有料ニュース購読の現状:要点まとめ

ニュース消費がオンラインに移行し、ディストリビューションもデジタルプラットフォームで広まるにつれて、パブリッシャーは読者と直接的な関係を築くことに力を入れはじめている。だが、その狙いは、読者との絆を深め、最終的にコンテンツを買ってもらうところにある。

とはいえ、そこには障壁がある。パブリッシャーはオーディエンスの拡大のために、何年にも渡ってニュースや情報を無料でインターネットにバラ撒いてきた。そのため、「コンテンツ=無料で手に入れられるもの」という意識が広まってしまっているのだ。

以下、アメリカ国内における有料のデジタルニュース消費の現状となる。

数字

  • 54%:ロイター通信社(Reuters Institute)が発表した研究結果によると、半分以上の読者は、情報をすでに無料で手に入れることができているため、オンラインのニュースに金銭を払う価値はないと考えている。
  • 16%:これは、2016年中にオンラインでニュースを購入したことがあると答えた、アメリカの消費者の割合だ。それと比べて、アメリカの33%の成人が、Netflix(ネットフリックス)などのデジタル有料動画サービスを利用し、22%がデジタル音楽コンテンツを購入している(ロイター調べ)。
  • 79%:これは、今後オンラインのニュースを購入することはないだろうと答えた、アメリカの読者の割合だ。ヨーロッパ市場では、ドイツ(90%)とフィンランド(89%)を筆頭に、多くの地域でアメリカよりも高い割合となっている(こちらもロイター調べ)。
  • 180億ドル(約2兆200億円):ニュースメディアアライアンス(News Media Alliance)によると、この数字は、2016年のアメリカにおける新聞広告の歳入額の合計であり、10年前の490億ドル(約5兆5500億円)と比べて63%減少している。
  • 89%:広告関連の動向調査や法整備を行う組織IAB(Interactive Advertising Bureau)のデータを元に第三者機関が算出した結果によると、これは2016年のデジタル広告の歳入全体に対して、GoogleとFacebookが占める割合であり、そのほかのデジタルのエコシステムには、11%しか余地を残していない。

ビジネスモデル

  • 一時期は広告による歳入の大部分を占めていたニューヨークタイムズ(The New York Times)などのパブリッシャーは、今後は定期購読の促進に向けて方針を大きく転換していくことを公表している。タイムズ紙は直近四半期の歳入報告で、200万人近いデジタルの定期購読者がいることを公表した。これは、タイムズ紙がエコノミスト(The Economist)などの定期購読に注力しているパブリッシャーと肩を並べていることを示している。こうしたパブリッシャーは、広告収入があることはもちろん望ましいが、生き残るために絶対に必要なものではないと考えている。
  • 過去数年間で、インフォメーション(The Information)やコレスポンデント(De Correspondent)などの、デジタル(コンテンツ)の定期購読料が主な収入源となっているパブリッシャーの数は、そう多くないものの増加傾向にある。
  • そのほかのパブリッシャーは、限定のコンテンツやリサーチ、または特別なイベントへの参加など、購読者に付加価値を提供する会員プログラムを立ち上げている。スタット(Stat)、スレート(Slate)、シャーロット・アジェンダ(Charlotte Adgenda)といったデジタルパブリッシャーたちは、こうした取り組みの先駆け的な存在だ。
  • サードパーティベンダーもさまざまな手段を使い、有料コンテンツを購入する読者を増やすべく動いている。読者が記事単位でニュースを購入できるプラットフォームを有するオランダのパブリッシャー、ブレンドル(Blendle)は、2016年中に全世界で25万人の読者を獲得したと主張している。また、1年半という期間をかけてアメリカ国内での立ち上げに取り組んできたという。オーストラリアでは、スタートアップのインクル(Inkl)やタップビュー(Tapview)が、ある種の都度払いのようなモデル、つまり読者が記事ごとに(通常は1記事あたり約11円で)購入するか、または定期講読料を支払うことで提携パブリッシャーのコンテンツを自由に閲覧できるサービスを提供している。インクルのCEO、ゴータム・ミシュラ氏によると、インクルの月間のアクティブユーザー全体の15%が、無料プランから有料プランに変更しており、有料プランを選択した読者は、1カ月あたり平均で50の記事を読んでいるという。タップビューは、広告をブロックしている読者に対し、特定の記事を購入できるオプションを提供している。アメリカ国内で「雑誌をまとめる」というコンセプトで立ち上げられたスタートアップ、テクスチャー(Texture)は、ハースト(Hearst)やタイム社(Time Inc.)を含む、巨大な雑誌社によるジョイントベンチャー企業だが、現在はそのサービスを読者に対して提供すべく、プロモーション活動をはじめている。
  • パブリッシャーのいくつかは、これまでと変わらず広告収入に頼りつつも、クラウドファンディングキャンペーンの可能性を模索している。ガーディアンUS(Guardian US)は、公有地の脅威に関する調査を特集した連載記事のための基金として、31時間で5万ドル(約560万円)を集めた。

問題点

「閲覧数を伸ばすために皆必死に働いていて、彼らの広告収入は減る一方だ」と、ノースイースタン大学の教授であり、フューチャー・オブ・ニュース(Future of News)のトップを務めるマット・キャロル氏は語る。「有料のデジタルコンテンツを循環させるために尽力するパブリッシャーが減ってきているのは衝撃的だ」。

ソリューション

ほとんどのパブリッシャーが、いまだ主な収入源として広告に注力していることに言及しつつ、キャロル氏はこう付け加えた。「この先、有料コンテンツに注力する者を多く見かけることになるだろう。現在は、全員のリソースが間違った方角を向いている」。

反論

有料コンテンツの循環に方針をシフトすることは、いくつかのパブリッシャーの気を惹いている一方で、すべてのパブリッシャーにとって魅力的なものではない。

「定期購読のモデルのいくつかはとても興味深い」と、アウトライン(The Outline)の創設者、ジョッシュ・トポルスキー氏は語る。「だが、私が関わっている範囲では、デジタル広告の時代はまだはじまったばかりだ。人々がデジタル商品に何を期待しているのかを理解するには、まだ時間がかかるだろう」。

Max Willens(原文 / 翻訳:Conyac