21媒体を一括担当、ハーストのタレント出演交渉者の1日:「人選は新鮮でクリエイティブな視点から」

ノハン・アミノシャレイ氏は大手メディア出版社のハースト・マガジン・デジタルメディアのエンターテインメントディレクターだ。それと同時に「出演契約交渉担当者」または「ブッキング担当者」として知られている。彼はハーストが抱える、女性メディアの「コスモポリタン(Cosmopolitan)」、生活情報メディア「カントリーリビング(Country Living)」、そして男性ファッションメディア「エスクワイア(Esquire)」に至るまで、21ものデジタルメディアの有名タレント出演交渉を担当している。

31歳のアミノシャレイ氏は自身の仕事について、有名人を撮影する際は、新鮮でクリエイティブな視点からタレント探しをしていると話す。最近、「エル(Elle)」のノスタルジアと最新トレンドを組み合わせた企画で掲載された、ドラマ「プリティ・リトル・ライアーズ」で人気の女優ルーシー・ヘールが、映画『クルーエル・インテンションズ』を再現するような写真が良い例だ。また「コスモポリタン」で掲載された、「モダンファミリー」出演の女優アリエル・ウィンターが過去のテレビ番組や映画に登場した、意地悪女子に扮する写真も同氏がアサインしている。

また、「ハーパーズ バザー(Harper’s Bazar)」で「ゲーム・オブ・スローンズ」出演女優のナタリー・ドーマーが、同ドラマのスポイラー役に扮したシネマグラフのように、特殊な撮影を行うと、多くの調整や単調な作業を要するが、その分見返りも大きい。アミノシャレイ氏によるとその記事は、一時、ハーストのメディア全体における総トラフィックの5分の1を記録したという。

「この記事は、私が思い描く、もっとも最高の形のコンバージョン事例となった」と、アミノシャレイ氏。「素晴らしい結果に終わった。『ゲーム・オブ・スローンズ』も我々とともにソーシャルメディアでシェアしてくれた」しかし、なんの犠牲も払わなかったわけではない。「記事制作上、あそこまで完全にネタばらしされてしまったのは、はじめてだった」。

以下では、彼のある1日を紹介する。

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Nojan-Aminosharei-at-hearst

06:45 am 1回目の目覚ましを止める。起きるまでにはあと3回は同じことを繰り返すことになる。私のアラーム曲はニッキー・ミナージュの「アナコンダ」。ご近所に嫌われるわけだ。

07:05 am Twitter、インスタグラム、NYT Nowアプリやページ・シックス(Page Six)に目を通す。ハイとローのバランスをとらなければ。ページ・シックスを読んでいるとインターネットが食いつきそうなハイカロリーのセレブリティーコンテンツへのアイデアが掻き立てられる。

07:30 am 昨夜遅くロサンゼルスから届いたメールを見るために受信箱をチェック。「Elle.com」を自身のポートフォリオにしたいと望んでいた2人の若い女優から、出演OKのメールが届いていた。しかし、そのうちの1人の女優が、海外で撮影中のため参加できなくなったことを知らせる3通目のメールも。「ザ・ゲットダウン(The Getdown)」のキャストメンバーを代表する広報担当者は、当社サイト「Esquire.com」のキャスト撮影をいかに気に入ったか、を知らせてくれた。1日のはじまりとしては上々だ。

08:00 am 最近気に入っているポッドキャストの「マイ・フェイバリット・マーダー(My Favorite Murder)を聞きながらランニングに出かける。ジョンベネ事件の真実が、いままさに解明されようとしていると確信。この件について再び興味を掻き立てられたのは私だけではない。今日このあと、同事件についてCBSが3部構成のドキュメンタリー連続番組を、ライフタイム(Lifetime:テレビネットワーク)はテレビ向け動画の製作開始を発表する。

09:15 am 電車に乗るまでの道々、今度はポッドキャスト「ユー・マスト・リメンバー・ディス(You Must Remember This)を聞く。私が知るカルチャー分野のカテゴリーのなかで1番のお気に入りだ。いまのところ緊急のメールは来ていないので、電車のなかではポケモンGOを楽しんだ。オフィスに着くまでにコダックを2匹ゲット。

09:45 am 明日、ロサンゼルスで「Elle.com」向けに有名人の写真撮影の予定がある。撮影のプロデューサーが予算について話したいと私のデスクで待っている。

10:31 am メール確認に戻る前に、「バルチャー(Vulture)」「バラエティ(Variety)」「ザ・ハリウッド・リポーター(the Hollywood Reporter)」「デッドライン(Deadline)」といったセレブ系ニュースサイトに目を通す。エイミー・アダムスのSFドラマ「アライバル(Arrival)」のトレイラーを見ると、即座にiBooksで映画の原作となる短編を収録した本を購入した。映画化されていない本を読むのは数年ぶりのことだ。

10:45 am 21もあるデジタルメディアのスケジュール調整を行うということは、日々未読のメールが3桁を超えないように悪戦苦闘することだ。私はモバイルではプロダクティブ(Productive)アプリを利用して受信箱を空にしている。私のメールボックスでは売り込みメールのログを取って「タレント問い合わせ受信」と「タレント問い合わせ送信」にバーチャル付箋で振り分けている。この時間はパートナーシップのディレクターと、「CountryLiving.com」で手掛けるパッケージについてチャットしていた。スポティファイ(Spotify)でドリー・パートンを聞きたい気分になった。

