「質」の時代に「量」から逃れられないパブリッシャーたち

コンデナスト(Condé Nast)のエグゼクティブでありインタラクティブ広告部門のチェアマンであるジム・ノートン氏のスピーチは称賛を集めた。

アメリカのオンライン広告の業界団体インタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:IAB)が毎年開催するリーダーシップ・ミーティングでのことである。釣りタイトル(クリックベイト)やフェイクニュースが蔓延するなか、クオリティの高いエディトリアルコンテンツの横でのみ自社の広告が表示されるよう、ブランドたちは取り組まないといけないと呼びかけたのだ。

2017年、クオリティが大声で求められているがデジタルメディア業界では、スケールに対する需要は決して消えたわけではない。

株式公開、もしくは会社を売却することをめざし、マネタイズに勤しむ広告主体のパブリッシャーたちにとってスケールは重要だ。そして、バイサイドにとっても重要である。ブランドやエージェンシーと話しをする際、月間のユニーク訪問者数は会話の一番最初に上がる。Vice Mediaといったパブリッシャーたちも、いまだに彼らの抱える独立したサイトたちをコムスコアのオーディエンス総計に含めているのはそのためだ。

アソシエイテッドコンテンツ(Associated Content)の元CEOで、シェアスルー(Sharethrough)の社長であるパトリック・キーン氏は言う。「2017年の広告バイイングにおいて、いまだにコムスコアの表を手に、何を購入すべきかを決める20代のバイヤーがいる。ブランドやエージェンシー同様、彼らにとっても従来の大きなサイトブランドに囲まれることが重要なのだ。彼らは同じ口でまったく矛盾する発言をしている。結局、クオリティよりもスケールのほうが重要なのだ」。

バイサイドに潜む問題点

ユーザー・ベースのターゲティング手法が台頭し、広告のビューアビリティ(可視性)が重視されるようになったいま、両方を確実に運営するためにはスケールが必要であると、ポップシュガー(PopSugar)のジェフ・シラー氏は言う。

「もちろんクオリティとクリーンなサプライチェーンにフォーカスが置かれるものの、パブリッシャーがそれだけをベースに営業するのは困難だ。有機的な成長もしくは(買収といった)無機的的な成長を通じて、そこに辿りつくしかない」。

ポップシュガーはオーディエンスの特性が混ざっていないことをプロモーションの中心に据えている。ほかのサイトをコムスコアの数字に含めていない。そしてエージェンシーとのミーティングにおいては、オーディエンスのリーチとともにエンゲージメントも揃えてプレゼンすると、シラー氏は述べた。

しかし、近年のエージェンシーの運営方法もあり、限られた時間のなかでエージェンシーの人間は、ただコムスコアの数字だけを見てしまいがちだ。それがスケールを持つパブリッシャーにとって有利に働くのだ。「我々は若い世代に向けたコンテンツを書いているので、若いバイヤーたちは我々を気に入ってくれているが、すべてのブランドがそういうわけでは無い。明らかにそれは問題点となっている」。

賢い広告主は異なる

「大きいこと」の意味は昔と変わった。バナー広告を無視する人が増え、オーディエンスへリーチするために以前よりも多いインプレッションが必要となっている。そして、パブリッシャーはその需要に応えてきた。人々は携帯電話で、もっと時間を費やすようになった。携帯電話ではスクロールやクリックがより容易になり、パブリッシャーはオーディエンスを得やすくなったが、それは必ずしもエンゲージメントにつながらない。

「以前であれば100万のユニーク訪問者という数字は自慢できるものであったことを覚えている。(しかし今日では)エージェンシーが「少なくとも2000万は必要だ」と言ってくる。1000万でもこの時点ではもはや意味がないのだ」と、キーン氏は語った。

より洗練されたバイヤーは、オーディエンスの数字だけで留まらない。キーン氏は言う。「賢い広告主はビデオを最後まで見たかどうかのデータをチェックする。数字はメディアレーティング協会(MRC)が認定したものなのか、これは本当のオーディエンスなのか、これは本当のページビューなのか」。

品質管理は欠かせない

リーチはこれまで同様、重要であることは事実だ。そのうえでクオリティも重要なのだと語るのは、メディアアソシエイツ(Mediassociates)のマーケティングコンテンツ部門シニアバイスプレジデントのベン・クンツ氏だ。

プログラマティック広告バイイングの台頭によって、偽証トラフィックや怪しいコンテンツに広告が表示されるといったリスクも増えている。そのためエージェンシーたちは、さまざまなツールや手段を用いてキャンペーンが意図したオーディエンスに届くように取り組み、オーディエンスがどれだけエンゲージしているかを測っている。

「リーチは持っていないといけない、しかしクオリティをコントロールする必要がある」と、彼は語った。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)
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