「デジタルメディアは拡大策に走り過ぎている」:マッシャブル最高コンテンツ責任者ギットリッチ氏

2013年10月、新興デジタルメディア企業マッシャブル(Mashable)は、ニューヨークタイムズ(the New York Times)元編集長のジム・ロバーツ氏を迎え入れ、競合相手がひしめく一般ニュースという領域に野心をもって飛び込んだ。つまり、ウクライナでの対立を伝えるニュースにリソースを振り向け、ニューヨークタイムズやCNNと競い合ったのだ。

それから2年半が過ぎ、マッシャブルは上げた帆をたたみはじめている。マッシャブルは2016年4月7日、従業員30人の解雇とともに、今後はテクノロジーやエンターテインメントといった、同社にとって核となるいくつかの分野に焦点を絞っていくと発表。最高コンテンツ責任者(CCO)もロバーツ氏からグレッグ・ギットリッチ氏に交代した。デイリーニュース(The Daily News)やNBCニュース、ボカティブ(Vocativ)で働いた経歴をもつギットリッチ氏は、「文化とテクノロジーが出会う場所」でマッシャブルの明確なアイデンティティーを確立することに注力すると述べた。

ギットリッチ氏は米DIGIDAYの今週のポッドキャストで、次のように語った。「明確なアイデンティティーをもつこと、そして、自分たちにとって専門知識や強みのある分野が何かを知ることは重要だ。一般ニュースは、太陽を追いかけるようなものだから大変である。NBCニュースやBBC、AP、ロイターと競争するだけでなく、モバイルとともに事件現場へ居合わせる一般の人々とも競うことになる」。

ここで紹介するのは、30分間のポッドキャストに少し手を加えてまとめたものだ。

多くのデジタルメディアは、規模の拡大を求めるあまり道を見失っている

マッシャブルの人員削減と、BuzzFeed(バズフィード)の売上が予測を下回るというニュースが示すように、メディア業界では、振り子の向きが変わり、多くのオーディエンスを集めてきた企業から離れようとしている。巨大なオーディエンスを巡る競争の足元で、巨額の資金調達ラウンドが繰り返され、特に広告料が減少し続けるなかで、マッシャブルのようなパブリッシャーには早く大きくなる方法を見つける以外に選択肢がなかった。

パブリッシャーが編集権限の拡大を計ってきたことについて、ギットリッチ氏は次のように述べている。「オーディエンスを探し、スケールアップする方法を探ってきた。それは確かだ。この5年間で、配信される記事の量は増えた。記事はすでにたくさんあったが、作られる記事の量はさらに増えた。記事の量がたしかにたくさんあった。だが、いまオーディエンスの注目を集めようと競い合っている記事の量は、はるかに増えている。だからこそ、ひとつの分野にフォーカスし、そこで確固たるアイデンティティーや発言力をもつことが重要なのだ」。

マッシャブルのフォーカスは「カルチャーとテクノロジーの出会い」

すべての人に向けて、すべてのニュースを伝えることはできないということをパブリッシャーたちが悟り始めたいま、問題は具体的に何を伝えていけばいいのかということだ。マッシャブルは、ソーシャルメディアを専門に扱うブログとしてスタートした。一般ニュースに手を出した後だからこそ、ギットリッチ氏はある意味、原点回帰を目指している。テクノロジーが文化や社会をどのように変えているかという視点からあらゆる物事を見ていくというのがこれからの方針だ。

「我々のオーディエンスは若い。彼らにとって、デジタル生活と現実生活を分けることは不可能だ。彼らは、テクノロジーを自分たちのために上手く活用している。最新技術の登場に不安など感じず、どう楽しむか、それがいいか悪いかに関心をもっている。我々が報道における発言についてどう考えているかと言えば、十分に情報をもっていたい、それが適切な場合には読者を楽しませたい、そして楽観的でいたいということだ。大切なのは、その発言に一貫性があること。これが今後の課題だ」。

すべてのパブリッシャー同様、マッシャブルには多様な収入源が必要

メディア業界に多くの苦悩をもたらしているものは、広告、特にディスプレイ広告のコモディティ化だ。売上ポートフォリオに占める広告の割合が高すぎるパブリッシャーは、収入源を多様化する必要がある。マッシャブルの場合、それはより多くのブランデッドコンテンツを使って標準化された広告を補ったり、バイラル情報監視技術のライセンス供与を継続したりすることを意味する。

「我々はもちろん、間違いなく我々の競合相手も、お金を稼ぐ方法を複数探っている。私はオーディエンスを特に重視するタイプの人間だ。マッシャブルはオーディエンスとともにはじまっている。現実路線をしっかり歩みつつ、オーディエンスのパターンを熟知しておかなければならない」と、ギットリッチ氏は語る。

動画はオーディエンス主導型の現象

BuzzFeedやほかのパブリッシャーと同様、マッシャブルも動画に重きを置いている。最高経営責任者(CEO)のピート・キャッシュモア氏は、動画は今後推し進めていく主要分野になると語った。ギットリッチ氏も、マッシャブルが作成するコンテンツの半分は、Snapchat(スナップチャット)のストーリーかドキュメンタリーかを問わず、さまざまな形の動画になると予測する。だが、これは運頼みの賭けだと見る向きが多い。動画はまだ広告料が高く、Facebookのようなプラットフォームがそれを望むので、パブリッシャーも反応しているだけだという。一方ギットリッチ氏は、これはオーディエンス主導型の現象だと主張した。

動画熱がオーディエンスの要求によるものか、企業が仕掛けたものかという点に関して、ギットリッチ氏は次のように見ている、「ふたつを分けることはできないと思う。動画は作成や配信が簡単で、スマートフォンやApple TVなどのデバイスで楽しんで見られることは、疑いようのない事実だ。5年前なら、動画を見る最善の方法はWebサイトを開き、動画がはじまるまで、おとなしく座ってプレロール広告を観ていることだった」。

Brian Morrissey(原文 / 訳:ガリレオ)