ハフポスト国際版は、いかに14カ国展開を行っているのか?:インターナショナルエディターの1日

ニコラス・サブロフ氏の外国語習得の試みは失敗に終わっている。

しかし、「ハフィントン・ポスト(The Huffington Post)」の各国版をすべて統括するという国際的な仕事で、語学が苦手なことがネックになっている様子はない。「ハフィントン・ポスト」のネットワークは、2011年のカナダ版を皮切りに、14の国で現地版を立ち上げるまでに成長した。各国バージョンのすべてをスムーズに展開させるべく監督するのがサバロフ氏の役割だ。地元の文化に根ざした各国版を創りながら、世界中でどんな記事がよく読まれているのか見極め、ほかの市場で活用するのも、サブロフ氏の仕事に含まれる。

「それぞれの国の『ハフィントン・ポスト』で、優れたローカル体験を提供したいと考えている」と、サブロフ氏。「たとえば、『ハフィントン・ポスト フランス』は、本家の仏語版ではなく、フランスに根ざした『ハフィントン・ポスト』であるべきなのだ」。

メディアが自国以外の市場で存在を確立するのは簡単な話ではないが、同紙は地元のプレスがあまり取り上げないトピックで各国への参入に成功している。

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ニコラス・サブロフ氏

「『ハフィントン・ポスト』は米国でLGBT(性的マイノリティ)トピックの先鋒となってきたが、LGBTがメインストリームの話題とはいえない日本や韓国でも、このトピックでコミュニティを形成してきた」とサブロフ氏は語る。「ドイツでは、子育てトピックが大きな反響を呼んだ。ブラジルでは人種関係の記事が重要視され、我々としても大いに強調したい話題だ」。

同氏はタイムゾーンが異なる地域に散らばるエディターたちと電話するのに都合がいい時間帯を意識しており、彼の一日は全世界との電話スケジュール調整を中心に回っている。ハフポストの国際版が増えるにつれ、全地域のエディターが集うグローバル月例電話会議の開催が難しくなっているという。「全員にとって都合のいい時間帯というものが、ついになくなってしまった」。

最近のサブロフ氏の1日を紹介する。

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6:45 am 起床。メディア人なら誰でもそうだと思うが、まずはスマホに手を伸ばしてスラック(Slack)、Twitter、メールをチェックする。14ある国際版のうち、12までがニューヨークよりも先のタイムゾーンにある。寝ている間に大事件が起こらなかったか、各国チームの昼間に緊急事態が発生していないかチェック。ありがたいことに、今朝は特に急な対応を要する案件はないようだ。

7:45 am 業界の噂話をしながら妻と朝食(妻はニューヨークタイムスの営業職)。ブルックリンから地下鉄F線に乗りオフィスへ。時差の関係で午前中の電話が多いため、1日の最初の数時間は自宅で仕事(つまり、キッチンでGoogle ハングアウトを使って)することが多いが、今朝は早めにオフィスに着く。

8:30 am インドの編集者、SKとビデオ会議(もう1年半も一緒に働いているのに、いまだに彼のラストネームを知らない。ブラジルのサッカー選手と一緒で、名前がひとつしかない男らしい)。私の1日は、全世界に散らばっているエディターたちの「時差の都合」を中心に回っている。インドは朝一、ヨーロッパは昼前、南米と北米は午後に対応し、夕方はアジアやオーストラリアで翌日の朝を迎えたエディターたちと話をする、という具合だ。SKとは人材募集の件と先月の数字について話をした。

9:00 am ヨーロッパと南北アメリカ大陸のインターナショナル・エディターたちがオンラインに集まり、ハングアウトでオリンピックの計画について話し合う。ブラジル版の編集長、ディエゴ・イラヘタがリオでの記事プランについてアップデートを報告。我々のグローバルニュースルームは、現地版の存在を活かして、各国の報道を充実させることを目標にしている。

10:00 am 英国でライフスタイル記事のリーダーをしているプアナ・ベルと電話で話す。今週、「ハフィントン・ポストUK版」でジェイミー・オリバーにゲストエディターをやってもらう件だ。ゲストエディターは、UK版がはじめたパイロットプログラムで、2016年始めにキャサリン妃をゲストエディターに招いた試みで大成功を収めている。他国「ハフィントン・ポスト」の多くもこれに倣い、それぞれの市場で同様のプログラムを展開するようになった。

