名門コンデナストも抗えない「ネットの洗礼」 〜広告価格のコモディティ化問題

『Vogue』、『GQ』、『WIRED』など、ハイクラスな雑誌を刊行してきた米老舗出版社「コンデナスト」。多くの富裕層読者を抱え、ブランド企業にプレミアムな広告料金を提示しても受け入れてもらえる、神通力の持ち主と知られてきた。しかし、読者が同媒体のデジタル版へ移行するにしたがって「紙の魔法」が解けつつある。

デジタルパブリッシャーはどこも「Webのコンデナスト」になりたいと思ってきた。コンデナストがもつ取材と写真のクオリティ、それから、あまり語られはしなかったが、その高額の広告料を設定できる力を、パブリッシャーたちは崇拝している。しかし、読者や広告主がオンラインに移行している現状を踏まえ、同社が頼った経営コンサルタントの提示したことを実行しなくてはならないときが来たのだ。

Web上の残酷な価格競争にさらされると、同社もまた「値引き交渉に応じない」という長年の慣習を破らざるをえなかった。価格に柔軟性を持たせるという措置は、バイヤーからしたら祝杯ものだ。だが、裏を返せば、デジタルにおける巨大なコモディティ化(汎用化し価格が下落する様)の引力を示す、陰鬱な証拠ともとれるだろう。

舵を切ったコンデナスト

クリエイティブ・エージェンシー「ザ・メディア・キッチン」の社長を務めるバリー・ロウェンタール氏は「コンデナストは舵を切った」と、見ている。「自分から進んで交渉するようになった。同社の発行人と昼食を取る機会があったが、こう言っていた。『もし価格が問題になっているのなら、話し合うことは可能だ』と。昔だったら考えられない話だ」。

とある別のバイヤーは、こう言い切った。「業界も市場も凄まじい速さで変わりつつあるのに、コンデナストはいつも一歩遅れていた」。

さらに「方向性としては正しいが、競争に必要なスピード感がない」と、そのバイヤーは語る。加えて、先述の発行人がFacebookのような他のプラットフォームでもコンテンツを配信すると話したことに関しても、「よりターゲティング能力やスケールを持つ他社サイトで、コンデナストと似たようなオーディエンスを効果的に購入することはできる」と、述べた。

ロウェンタール氏は、コンデナストが質の高い掘り下げたジャーナリズムに取り組んでいることをうれしく思うと話している。だが、コンデナスト傘下のいくつかの発行物では紙媒体とデジタルの責任者が別々で、それが両方の媒体に広告出稿するのをややこしくしているという。また、広告主にしたらプログラマティック広告を出稿しようと思えばできるので、コンデナストはもはや富裕層読者を独占できないと、同氏は考えている。

さらに、前出のバイヤーに言わせると、デジタルオリジンのライバルと競争ができるようになるまでは、まだまだ時間がかかるそうだ。しかし、コンデナストもまた統合化した配信システムにより効率化に務めている。傘下の発行物を共通のCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)に統合したのは、その現れだ。

次々と実施される新しい試み

また、同社では「23ストーリーズ」というネイティブ広告プラットフォームを導入。広告主が同社の編集スタッフを使って広告制作に当たっても良いという、編集権の独立を侵す決定を下し、周囲を驚かせた。

「コンデナストがいま、『23ストーリーズ』で進めていることは、自分たちがいた場所からの移行であり、賢明な措置だ」。メディアエージェンシー「MEC」北米のデジタルコンテンツマーケティング担当マネージングパートナー、ジアン・ラヴェッチア氏は、話した。「紙とデジタルを1つにし、ブランド化させていくというのが、コンデナストの思い描く図だ。アグレッシブな第一歩と言えるし、好ましい。傘下の発行物すべてで、この計画を検討している。素晴らしい収益源にさせようとしているのだろう」

もっとも、「23ストーリーズ」は素晴らしい「はじめの一歩」ではあるが、デジタルな同業者と熾烈な戦いを繰り広げなくてはならなくなった。新しい広告を毎日提案しているし、広告価格についてはより柔軟であると、メディア・エージェンシー「PHD」のシニアバイスプレジデントのアリソン・ホーバルト氏は、話している。「生き残るだけでなく、栄えたいのであれば、コンデナストは大金をはたく広告を掲載させたいと思わせる、プレミアムな体験を提供しなくてはならない」。

Lucia Moses(原文 / 訳:南如水)
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