「報酬をケチれば、得られるものはたかが知れている」:放送局幹部の告白

ブランドセーフティの議論は加熱しすぎている感はあるが、広告購入の動機づけが、特定のサイトやパブリッシャーブランドからオーディエンスへ移行しているなか、「ブラインド・バイ(掲載先を把握しないまま、闇雲に広告購入すること)」がひとつの問題となっている。

業界人に匿名で本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、クオリティの高い環境やパブリッシャーのサポートを謳うエージェンシーのリップサービスに辟易している、放送局のシニアコマーシャルエグゼクティブに話を聞いた。この幹部によると、このブラインド・バイを抑制できないなか、業界では広告が不適切な場所に掲載されるという問題が、一周してもとに戻ってきているという。

わかりやすくするために会話は多少編集している。

――ブラインド・バイの現状は?

一周してもとに戻り、いまはさらに増えている。誰もがオーディエンスに気を取られているため、プログラマティックバイイングからコンテキストを取り除いているが、広告がどこに掲載されているかについては知る由もない状況だ。上質なパブリッシャーをサポートするといいながら、結局YouTube、Facebook、そしてどことも知れないネットワークにすべての予算をつぎ込むだけの、偽善的なエージェンシーにはうんざりしている。彼らは、広告がどこに出ているかをまったく認識していない。まったくひどい状況だ。

――昨今の状況は悪化しているか?

金自体はまだ動いている。ただしパブリッシャーではなく、エージェンシーのネットワークにいる者のあいだでだけだ。しかも、価格があり得ないレートにまで跳ね上がっている。

――というと?

最近、インプレション単価(CPM)が18ポンド(約2500円)、コストが5ポンド(約700円)という価格で、ニュースのオーディエンスが売られているのを見た。ここまで値上りしているんだ。ただ、すべてが常にそうだというわけではなく、要は、どこと一緒にやればうまくいくのか、という問題だ。「私たちは特別な技術を使っているので、独自のオーディエンスにリーチできる。独占的に所有しているデータを使っているので、大きな価値があるのだ。このような価格になっているのは、そのためだ」。私はこのような話を「ボロクソロジー(bollocksology:たわごと論)」と呼んでいる。

なぜエージェンシーはこんなクソみたいなものに金をつぎ込んでいるのか、不思議で仕方がない。もしかすると彼らは単に、自分たちがデジタルで何か面白いことをやろうと頑張っているだけなのかも知れないが、仮にそうだとしてもだ。

――ブラインド・バイがもっとも横行している現場は?

いわゆるエンターテインメントのネットワーク。「mediatakeout.com」のように、自身をエンターテインメントと称しているサイトでは顕著だ。ただ、私が見る限り、そこにあるコンテンツの半分は卑猥なもので、残りの半分はポルノだ。それでもバイヤーはこうした情報を認識していない。彼らは単にエンタメに興味のある人々を探しているだけなのだ。

――変えなければ、という意識は?

問題は、オーディエンスの認証や厳しいフィルタリングを求めはじめると、市場における実質的な流動性を失い、結果として誰にも(少なくともGoogleでは)マッチしなくなってしまうということだ。ブランドセーフティに対する対策は、いわば道路で誰かが車に轢かれたあとに、歩行者用の信号機を付けるようなものだ。Googleはフィルタリングにはまったく興味を示さないが、これはFacebookも同様で、彼らのインベントリを減らすことになってしまうためだ。

――データの品質については?

第三者機関のデータサプライヤーを使って試したことがあるが、それまで(データマッチングの)正確性が30%だったものが、男性なのか女性なのか、といった本当にシンプルなことを含め、まったくと言っていいほど不正確なものになってしまった。興味が何かを知るどころの話ではなかったのだ。

結局のところ、これはリーセンシー(特定のユーザーが広告に接触する間隔)と、それをどう制御するかに尽きる。巨大なDMP(データマネジメントプラットフォーム)を眺めているだけでは、私は独身かつ既婚であり、男性かつ女性であり、住んでいる家は借家かつ持ち家、ということになる。そこには制御するものがないために、私は誰にでもなれてしまうのだ。

――具体的には?

特にベンダーのなかには、リスクを冒している者もいる。また、自分が何をしているのかまったく理解していない者、そして間違いなく、自分自身が何も見えていないために、助けを求めてエージェンシーに駆け込む者がいる。エージェンシーは、最小のコストで最大限のリーチを求めてくるようなブランドに対しても手を差し伸べ、クライアントはどのような形であれマージンが生まれるのを避けたがっている。

こうして誰もが切迫している状況だが、報酬をケチると、それ相応のものしか手に入れられない。それを巻き添え事故だと考えているブランド、それを知ろうともしないブランド、そしてなかには自分の存在価値を正当化しようとするマネージャーを抱えたブランドもいる。誰もがプレッシャーを感じているなかで、それが何を意味しているかも分からないまま、暗い壺のなかに金を投げ込むようなことが良しとされている理由は一体どこにあるのだろうか。

――P&Gはブランドセーフティと広告効率のために広告予算を削減しているが?

ああ。あとJPモルガン(JP Morgan)も同様だ。だが、これはたった2つのブランドでの話だ。大きなブランドの広告がいかがわしいサイトに表示されるという問題は、2003年から起きている。

――では変わるために必要なこととは?

(デュオポリーになるまで)競争することだ。アップネクサス(AppNexus)は、明らかにチャンスがあることを認識しているはずだが、Amazonはもっとも力のある「眠れる巨人」だ。クレジットカード、ウェブの閲覧履歴、興味、何を買いたいと思っているかなどの情報をすべて握っているうえに、音声コントロールとアレクサ(Alexa)がある。Amazonがちょっとスイッチを入れさえすれば……。

パブリッシャーにとってはGoogleの代わりとなり、単なるアドサーバーとしてもうまく機能するだろう。そして、間違いなく(Googleよりも)正確に。

Jessica Davies(原文 / 訳:Conyac