Facebookが資金提供する「Watch」番組、続々配信開始:1本100万円から3億円まで

Facebook資本で提供される、さまざまなパブリッシャーによるビデオコンテンツが放送を開始した。ビデオプラットフォーム最大手の地位をYouTubeから奪おうとするFacebookの最新の動きとなる。

各社のプログラム

ビジネスインサイダー(Business Insider)のライフスタイルブランドであるインサイダー(Insider)は、ふたつのコンテンツを開始した。ひとつは世界各国のチーズ料理を紹介する「ザ・グレート・チーズ・ハント(The Great Cheese Hunt)」、そしてふたつ目がネット上で話題になった変わったガジェットを紹介する「イッツ・クール・バット・ダズイット・リアリー・ワーク?(It’s Cool But Does It Really Work?)」だ。

ニュースや社会問題を扱うAttnは「ウィー・ニード・トゥ・トーク(We Need to Talk)」という恋愛アドバイス番組を開始した。また、ジェシカ・アルバがホストの健康関連番組「ヘルス・ハック(Health Hack)」も金曜日に配信される。大手ハースト(Hearst)も参加している。彼らの番組「ウィキ・ワット?(Wiki What?)」では、T.J.ミラーやダニー・マックブライドといったセレブたちが、自分のウィキペディアページを読む。ハーストのもうひとつの番組「アンタングルド(Untangled)」は「カオスの世界で形成される秩序を見て楽しむウィットに富んだ科学番組」とのことだ。

フードビデオで人気のテイストメイド(Tastemade)は一気に4つの番組をデビューさせる。「セーフデポジット(Safe Deposit)」「ストラグル・ミールズ(Struggle Meals)」「フード・トゥ・ダイ・フォー(Food to Die For)」、そして「キッチン・リトル(Kitchen Little)」がそれだ。

フィクションコンテンツを配信するパブリッシャーもいる。リファイナリー29(Refinery29)の「ストレンジャーズ(Strangers)」はそのひとつだ。8月31日に第1・2話が配信された。

支援される制作費

上記の番組はすべてFacebookが制作費を支援する形で制作されている。FacebookのWatchプラットフォームで視聴される長い、エピソード形式のビデオシリーズが対象だ。Facebookは30のコンテンツパートナーたちと契約を交わし、Watchを開始した。Watchがアメリカ全土で広く利用されるようになれば、番組数は何百にもなる予定だと広報担当者は語る。

ナショナルジオグラフィック(National Geographic)のオーディエンス開発・戦略部門のシニア・バイスプレジデントであるジョナサン・ハント氏は「Watchのローンチによって、Facebookはよりプレミアムなコンテンツ体験のためにユーザーが訪れるプラットフォームへと進化しつつある」という。「Watchは、これまでのFacebookではなかった、ゆったりと視聴するというビデオ体験を念頭においている」とのことだ。

ナショナルジオグラフィックがFacebook上で抱えている「いいね!」数は4400万にものぼる。3つの番組を制作しているのは自然な流れだ。ひとつは「ウィー・アー・ワイヤード・ザット・ウェイ(We’re Wired That Way)」。この番組では人間がなぜ嘘をつき、涙を流し、そしてキスをするのかといった人間の性質に迫る。ほかふたつは「ウィッチ・エクストリーム・アニマル・アム・アイ?(Which Extreme Animal Am I)」と「サファリ・ライブ(Safari Live)」だ。

ブランド構築が課題

Facebookのニュースフィード上では短いビデオクリップにテキストが表示されたものがいくつも流れるが、これらの新番組はそれよりもはるかに大きなプロダクションとなっている。これは8人編成の自社内ソーシャルビデオチームによって制作されている。「ウィー・アー・ワイヤード・ザット・ウェイ」の内容はリサーチによって裏付けされており、データをグラフなどを使ってビジュアル化している。番組の制作は8人編成のチームで行うが、ハント氏によるとエディトリアルやデータ、デザインといったナショナルジオグラフィックの他部門からの協力も得ているとのことだ。

「スクリーンにテキストを表示して人々の感情に訴えるタイプの(動画の)ビジネスには我々は位置していない。私たちはブランドを構築したい。特にソーシャルのオーディエンスの半分ほどが自身のフィードに流れる動画を見ても、それがどこのソースのものか覚えていないというリサーチ結果が出ているなかでは、これは非常に重要なことだ。ブランド構築のビジネスにいる人にとって、このリサーチ結果は目を覚ますきっかけとなるべきだ」。

YouTubeではすでに、こういったフォーマットのビデオ番組が視聴者を集めると証明されてきた。Watchは、YouTubeに対抗するFacebookの動きのなかでも、もっともアグレッシブなものだ。Facebookが資本提供している番組のほとんどが「スポットライトニュース」タイプと形容される。各エピソードはだいたい4分から10分程度の長さだ。エピソードごとに支払われる金額は番組によるが、だいたい1万ドル(約100万円)から4万ドル(約400万円)、そして最初に最低5つのエピソードは購入する、という形式だという。これを毎週配信という形で継続することで、ユーザーがWatchを定期的に使うように促すのが狙いだ。

マネタイズも可能

Facebookはミッドロール広告を番組中に導入する計画も持っている。制作費を回収したあとの収益をコンテンツパートナーとシェアする考えだ(今年後半にFacebookは、さらに大きい予算のテレビ番組も配信することになっている。報道によると1エピソードにつき300万ドル[約3億円]という予算がついているという)。

テイストメイドのプログラミング責任者であるオーレン・カッチェフ氏によると、彼らの番組は真ん中で広告ユニットを挿入し易い形で制作しているという。「Facebookが広告を埋めることになるが、番組は広告が入らなくても自然な流れになるようになっている」と語った。

FacebookがYouTubeに似た視聴体験を提供できるかどうかは、多くの関係者が注目しているところだ。特にサジェステッドビデオ(関連動画)やFacebookライブ動画といった機能が、それほど成功しなかったことは記憶に新しい。もちろん、シリーズものの番組やエピソード形式のビデオプログラムが視聴者数を増やし、視聴時間を伸ばすことは、いろいろなリサーチが示唆している。

パブリッシャーは前向き

Facebookがオリジナルコンテンツの制作費を提供し、より長いシリーズ形式のビデオが視聴しやすいプログラム環境を作ろうとしているなか、パブリッシャーはそこに投資する意欲を見せている。インサイダーは新しい3人編成のチーム「インサイダー・ショーズ(Insider Shows)」を新たに作った。このチームは、Facebookとほかのプラットフォームのための番組開発と制作を統括する機能を担う。

「このメディアが発達すれば、チームにさらに投資することができる。それに期待している」と、インサイダーの編集長であるニコラス・カールソン氏は言う。

カールソン氏によると、インサイダーの「ザ・グレート・チーズ・ハント」と「イッツ・クール・バット・ダズイット・リアリー・ワーク?」は、Facebookで配信開始した最初の数時間、1分間に2000回のビュー数を記録したという。インサイダーのチーム関連のコンテンツは、Facebookで人気であることからも、これは驚きではない。このようなデータからも、インサイダーはFacebook上での番組配信に関して楽観的に捉えているようだ。

「『チーズ』はこのメディアに適している。自動再生の環境でも効果の高い食べ物だった。Facebookがより長い形式のビデオへと拡大するチャンスを提供してくれたときに、Watchではこれをフィーチャーするのが最適だと感じられた」と、カールソン氏は語る。

Sahil Patel(原文 / 訳:塚本 紺)