「メディア業界はスケールを追求して完全に失敗している」:英新聞社パブリッシング担当幹部の告白

Facebookのようなソーシャルプラットフォームの助けを借りて膨大なオーディエンスを確保することは、パブリッシャーが打つべき定石となってきた。

だが、必ずしも、オーディエンススケールの拡大と同じ歩調で収益が増加するわけではない。最近は、ガーディアン(The Guardian)やザ・テレグラフ(The Telegraph)のような新聞社からVice Mediaやマッシャブル(Mashable)のようなデジタルメディア企業まで、さまざまなパブリッシャーでの人員削減を報じる見出しが散見される。

匿名の条件で歯に衣着せずに語ってもらう「告白」シリーズ最新回では、英新聞社のパブリッシング担当上級幹部にインタビューした。発言内容は、明確になるよう若干編集されている。

現在のデジタルパブリッシングはスケールに注力しすぎでしょうか?

デジタルメディア業界は、スケールのためにスケールを追求して完全に失敗している。獲得できる最大数を執拗に追い求めてきたが、これは、虚栄心や広告主の要求に突き動かされている部分もある。我々は皆、なぜユニークユーザーを求めるのかを突き詰めることなく、そうしたユーザーを追いかけてきた。Googleとソーシャルプラットフォームが一般に我々に仕向けてきたやり方は、訪問者がサイトにエンゲージしているかどうかに関係なく、どんなときも新しい訪問者を求めるというものだ。

スケールだけを求めることによる影響は?

当然の帰結として、Twitterなどにあるリンクのひとつとしてクリックする人と、サイトを定期的に訪問してファンを自認している人が、等価に扱われてしまう。GoogleのAMP(アンプ:Accelerated Mobile Page)やFacebookのインスタント記事を介して、人々がより多くのコンテンツを消費するという状況では、パブリッシャーのプロダクトにエンゲージしたからではなく、ほかの誰かが共有しているという点に基づいて、リンクのクリックが行われる。「できるだけ多くの人数」を追求するとは、結局はそういうことなのだ。

この状況が続くのはなぜでしょうか?

パブリッシャーの担当者は内心、自社の数字が前月比で下がったら、何が起きているのかを誰もが問いはじめるだろうと恐れている。だが実際のところ、ユーザー数で成功を判断するというのは、非常に雑なやり方でしかない。本当に重要なのは、エンゲージしている忠実なユーザー基盤を相当なスケールで確保し、そこから収益を上げられるかということだ。

サイトに1日あたり1000万人の訪問があっても、そのうちの950万人はFacebook上で動画を視聴したせいで、一時的にアクセスしてすぐ離脱したのかもしれない。そうした人にとっては、Facebook動画を視聴しただけであって、ブランドと関わったわけではないのだ。

とはいえ、広告主はスケールを好みます。

その通り。そして、そこではプログラマティックは役に立っていない。というのも、プログラマティックはコストを押し下げ、クライアントは特定のコンテンツよりも、目にした人の数を追い求めるからだ。だが、できるだけ多くの人を集めて、プログラマティック経由でコスト効率よくページを広告で埋められるようにするという考えはうまく機能していないようだ。消費者は広告にエンゲージせず、いまでは広告をブロックしている。この先はどんな結果が待っているのだろうか。ひたすらスケールを拡大し続けて、どれかがうまく行きはじめることを願うのだろうか? 私はそうはならないと思う。

なぜ、スケールを求めても、うまくいかないですか?

うまくいかない理由は、勝者がいないからだ。パブリッシャーは十分な利益を上げられない。広告主にとっても、CTRはばかばかしい数字だ。0.1%のCTRに興奮するなんて、正直なところひどい話だ。消費者の側もエンゲージしていない。現行の形式のディスプレイ広告は、目的に合致していないのだ。

この業界にまったく役に立ってこなかった言葉を選ぶとすれば、それは「増分利益」だ。我々は、ささやかな金を得るために、さまざまなアドテクの導入といったことに目を向けるが、そうするのは新たな売上になるからだ。そして、周りを見るとほかの誰もが同じことをしているので、正しいと認められた気になる。だが、一歩離れて眺めると、それは往々にしてひどいユーザー体験になっている。

それでも、そうした広告を掲載するのですね?

もちろん。据え膳に手をつけないパブリッシャーがいたら、それは異常だ。

では、どう変わるべき?

多くのイノベーション、物事を見る新しい方法、そして変化への純粋な試みは、パブリッシャーではなく大手プラットフォームから到来しつつある。ただし私としては、差別化のために何でもしてきた従来型のニュースパブリッシャーが取れる道について考えたいと思う。

パブリッシング分野でかつてなされた最大のイノベーションはペイウォールの導入だ。これは、オープンなWeb上のコンテンツに関して一般に受け入れられていたものと相反するものだ。それを除くと、我々がこれまでにとってきた唯一のアプローチは、もっと大きくなろう、とにかく読者を増やして、もっと大きくなろうというものだったように感じられる。代案は何だろう? 個々の新聞がどういう存在であり、自らの読者にどのような価値を付加するのか、どんなサービスを提供できるのかについて、改めて検討する必要があるだろう。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)
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