BuzzFeed Japan、ヤフーとともに順風満帆な船出 〜その強大なバズは日本の若者に届くのか?

BuzzFeed Japanは2015年1月20日、メディアローンチ会見をシェラトンホテル東京で開催。米国版編集長のベン・スミス氏(写真左)、BuzzFeed Japan創刊編集長の古田大輔氏(写真中央)、同社代表取締役の高田徹氏(写真右)が新メディアの展望を語った。

テレビなどがリーチしにくいミレニアル層(1980年〜2000年に生まれた若年層)に、ソーシャル拡散などで到達できるのがBuzzFeedの強み。日本版でも同様の展開を再現できるか、今後の注目が集まる。

BuzzFeed Japanの編集体制

BuzzFeedは、ベンチャーキャピタル(VC)支援型の米新興デジタルメディア(推定投資額は3億ドル=約360億円)。海外版11媒体を運営し、世界18カ所にオフィスを構えている。従業員数は1300人超で、編集部員は475人(そのうちニュース編集部は190人)。映像制作部門には200人が在籍する。30以上の外部のプラットフォームに記事を配信しており、各プラットフォームを合計すると月間50億ビューに及ぶという。

日本版の編集体制は、ニュース部門に4人、ライフスタイル担当に4人、編集者2人、そしてソーシャルエディター2人という布陣。毎日20本の記事が公開され、日本版オリジナル記事と翻訳記事の比率は半々になるという。なお、編集部と広告制作部門は完全に分離している。

古田氏は会見で、BuzzFeedがFacebook、Twitter、Snapchatなどの各プラットフォームにまたがって配信するグローバルなメディアと説明。ソーシャル上でのシェアを重視し、Googleなどの検索依存が少ないメディアとした。世界各国版の知見を日本版に活かすと同時に、日本のユニークさを強調したコンテンツを作成すると語る。

コンテンツのラインナップとしては、福島第一原発ルポのような硬派な記事を掲載していく一方、BuzzFeedが得意とする、インターネット上の冗談、フード、美容、ファッション、エンターテインメントなどの柔らかいコンテンツの両面を展開していくという方針を示した。

ヤフーとのシナジーはいかに

日本版を運営するBuzzFeed Japan株式会社は、ヤフー・ジャパンとBuzzFeedの合弁会社で、ヤフー側の高田氏が経営の舵を取る。BuzzFeed Japanは日本随一のトラフィックを誇るポータルサイト「Yahoo.co.jp」の影響力とノウハウを活用することが期待できる。

さらに、BuzzFeedはソーシャル拡散のメカニズムを分析できる独自解析ツール「Pound(ネットワーク拡散の理解と最適化の手段)」を開発しているが、これをヤフー・ジャパンが培ってきた日本のネットノウハウと融合させることでシナジーが起きるか注視したい。

TechCrunchによると、BuzzFeedは2008年に従業員数9人で月間訪問者数100万人を獲得したのち、ヤフー・ジャパンの大株主であるソフトバンクのベンチャーキャピタルから、総額3080万ドル(約37億円)の出資を受けている。

「猫」だけじゃない、原発も

朝日新聞デジタル出身の古田氏は、BuzzFeedが蓄積したノウハウについて「ライターとしてあって欲しいと思うものがすべてある。望めば与えられる、だ」と感嘆。カスタマイズCMS(コンテンツ管理システム)や記事執筆を下支えするデータなど、素晴らしい環境があるという。各国編集長との交流により、どの国にも共通してバズるコンテンツと、その国特有のツボがあることについて議論したという。

古田氏によるとBuzzFeed Japanは、バナー広告を展開せず、ソーシャル上で拡散するネイティブ広告により収益化するパブリッシャーだという。自社ページのページビュー(PV)に重点を置かず、シェア数でその効果を判断する。

古田氏はローンチ以前に「新聞社出身の硬派な人物を編集長にしながら、BuzzFeedが得意とする『猫』のようなスナック的なコンテンツを展開するのではないか」という批判を受けていた。これに対し、古田氏は「猫だけでなく、犬、鳥などさまざまなコンテンツで、読者をハッピーにしたい」と切り返している。

スミス氏「日本はユニークな国」

スミス氏は「我々は 2006年にコンテンツを実験する場として事業を開始した。どんなものを人々はオンラインでシェアするのか知ろうとした。当初、人々はFacebookやTwitter、Snapchat、YouTubeで可愛い動物の写真やジョークなどを多くシェアしていた。それが、インターネットユーザーが成熟するに連れて、我々も成熟し、これまでパーソナルなコンテンツが主だったプラットフォームで、より硬派なコンテンツ、ニュースや重要な情報をシェアしはじめた」と説明した。

「日本は我々にとって、マーケットにするには自然な国。日本はリッチなインターネット文化をもち、同じく成熟したジャーナリズムの地盤をもっている」と日本に進出した理由を語る。スミス氏は日本のインターネットの状況に関して、調査チームがリサーチした結果、日本が他国とは違う言語環境をもち、独特なインターネットカルチャーを育んでいることがわかったことに言及した。

「各国対応」するネイティブ広告

「ほかのアジア諸国にも進出の可能性があるのでは」というDIGIDAY[日本版]の質問に対して、スミス氏は「すでにインドにおいて、BuzzFeedはよく閲覧されている。韓国もまた、魅力的な国だ。インドネシアも大きな人口を保有する、潜在性のある国だと思う」と回答。

さらに、米国で米連邦取引委員会(FTC)が、ネイティブアドに関するさらに厳しいガイドラインを発表したことと、英国でネイティブ広告の表記について、BuzzFeedが当局から指導を受けたことに関する、DIGIDAY[日本版]の質問に対しては「米国と英国の当局がもうけるレギュレーションは食い違う内容になっている」と答えた。

日本でもネイティブ広告の表記に関する議論がされていることに関しては、「その国のルールに基づいて、透明性を確保したい」と語った。

ヤフー、ネイティブ広告にシフト

代表取締役の高田氏は、インターネットユーザーのコンテンツ消費傾向について、「ポータルサイトの時代から検索の時代、それから現在はソーシャルの時代に移り変わった」と指摘。そのため、ヤフーディスプレイネットワーク(YDN)のようなバナー広告だけではなく、さまざまなプラットフォームに通じて、ユーザーに到達するマーケティングというオプションを見越しているという。

また、こうした新たなマーケティング手法の確立と展開をBuzzFeed Japanで行っていき、日本に紹介していくことと、日本から世界に発信していくことを期待していると語る。「広告において、新たなマーケティング手法を紹介していきたい」。さらに「編集記事よりもバズるネイティブアドを制作する」と、ソーシャル拡散するネイティブ広告の展開に意欲を燃やした。

古田大輔 略歴:1977年生まれ、福岡県出身。2001年早稲田大学政治経済学部卒、2002年朝日新聞社入社。京都総局、豊岡支局、社会部、アジア総局(バンコク)、シンガポール支局長、デジタル版の編集などを経て、2015年10月16日にBuzzFeed Japanによる新メディアの創刊編集長に就任。

Written by 吉田拓史、中島未知代

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