11:00 am 15歳の俳優があいさつにやってきた。彼はいたずら好きで、私たち3人は時間を忘れて面白おかしく会話をした。しかし、これはただの遊びやゲームではない。広報担当者がクライアントを連れてくるときは、21のWebサイト出演のオーディションが目的でもあるのだ。そして、役者に直接会えば、プレスパケットを読むより、よほどいろいろなことがわかる。役者やミュージシャンとのコミュニケーションを通して、その隠れた才能を発見し、独創性あふれる写真や動画のコンセプトが生まれることもある。紙面やスクリーンでの見栄えが良い、というだけのことではない。タレントがどんなサイトでオーディエンスとどのようにコネクションをもつのかを理解するには、対面で会うのが大切だ。

トム・クルーズとドラッグレースを行い、いまはパイロット免許取得をめざしているある女優は、果たして「PopularMechanics.com」向きか? はたまた副業としてペストリーを焼く俳優には「Delish.com kitchen」が合っているのか? あるいは15歳の少年を起用するのはどうか。以前、この少年は「Seventeen.com」で起用された。彼をアサインしたのは私だ。

12:15 pm 明日の撮影関連でやり残したことがまだいくつかあるので、プロデューサーのオフィスに立ち寄る。明日のスター撮影の手配人へ電話をかけたが留守電だった。

12:30 pm 「ザ・ウォーキング・デッド(The Walking Dead)」出演俳優が来訪。さすがに興奮した。それからこの俳優に制作スケジュールを訪ねる。映画の公開間際にはどのような時間枠で取り組むことになるのかを知るのは良いことだ。インターネットの人々は「ザ・ウォーキング・デッド」を大変好むが、そのうえをいく作品もあるのだ。

01:15 pm スナップチャット(Snapchat)、インスタグラムのストーリーズ、Facebookのライブ動画で行う、ライブプログラミングの責任プロデューサーが、新たなFacebookライブ動画シリーズをローンチする。そこで何人かの有名人またはインフルエンサーに出演してもらうためのブレインストーミングをしたいという。我々でタレントの最有力候補を絞る。

01:25 pm 再び先述のプロデューサーのオフィスへ。また留守電に。

01:30 pm コンテンツマーケティング会議に参加。ほかにはサイトディレクターや記事のエディター、そしてPR担当者など18名が並ぶ。従来のPRチャンネルを超えたところで、我々の記事がシェアされるための戦略や成功談を共有した。私自身としては、最良のコンテンツディストリビューションとは、タレントたちが自身の出演した記事をソーシャルでシェアし、自身のファンに宣伝することだと考えている。さらにテレビ番組、映画、レコードレーベルのソーシャルメディアチームと協力することも重要だと捉えている。テレビ局や制作会社が彼らのソーシャルアカウント上で、どんなことを発信しているのかを知ることが、記事に投入するリソース数を決めるひとつの基準となる。

02:00 pm またもやプロデューサーのオフィスへ。やっと電話がつながった!

02:35 pm 食堂のランチタイムが終わってしまい、生野菜とバジルペーストのランチボックスを手に取る。例の、トランプのフレーズを引用するとしたら、「悲しい(Sad)!」と叫びたい気分だ。

02:45 pm 昼食として人参を3つ食べたところで、「HarpersBazaar.com」のサイトディレクターに引っ張られ、彼女と記事編集者が活字媒体雑誌のプロジェクトに呼びたい、有名人希望リストを見直すミーティングに参加。

03:00 pm サイトをいくつも掛け持っていると、同じPRメールが何通も届く。デスクに戻ると同じデザイナーによる秋のマスコミ向け内覧会への招待状が5通も受信箱に届いていた。私はファッション編集者ですらないのに。

03:05 pm ロサンゼルス時間で正午を過ぎたので、西海岸にいる人たちとメールのやり取りを開始。「Cosmopolitan.com」「Elle.com」「HarpersBazaar.com」「MarieClaire.com」の編集者にそれぞれの編集アイデアを最終募集した。ニューヨークに滞在するロサンゼルスのコメディアンに、売り込みをかけるためだ。全員の宣伝文句をまとめ直し、私自身のものを足して、そのコメディアンの広報担当に送った。

04:00 pm 「Elle.com」と「Esquire.com」のジョイント動画プロジェクトに載せる有名人のポートレートを選んで、HMDMのクリエイティブディレクターに送る。彼は最終名簿を自身で作って、レタッチ作業している。

05:00 pm いつものように夕方モードになってきた。モデル事務所のウィルヘルミーナ(Wilhelmina)のエージェントから電話が。私がブッキングしているモデルの日程について話があった。ロサンゼルスの広報担当者はスクリーナー(視聴用ディスク)を、さらにもうひとつ見るようにと念を押しに電話をかけてきた。私は先延ばしにしているのだが。受信箱を空にすべく、少しずつ前進中。政界関係者のオフィスに対して私が送ったアイデアの念押し。「TownAndCountryMag.com」がテレビのリアリティ番組「リアルハウスワイフ(Real Housewife)」と行う、Facebookライブ動画の準備進捗状況を確認。主演女優に「お返事をお願いします(優先事項)」と伝える。編集者数名が自身のプレスの依頼についてコンタクトがとれるように補佐。「MarieClaire.com」のスナック入れから食べ物を失敬する。

07:30 pm 退社してカルチャーエディターの友人と広報担当の友人と一杯やりに行く。行った先で2人の編集者と出くわす。それぞれが時折、携帯を見てメールの返信をしたりするので会話が中断する。もしくは友達からの電話だ。今夜の話題はオフィスの噂話や恋愛ゴシップ、そしてもちろん有名人ゴシップだろう。

Lucia Moses (原文 / 訳:Conyac