BuzzFeedにおける「フェイクニュース」専門家の1日:「私は『プロパガンダ』という言葉を使う」

BuzzFeedの最初のメディアエディターであり、フェイクニュース専門家のクレイグ・シルバーマン氏は、何年も同トピックを研究してきた。しかし、大統領選挙までの数カ月間で、事態はかつてないほどの規模に膨れ上がった。政治に関わるものがその中心だ。

トロント在住のシルバーマン氏は、もっともらしく見えるフェイクニュースを反証し、ほかの組織・団体がフェイクニュースを撃退するのを手伝ってきた。シルバーマン氏は言う、「いま一番難しいのは、とにかく数が多いことだ」。

最近になって、この話題に注目が集まるようになったことは、良いことだと考えてはいる。とはいうものの、「フェイクニュース」という言葉の意味が薄れてきていることをシルバーマン氏は心配している。

「記事で『フェイクニュース』という言葉を使うたびに、自分でもちょっと虚しくなってしまう。この言葉はあまりに間違って使われてきたため、もう意味を成していないからだ。だから、私は代わりに『でっち上げ(hoax)』や『プロパガンダ(propaganda)』という言葉を使うようにしている。記事を書くにしても、『フェイクニュース』とヘッドラインに入れた方が注目は集まるかもしれない。ただ混乱を増やしてしまうことが心配なんだ」と、彼は語る。

シルバーマン氏の典型的な1日は、次のような流れになっている。読みやすさのために若干の編集を加えた。

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06:00 am ニューヨーク行きの飛行機に乗るためにいつもよりも早く起きる。大統領選以降、少なくともひと月に1度は行くようになった。今回はBuzzFeedが明日の夜に主催する、フェイクニュースについて語らうディナーに参加するためだ。

06:30 am 空港までの道のりでも記事作成に勤しむ。「トランプ大統領とロシア政府に関する嘘だらけの主張」を反証しようとする匿名の「事実確認サイト」の背後にいるというアメリカ人留学生(ロシア在住)について調べてきた。インターネット上の掲示板Redditのユーザーが、この人物とサイトを結びつける情報を発見しており、私はそれを確認するために調べている。ドメイン登録記録やほかの情報源を遣い、この人物が実際にサイトのオーナーであるということを確かめようとした。こうやって、誰がサイトの背後に存在しているか知るために、ドメイン登録記録やパブリックに入手可能になっている情報を利用するのは、よくあることだ。

07:05 am 空港に着くと、ニューヨーク支局のスタッフのために、メイプル・クッキーを買う。基本的に、メイプルクッキーをもたずして、ニューヨークのオフィスを訪ねることは許されていないんだ。

08:35 am 機内でも記事に着手。また、来週ライアソン大学で行う、フェイクニュースとオンラインに存在する誤った情報についての講義の準備をする。飛行機が着いたら、記事を副・ワールドエディターのヘイズ・ブラウンにメールで送る。

10:44 am タクシーを降りたらブルック・ボレル氏に電話する。彼女は『事実確認のためのシカゴ式ガイド』の著者だ。フェイクニュースとその反証について話をしたいということだった。人々がひとたび誤った情報を受け入れてしまうと、正しい情報について説得することは非常に難しいということについて、彼女と私は同意している。オンラインの誤った情報や偏見、情報収集における偏りについて、私が解決法をもっているかのように人々から期待されることがよくある。人間の性というのがこの問題には大きく関わっている。大きなプラットフォームやアルゴリズムによって、誤った情報や偏りは拡大されてしまっており、この問題はそれと衝突している現状だ。

11:15 am ベン・スミス編集長とオンラインの保守メディアについての私の記事アイデアを議論する。彼は取材するべき相手の連絡先をいくつか送ると約束してくれた。

12:00 pm 非公開ブリーフィングをFacebookのプロダクトマネージャーと行う。トレンディングプロダクトに関する変更点についてだった。

12:25 pm ニューヨークオフィスでは月曜日と水曜日はランチが無料で提供される。自分のデスクでサラダを食べながら、PDFからメタデータを抽出できるツールについて勉強する。私はいつも新しい調査ツールやテクニックを求めているんだ。このツールは前述のロシア在住のアメリカ人の調査にも使える。彼が関わっていると考えられる、匿名の事実確認グループはレポートをPDFで公開したからだ。

