「BuzzFeed」を成功に導いた経営戦略。多士済々が集結する、その歴史のすべて

2015年8月の2億ドル増資により、ニュース部門の増強とグローバル展開を目指すバイラルメディア「BuzzFeed」。創業したのは、「ハフィントン・ポスト」の創業も手がけた「連続起業家」のジョナ・ペレッティ氏とケネス・レーラー氏のコンビだ。

「BuzzFeed」のビジネスモデルは、メディアとエージェンシーを兼ねた、新しいモデルである。コンテンツの優れたソーシャル拡散能力を背景に、ネイティブアドという収益の柱を独自に確保しているのだ。

その拡散を産み出す製作体制は頻繁に語られるが、経営面でも特筆すべきことは多い。「BuzzFeed」の成功に対して、創業者たちの功績は大きいが、後ほど加入した経営メンバーも多彩で、さまざまな面からふたりを助けてきた。この秋の日本版ローンチに先駆けて、彼らがなぜ成功できたのか、その経営について3つの視点から切り取る。

1.「ハフィントン・ポスト」創業の2人

「BuzzFeed」経営の舵をとるのは、創業者・最高経営責任者(CEO)のジョナ・ペレッティ氏(TOP画像)と現会長のケネス・レーラー氏だ。ペレッティ氏は大学卒業後、高校でコンピューターサイエンスの教師を務め、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボで修士号を取得。実業家のレーラー氏とは、2005年にニューヨークで出会う。「Medium」でのインタビューによると、レーラー氏は「私はビジネスを知っている。あなたはインターネットを知っている。さあ何かをはじめよう」と誘ったという。

同年、リベラル系有力者のアリアナ・ハフィントン氏と友人だったレーラー氏は、ペレッティ氏を含め3人で、「ハフィントン・ポスト」を共同創業。ペレッティ氏は記事執筆には加わらず、SEO対策、トラフィック施策、プロダクト開発などに携わり、レーラー氏は資金調達などの財務を担った。他紙の記事を要約した「キュレーション」「アグリゲーション」やブログの転載という「ハフィントン・ポスト」らしい手法と、2008年の大統領選という追い風を受けて、メディアの寵児となる。

しかし、経営陣は2011年に同誌を3億1,500万ドル(約387億円)で「AOL」に売却。以降、ペレッティ氏とレーラー氏は、「BuzzFeed」に力を注ぐことになる。2人は「ハフィントン・ポスト」創業後すぐの2006年3月に「BuzzFeed」も創業していたのだ。「最初は実験室を手に入れた感じだった。運営にも資金はあまりかからなかった」と、ペレッティ氏。当時の「BuzzFeed」はLLC(有限責任会社)での運営にとどめていた。

ペレッティ氏によると初期の資金集めは簡単ではなかったため、そのころの「BuzzFeed」は停滞していたという。2008年に記事広告のネイティブアドを開発。TechCrunchによると、従業員数9人で月間訪問者数100万人を獲得すると、同年6月に念願の350万ドルの初回出資を受けた。この最初期の出資には、Yahoo! JAPANを傘下に収めるソフトバンクも名を連ねている。

2009年からリスト記事(リスティクル)、GIF画像、ネット上のネタなど若者向けのエンターテインメント性の高い記事を展開。生活者がコンテンツに触れる地点(タッチポイント)がFacebook、Twitterなどのソーシャルネットワークへ移るのに伴い、「BuzzFeed」は波に乗った。月間訪問者数は、2010年5月に700万を突破して以降、右肩上がりとなる。

同月の第2回投資ラウンドでは800万ドルを集め、経営資源が潤沢になった。ペレッティ氏は2013年9月に「利益を出している」と宣言。翌14年8月には4,600万ドルの累計出資に加えて、ベンチャーキャピタル「アンドリーセン・ホロウィッツ」から5,000万ドルを増資した。その後、経営陣はペレッティ氏とレーラー氏を軸とし、元「ハフィントン・ポスト」の最高収益責任者(CRO)で、2人と旧知の仲のグレッグ・コールマン氏をプレジデントに据えている。