10:30 am 午前中のうち、30分は各国版のパフォーマンスについての日報に目を通すことにしている。14サイトのすべてのデータを常に把握しておくのは簡単な仕事ではない。各サイトの数値がリアルタイムでわかるダッシュボードを見てグローバルの状況を俯瞰し、その後各サイトの過去24時間における個別レポートで、一番人気の記事をチェック、ヒット記事をネットワークでどう活用していくか考える。

11:00 am 「ハフィントン・ポスト」のグローバルネットワークは、すでにかなりの規模に達しているが、これからも積極的に拡張を続けていく予定となっている。ビジネス面のグローバル展開を統括しているマネージャーが、新しい市場におけるパートナー候補探しの出張から戻ったので、話を聞く。

12:00 pm シニア・インターナショナルエディターのニック・ミレロと国際版から本日掲載する翻訳記事について打ち合わせ。内容は、ドイツでの左翼系過激派台頭のニュース、ポケモンGOをプレイしに韓国と北朝鮮の国境に集まる人々の話題、キャメロン首相オフィスでの最後の日を取材した英国チームの記事、ジェニファー・アニストンの独占寄稿など。

12:30 pm ランチの時間。自分は飽きるまで毎日同じものを食べ続けるタイプ。いまは世界一のサラダ専門店、「チョップト(chop’d)」のメキシカンシーザーサラダにはまっている。同じくこの店にはまっている同僚と、行列待ちしながら仕事の話をする。

1:00 pm 中国市場での展開とビジネス拡張を担当するチームと戦略ミーティング。中国語での配信ができる「WeChat(微信)」アカウントを使っているが、中国でどう展開していくかは、まだかなり実験的な段階にある。

2:00 pm インターナショナルチームの大部分が就業時間外となる時間帯なので、午後は午前中ほど決まったスケジュールにはなっていない。この時間には、よく米国のチームメンバーとグローバルネットワークの改善イニシアチブについて話をする。先週は英国とドイツのチームと打ち合わせに出張していたため、仕事が溜まっている。本日のミーティングは、パブリッシングプラットフォームの改善版をグローバルで展開する件について。

3:00 pm インドに出張してプロジェクトを立ち上げてきたチームメンバーが帰国したので、報告を受け、次回に活かせる学びについて話を聞く。

3:45 pm オフィスを出て少し散歩。座りっぱなしの姿勢で固まらないように立位デスクを使っているが、これはこれで同じ姿勢が続くと辛い。オフィスはワシントンスクエアパークの近くなので、天気がいい日は公園を一回りしながら、明日に向けてしなければならないことを考える。カフェイン補給よりも効果的な休憩だ。

4:00 pm 「ハフィントン・ポスト」が次に進出予定の市場はメキシコだ。米大統領選挙を前に、9月にライブ始動を予定している。編集リーダーには、すでに素晴らしい人材を確保している。「キエン(Quien)」の編集長だったローラ・マンツォだ。本日はパートナーの「グルポイマヘン(Grupo Imagen)」とほかの重要ポストの候補についての打ち合わせ。インターナショナルチームの人材選びには時間と手間をかけ、ハフポストのDNAが受け継がれるようにしている。

5:00 pm 東京が朝を迎えた。日本を担当しているライアン・タケシタ(竹下隆一郎)は早起きだ。日本はまだ朝の6時なので、Googleハングアウトで日本の国政選挙の記事について話し合う。「ハフィントン・ポスト ジャパン」は、選挙権が18歳に引き下げられてからはじめて投票する若者たちを「YoungVoice」という特集で追っている。恥ずかしながら自分は外国語がひとつもできないため、多言語に秀でた編集スタッフたちに英語で話してもらっている。

5:30 pm 今晩遅くに電話会議があるので、ブルックリンに帰り、明るいうちにひとっ走りすることにした。現在、はじめてのマラソンに向けて特訓中だ。レースで怪我したり情けない思いをしないよう、絶対にトレーニングを欠かさないことにしている。

7:30 pm ブルックリンブリッジパークでのランを終えて帰宅し、韓国版のパートナー、ハンギョレと月例ビジネスレビューの電話会議。ありがたいことに電話回線だけなので自分がどんな格好をしているかは相手には見えない。会議のあと、韓国の編集長ドーフン・キムと少し話をしたら、今晩はもうノートパソコンをしめてリラックスタイムだ。

Lucia Moses (原文 / 訳:片岡直子)