02:30 pm フェイクニュースサイトやその他の信頼性の薄いサイトで、何がトレンドとなっているかチェックする。使うのはバズスモウ(BuzzSumo)、Twitter、そしてクラウドタングル(CrowdTangle)だ。最初、2014年にフェイクニュースを観察しはじめたとき、定期的に閲覧するサイトは12から15個あった。いまではおそらく100個以上になっている。

02:40 pm フェイクニュースに関するGoogleアラートが届き、フェデラリスト(The Federalist)のショーン・デイビス氏による記事を読む。これは、ジャーナリストたちがトランプのニュースに過剰反応していること、もしくは事実を間違って理解しているということに関する記事だ。これまでも見た類の記事だ。

02:50 pm トレンドになっているものをチェック。ゲイトウェイ・パンディット(Gateway Pundit)上のウィメンズマーチのオーガナイザーのひとりについての記事が注目を少し集めている。BuzzFeedのソーシャルニュースチームがすでにそれについて調べているようだ。昨晩のニュースレターの開封率もチェックする。こればっかりは気になってしまう……。

03:03 pm 我々カナダチームが公開した良質の調査報道についてツイートする。

03:05 pm ワールドエディターであるミリアム・エルダーから例のロシアの記事についての編集を受け取る。自分でも加筆修正をし、彼女に送り返す。法務にも後ほど送ってレビューをしてもらう。

03:56 pm 事実確認/調査のための情報源やツールのリスト載せたURLを同僚からメールで尋ねられる。リストはパブリックになっており、ここで見られる

04:36 pm ワシントン大学のコンピューター科学者であるケイト・スターバード氏にメールをする。トレンディングの変更点についてコメントを求めた。以前私が書いた記事で彼女は、Facebookはプラットフォーム上で幅広くエンゲージメントを集めているコンテンツをプロモーションする必要があると語ってくれた。そして今回Facebookが発表した変更点のなかにまさにそれが含まれていたのだ。

04:44 pm BuzzFeedのエンターテイメントサイトで勤務するエディターからメッセージを受け取る。メディアリテラシーに関する公共広告風のコンテンツを作ることを考えているとのこと。私にできることがあれば何でも手伝わせてもらうと言った。

05-06:13 pm レトロレポート(Retro Report)のインタビュー撮影。題材は……そう、フェイクニュース。

07:28 pm ホテルにチェックイン。向かいにあるチポートレイ(Chipotle)に行き、晩御飯を買う。TVドラマ「モダン・ファミリー」を見ながら食事。家にはふたり子どもがいて、ケーブルが無いので、テレビを少しでも観るという行為はなんだか変わった、特別なことのように思えてしまう。フォークの代わりにチップスでステーキサラダをすくいあげる。そうしたら、太もものうえにすべてが落ちてしまう。でも大丈夫、大事には至っていない。

09:29 pm ワシントンD.C.のトランプ反対デモでリムジンが燃やされた人の記事がワシントン・イグザミナー(Washington Examiner)に載った。これはすぐに反証チームの同僚たちのSlackのチャットで議論される。私もチェックしてみたが、これは事実のようだ。

09:38 pm 人々が誤った情報を受け入れてしまいにくくする賢い戦略を開発したというリサーチャーについての記事を読む。

09:54 pm Googleの助成金によって、ルーマニアのチームがトラストサービスタ(TrustServista)という新しいツールを開発している。ある記事がひとつのウェブサイトから次のウェブサイトへと広がる経緯を特定することができ、最終的にはどこからその話が発生したのかを突き止めることができるようになる狙いだそうだ。今日、ログイン情報を受け取ったので、ちょっとだけログインして試してみた。いまアルファモードなので、まだ大したことは起きていないが、今後注目していきたい。

10:15 pm ラップトップを閉じてティム・ウー氏による『ザ・アテンション・マーチャント(The Attention Merchants)』を読む。これは広告と人々の注意を捉える行為の歴史についての本だ。テレビやほかのマスコミ手段にどう社会が反応してきたのか、歴史的な知識を得たいと思ってきた。そして、それがFacebookにどう適応されるのか。この本はそれを理解する助けとなっている。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)
Photo credit: Elamin Abdelmahmoud