他方、外部からも積極登用している。政治メディア「ポリティコ」の元スター記者だったベン・スミス編集長、「ル・モンド」電子版の元CEOであるダオ・グエン発行人、著名ビデオアーティストのゼ・フランク動画部門長は、2011年末から翌12年にかけて加入した。2015年6月には、ペプシコの元CMO(最高マーケティング責任者)であるフランク・クーパーを同職として招いている。

2. 広告代理店とメディアの合体

多くのオンラインメディアが収益源の確保に苦しむなか、「BuzzFeed」はソーシャル拡散力を収益化に活かしている。その肝はネイティブアドだ。

「BuzzFeed」の調査研究シニアディレクター、タミ・ダレイ氏はネイティブアドの投資利益率(ROI)は極めて高いと自信をもつ。トヨタ自動車・カローラのネイティブアドは、本サイトに短文と動画というシンプルな組み合わせで掲載され、2週間で100万PVに達した。

「BuzzFeed」は広告代理店に似ている。独自にネイティブアドの出稿を受け付けて、それを製作部門が製作し、得意のバイラルで広い視聴者にリーチさせるのだ。メディアバイイングの必要はなく、すべてワンストップサービスになる。英支社では全従業員の3分の1にあたる50人がエージェンシーの役割を担っているという。

「エージェンシー機能が組み込まれた」構造について、「The Economist」のトム・スタンリッジ氏は「新しいモデル」と指摘した。「『BuzzFeed』と『Vice』は報道機関を装った、エージェンシーのように見える。彼らは報道機関のように見えるが、実際にはニュースで読者からの信頼と、広告代理店へのパイプを担保している。まさに新しい獣だ」

3. 多額増資、ニュース部門とグローバル展開

同社は2015年5月に「BuzzFeed News」というiOS対応アプリを投入。スミス編集長は、2015年2月にオバマ大統領のインタビューを実現した。スミス氏の下でニュース編集部は、ピューリッツァー賞受賞記者も迎え入れ、250人体制まで膨らんだ。調査報道、イスラム国報道、海外特派員の派遣などニュース報道に力を注ぐ。

中高年によく読まれるニュースコンテンツを充実させれば、トップブランドの広告主を獲得できる可能性が高まる。「Mediassociates」の戦略計画バイスプレジデント、ベン・クンツ氏は「ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭に生まれた若年者層)にBMWは売れない。BMWは50歳の人に売るものだ」と分析した。また、2016年には報道熱が高まる米大統領選も予定されている。選挙ニュースを多く取り扱って行けば、莫大な選挙広告収入も見込めるのだ。

2015年8月には「BuzzFeed」は評価額を15億ドル(約1,840億円)と定め、コムキャストグループのNBCユニバーサルから2億ドルの出資を受けた。「BuzzFeed」はテレビ、映画事業への進出を視野に入れるという。

ペレッティ氏は、2015年8月18日の発表で「最近まとめた取引は、編集とクリエイティブの独立を確かにするためのものだ。同じように重要なのは、NBCからの投資と急速な収益面の成長で、財務面の独立を確かにすること。短期的な利益や駆け込みの新規株式上場(IPO)を追い求めずに成長し、投資できる」と語った。

日本での展開については、プレジデントのコールマン氏は「これまでローンチしてきた他の国ではオーガニックな成長モデルでサイト規模を拡大できていたが、日本では成長を加速させてくれるパートナーと市場を開拓したいと考えた」と指摘した。

日本版の創刊は、南米での展開が好調なように、英語圏以外での拡散要因の確保につながる。すでにトラフィックの45%は米国外からもたらされており、さらなるグローバル化を目指している。

吉田拓史

photo    by WIKIMEDIA COMMONS

(参考文献・サイト)
DIGIDAY「BuzzFeed’s news is growing, but still a small part of its traffic」
Medium「BuzzFeed’s Jonah Peretti Goes Long
The media mogul (twice over) on being both contagious and sticky」
DIGIDAY「How BuzzFeed is winning over UK agencies and brands」
TechCrunch「A Brief History Of BuzzFeed」
Inside BuzzFeed’s plan to prove its native ads work
BuzzFeed BF Blogs「Big News[An email to the BuzzFeed team]」
BuzzFeed BF Blogs「BuzzFeed Partners With Yahoo! JAPAN」
BuzzFeed BF Blogs「NBCUniversal And BuzzFeed Announce Strategic Investment」
BuzzFeed Data Blog「The Post Heard ‘Round The World」