーボード入力といった操作も含まれる。いわゆる「CPH(Cost-per-Hour)」での広告販売だ。

クライアントは、ブランド考慮率(Brand Consideration)の上昇と、最終的にはもちろん売上高の増加を求めていた。アテンションの上限は30秒間に設定された。これは、読者が30秒以内に広告に気付かなければ見込みがなく、表示時間が増えるにつれてリターンが減る、という考えに基づいている(下図参照)。

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広告の表示時間が1〜29秒までは、飛躍的にブランド認知率が伸びる。30秒以降は停滞。

ニールセンが示したCPHの効果

ニールセンを利用して調査したところ、広告が表示された読者の間で、ブランド認知率(Brand Awareness)は10.6%上昇した。キャンペーン後にブランドを認識したという回答は、対照群の28%に対して39%だった(下図一番左)。

ニールセンによれば、ほとんどのクライアントのキャンペーンではブランド認知率の上昇が2.1%であることを考えると、これは高い数字だという。

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ブランド認知率の伸びは10.6%。競合4社よりもずっと高い。

「エコノミスト」のキャンペーンは、クライアントのライバル4社(上図右4つ)をも凌いだ。ライバル4社はいずれも、同時期にEconomist.comでCPMベースのキャンペーンを展開していたが、ブランド認知率の上昇は0.4~5.2%にとどまった。

5~30秒間アクティブに視聴された広告は、CPMで購入された同じ広告(0.14%)と比べて、CTR(クリックスルー率)も50%高かった(0.21%)。

「エコノミスト」は、自社サービスには自信があるので、クライアントが不満な場合は従来のCPM購入に基づく同価値のキャンペーンを無料で再展開すると申し出ていたが、その必要はなかった。

FTとアテンションベース競争

「エコノミスト」のライバルである「フィナンシャル・タイムズ」(元は同じグループ)は、タイムベースの販売の先駆者であり、9カ月間に13のブランドがタイムベースのキャンペーンを展開するという記録を達成した。「エコノミスト」でデジタル製品売上担当グローバル責任者を務めるアシュウィン・スリダー氏は、年末までに「フィナンシャル・タイムズ」の記録を上回り、15~20のタイムベース・キャンペーンを行いたいと語っている。

ベンダーのチャートビート(Chartbeat)やモート・アナリティクス(Moat Analytics)と提携することで、広告フォーマットを、編集や予想される読者のアテンションに合わせることができる、とスリダー氏は言う。

「たとえば、ページのトップにアイオワ州の予備選挙での出来事をリアルタイムで示すインフォグラフィックを掲載する場合、おそらくスコアボード(順位表)を配信したいと考えると思う。一方、別のページでは、読者の関心がページの下の方に向かうかもしれない。そのページでは別の広告フォーマットを提供するだろう」。

独立系モートが測定する指標

これまでのところは順調だ。だが、何十年も前からインプレッションベースでオンラインメディアを取引してきた広告業界は、変化を嫌がる。理由のひとつは、キャンペーンを追跡・測定しようと思っても、独立して検証された指標がないからだ。「エコノミスト」は現在、こうした指標に関してモート・アナリティクスと提携している。

「パブリッシャーやエージェンシーに代わって独立系プロバイダーが追跡できれば、透明性が高められる」と、スリダー氏は指摘する。

メディアコム(MediaCom)のデジタル担当責任者であるダン・チャップマン氏は、「エコノミスト」によるタイムベース指標の推進を歓迎しながらも、規模を拡大するには、「優れたキャンペーン」がどんなものかについて、エージェンシーが標準化するのをパブリッシャーが手助けする必要があると述べた。

標準化を確立できるか

標準化が確立されるまでは、「参加型」広告のようなフォーマットも魅力的だ。参加型広告とは、広告主に関する複数の選択肢がある質問に答えないと、読者が有料コンテンツを視聴できない広告を指す。

チャップマン氏は次のように語る。「ブランドについて違った切り口で考えさせられるのはすばらしいことだ。ただ、これまでのブランド指標と合わせられるよう、この方式を標準化するのを手助けしてもらう必要がある」。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)
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