2016年、現代的な「デジタルメディア」があるべき姿とは?

この記事は、ザ・バーバリアン・グループ(The Barbarian Group)のメディアおよび配信担当エグゼクティブディレクターを務めるコリン・ナージ氏からの寄稿です。

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細かい要素が雪だるま式に増えている。2015年、ウェブは実に醜い場所になった。ページビューを稼ぐための仕掛けとわずらわしい広告が、あまりに増えすぎているのだ。不快で重い動作が当たり前になってしまっている。

この問題の本質は、パブリッシャーのニーズが消費者のニーズと一致していないことにある。一般の人々はシームレスに情報へアクセスしたいと思っているが、パブリッシャーはお金を稼ぐ必要があるのだ。この利害の衝突は、目に見えて起こっており、これまではパブリッシャーが優勢な状況だった。

だが、アドブロックの登場は、消費者がウェブ体験を我慢できるレベルにとどめておくために反撃していることを示す動きといえる。そして、アドブロックはいまも拡大を続けている。

トップページ崇拝をやめる

2016年に注目すべき大きな動向は、大手プラットフォームがパブリッシャーとうまく協調できるような形に進化すると予想されることだ。ますます多くの有名なパブリッシャーが、今後はプラットフォームを利用し、トップページの崇拝をやめるようになるだろう。

FacebookとTwitterは、まずシンジケーションによる、次におすすめのコンテンツという形で、この動きを実現させた。これらはすべて、より多くのユーザーに配信し、より多くの関心を獲得するための取り組みなのだ。

また、エヴァン・ウィリアムズ氏(元TwitterCEO)が設立した新興プラットフォームのMedium(ミディアム)にとっても、この1年は重要な年になりそうだ。同氏は、自身が設立したブロガー(Blogger)やTwitterを使って、信じられないほど鋭いメディア情勢分析を過去に展開していた人物。先ごろ、「リコード(Re/code)」の取材に対して次のように述べた

「メディアにとってバラバラであったものが収束するときが来るだろう。そして、これからはウェブで公開することの意味がますます弱くなる」。

もちろん、ウィリアムズ氏は自分に有利な発言をしているとも言える。だが、この数年間にメディアの地殻変動が起こっていることを考えれば、同氏の見方はもっともだ。

モバイル、プラットフォームとの協調

この取り組みをスムーズに実施するには、取り入れるべきことがいくつかある。「ワシントンポスト」のデジタル責任者コーリー・ハイク氏は「ニーマン・ジャーナリズム・ラボ(Nieman Journalism Lab)」で次のように書いた

「パブリッシャーがこれを本当に価値あるものにするには、いくつかのことが必要になる。適切な分析、収益化のメカニズム、製品開発パートナー、そしてプラットフォームネイティブなコンテンツを作成するための斬新なアイデアだ」。

パブリッシャーがこうした取り組みをどのようにうまく行えるようになるのかは、まだわからない。通常、プラットフォームは、Uber(ウーバー)が自社で車を持つことに関心がないとの同じくらい、自社で詳しいニュース記事を書くことに関心がない。

一方、パブリッシャーは、もはやトップページを訪れることのない、新しいオーディエンスを多く必要としている。この取り組みがどのように展開されるのか、非常に興味深いところだ。

そのほかにも、Googleが進めている「Accelerated Mobile Page」(AMP)プロジェクトのような新しいモバイル標準規格が、ページの読み込み方法を進化させ、我々は外出先ですばやく効率的に情報を利用できるようになる。Facebookの「インスタント記事(Instant Articles)」もほぼ同じことをやっており、ニュース記事をより動的なものにした。

重視すべきはクオリティ

パブリッシャーは今後、自分たちの活動をきれいに整理するという大きなプレッシャーに直面する。彼らはいまのところ、アドブロックが使われている状況に対して一斉に対応する姿勢は見せていない。だが、当然のことだが、ページがすばやく見やすい形で読み込まれるようになれば、人々はより多くの時間や関心をサイトに向けるようになるだろう。

また、品質にフォーカスするという逆の動きが出てくることも予測される。「ザ・ニューヨーカー(The New Yorker)」は最近、「ポインター(Poynter)」の取材に対し、次のように答えた。適切な配信方法に重点的に取り組み、オンライン記事に時間と労力を費やす「ウェブ編集構成スタッフ」(思わず驚く言葉だ)へ投資することで、大きな利益が得られた、と。

Newyorker.com」のエディターであるニコラス・トンプソン氏は、「我々が見い出したもっとも明るい材料は、自分たちがより満足できる記事を書き、より多くの労力を記事に費やせば、より多くの読者を惹きつけられることだ」と、語った。結局は、品質がもっとも多くの見返りを与えてくれるのである。

エンドユーザーを尊重する

広告エージェンシー側から見れば、この話は、メディア体験のアイデアと新しく出現した分野に簡単に当てはめることができる。ユーザー体験では共感とエンドユーザーが重視されるが、オーディエンスへブランドメッセージを届ける使命をもった人々にも同じことが言えるのだ。

現在のところ、この分野を牛耳っているのはメディアエージェンシーだ。広告を大型のメディア契約のなかに取り込み、インプレッションを大量に購入し、人々に干渉し、スイッチを切り替えて、手順を省こうとしている。だが、体験とニュアンスの重要性が高まっている世界では、このアプローチはもはや機能しない。

ニュースフィード広告やインスタグラムのカルーセル広告、その他の協調的な広告など、新しくてスマートなインベントリ(在庫)が登場するなかで、興味深いコンテンツを作成して、ターゲットを絞った形でそれらを提供し、もっとも重要なことだが、エンドユーザーを尊重することの重要性が、いま高まっているのだ。

ブランドは、リーチ中心の広告を整理し、興味深いおすすめコンテンツをフィードに表示する方法を見つけ出す必要がある。また、メッセージに深みとニュアンスを追加するパブリッシャーを見つけ出し、スマートに提携する方法を考え出す必要があるのだ。

それとともに、断片化していることが多いソーシャルエコシステムを最大限に活用する方法を理解する必要がある。また、非常に鋭い分析をこのプロセスへ緊密に統合することも必要だ。

コントロールを奪い返すチャンス

このことは、私が知っているほとんどの大手メディアエージェンシーの権限や能力を越えている。また、社内コミュニティやソーシャルにフォーカスしたチームの権限を越えるものだ。

2016年は、広告エージェンシーにとってスマートなメディアと配信方法を実現する1年にする必要がある。また、スプレッドシートやリベートに支配されている一部の大手メディアエージェンシーから、ある程度のコントロールを奪い返すチャンスとすべきなのだ。

広告とメディアは、かつてない方法で再び一緒になろうとしている。そして、新しくて有効なパブリッシング手法の登場により、エンドユーザーに寄り添い、彼らと共感できる方法で興味深いコンテンツを提供する方法が出てきた。これは、API経由で購入して実行できる拡張性の高い手段では必ずしもない。スマートな技術と分析に支えられながらも、人間味と直感を必要とする方法だ。

フェリックス・サーモン氏は、「ニーマン・ジャーナリズム・ラボ(Nieman Journalism Lab)」に掲載した鋭い分析記事で、次のように述べている。「プライバシーを力ずくで奪い取り、侵害するやり方がもはや機能しなくなったときこそ、広告がその価値を示し始める」。

そして、賢明な配信方法をこの方程式に追加しよう。これが真実であることを私は心から期待している。

Colin Nagy(原文 / 訳:ガリレオ)
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