「デジタルメディア業界は、クッキー依存症」:業界ベテラン幹部の告白

匿名で内部事情を正直に語ってもらう「告白」シリーズ。今回はデジタルメディアのあるベテラン幹部に、業界の現状について話を聞いた。デジタルメディア業界に20年以上在籍しているというこの幹部によると、業界はいまだに「手探りの時期」にあり、課題は山積みだという。

プログラマティック広告取引が、従来のディスプレイ広告をコモディティ化した環境において、パブリッシャーは新たな収益化の手段を得ようと競い合っている。そのうえ、広告代理店は顧客よりも自身の利益を優先して動くことがままあり、パブリッシャーが広告代理店の真似事をするようになっているという。幸運を祈るほかない。

わかりやすくするため、幹部の発言には編集を加えた。

――デジタルメディアの現状をどう見ている?

我々はまだ、10代のような「手探りの時期」にある。自分たちがつくりあげたものの良し悪しさえ確信がもてない。将来の課題は山積みだ。

――そのなかでも最大の課題は?

本質的に、この業界は「クッキー依存症」から進歩していない。そんなことはないと考えたがる人は多いが、それが現実だ。我々はいまでも、「クッキーを見たらすぐ手に入れろ」という状態だ。

――だからパブリッシャーは代理店のようになり、マーケター向けにコンテンツ制作を行っている、と?

どのパブリッシャーも広告代理店になろうとし、どの広告代理店もデータ企業になろうとしている。こうした回り道の行き着く先はどこだろう? パブリッシャーは線引きができていない。いつからエージェンシー事業がビジネスになったのだろうか? 

多くの代理店は、実のところ銀行と変わらない。ただクライアントから金を受け取り、右から左に、今度はパブリッシャーに渡しているだけだ。(代理店事業の)残りは、トレーディングデスクからの仲介料だが、こちらも問題だらけだ。

パブリッシャーでありながら広告代理店業界で成功できると思うなど、どうかしている。

――広告代理店をよくは思っていない、と

いまや代理店は、自分たちが儲かることしかやらない。クライアントのニーズは二の次で、自社の利益になることが最優先だ。代理店は複雑な事業形態を好む。そうすることで、クライアントは代理店なしではやっていけないようになっているからだ。だが、そんなに代理店がスゴいのなら、クライアントが2年ごとに代理店を乗り換えるのはなぜなんだ?

――メディアのしくみに関して、受け入れるべき「不都合な真実」とは?

どの部門にも、新しいやり方に異を唱える中間管理職が大勢いる。テレビ売上担当が売りたいのはテレビの枠であって、アドレサブルではない。デジタルで束にされるのは嫌なんだ。一方、テレビの枠を買いたい側も、それしか興味がない。パフォーマンスデータやデータフィードの理解に頭を悩ませるのはまっぴらだと思っていて、欲しいのは視聴率だけなのだ。

――広告モデルは破綻しているという声があちこちから聞こえる

Twitter創始者のひとりである、エバン・ウィリアムズまでも、オンラインプラットフォームのMedium(ミディアム)が抱える問題は「広告によって動かされるメディア」と言っているが、彼が創業したころから、状況は何も変わっていない。

テクノロジー業界の人間は、いつも別の道があると考える。優れたテクノロジー業界人たちは、広告なしでやるといつも言うが、結局はすぐに広告に手を出す。業界は変わっていない。彼は一体何を期待していたんだ?

――GoogleとFacebookによる2極支配を恐れているか?

いまにはじまったことではない。10年前は4つだったのが、いまは2つになっただけで、対して変わらない。(2極支配を)非難するのは簡単だ。だが、ひと握りの企業が広告料の大部分を手中に収めるという問題は、Googleがビジネスに本格参入して以降、恒常化している。

――動画が多くのデジタルメディア企業を救うと期待されているが、そうなるだろうか?

そんなに簡単ならみんな手を出すだろう。いい番組を探し出すのはいつでも大変だ。動画のCPMが高いからすべての問題が解決されると思うのは、馬鹿馬鹿しい。動画に参入するのは単に、CPMがこれまでと違うからだ。動画が正解なわけではない。ただ広告フォーマットが、最低なバナーから多少マシになるだけだ。

――パブリッシャーに対するプログラマティックの影響はどうか?

かなりひどい。コンテンツの価値を完全に放棄して、閲覧者のクッキーやリターゲッティングに全力を注ぐようになっている。プログラマティックは、各パブリッシャーに対して意味のある純利益をもたらしていない。もし相当の純利益があるなら、営業チームを雇わなくなるはずだ。しかし、プログラマティックはまだ、オーディエンスや商品の価値をクライアントに説く営業担当を雇うための下準備でしかない。

――プラットフォーム上で配信されるメディアには懐疑的?

(プラットフォーム配信では)長期的な上陸拠点は決して得られない。永遠に間借りを続けることになる。多少の稼ぎにはなるだろうが、ずっと賃貸で、何も所有できない。プラットフォームも、テクノロジーも、オーディエンスとの関係さえ借り物だ。ある日突然跡形もなく消えても文句は言えない。

Brian Morrissey (原文 / 訳:ガリレオ)