英ヴォーグ、「WhatsApp」でファッション速報を配信開始:開拓が進むメッセージアプリ

ハフィントン・ポストやBBCなどの媒体社は、メッセンジャーアプリ「WhatsApp(ワッツアップ)」を利用して、ニュース速報の通知や長文記事の配信を行ってきた。

そんななかイギリス版の「ヴォーグ(Vogue)」は、ファッション誌としてはじめて「WhatsApp」を利用したのは、自分たちだと考えている(実際には「グラマー(Glamour)」も試験的に利用しているのだが)。2016年2月のニューヨーク・コレクションでは、開幕から途切れることなく「ヴォーグ」は、最新のランウェイ・ルックやファッションニュースをフォロワーのスマートフォンへ送信し続けた。

「Fashion」とメッセージするだけ

同誌のサイトに掲載された「WhatsApp」アカウントの開設を発表した記事で、「ヴォーグ」は、読者にこう語りかけている:

私たちのグループに参加すれば、ディオール(Dior)のクリエイティブディレクターの発表も、シャネル(Chanel)のキャットウォークのライブ画像も、アカデミー賞授賞式に到着したばかりのセレブたちのドレスも、すぐにメッセージで受け取ることができます。Twitter上を探し回ったり、タブロイド紙に頼ったりすることなく、最新のファッションニュースを手に入れましょう。

「WhatsApp」で「ヴォーグ」のアラートを受け取るには、「ヴォーグ」宛に「Fashion」とメッセージを送るだけだ。これだけですべてのアラートを受信することができる。

ニュース速報が一番人気

また、「WhatsApp」の利用開始から最初の数週間で、フォロワーにニューヨーク・コレクションの話題を多数送信した。「ヴォーグ」英版の編集者ルーシー・ハッチングス氏によれば、これまでのところ「WhatsApp」でもっともパフォーマンスがよかったのは、コレクション発表から1時間以内に送信された、シャネル、サンローラン(Saint Laurent)、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)のランウェイの画像だという。

ニューヨーク・コレクション以外にも、「ヴォーグ」はフォロワーに、アカデミー賞授賞式のレッドカーペットを歩くスターたちのギャラリーへのリンクや、アルベール・エルバス氏に代わってブシュラ・ジャラール氏がランバン(Lanvin)の新アーティスティックディレクターに就任したニュースの速報などを送っている。

「ヴォーグ」は現段階での登録数やユーザーエンゲージメントについて、「素晴らしい」としているが、具体的な数値は明らかにしていない。

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「WhatsApp」に送信された「ヴォーグ」のポスト

メッセージは日に1〜2回

現在の「ヴォーグ」による「WhatsApp」利用頻度は控えめだ。1日のアラート数はせいぜい2つ、ときにはゼロの日もある。一方、Twitterでは、2時間で30ツイートすることもある。

「我々は、ユーザーが『WhatsApp』を主として友人や家族とのコミュニケーション手段に使っていることを尊重している」と、ハッチングス氏。「そのため、我々からの投稿数を抑え、ユーザーをフィードの洪水に溺れさせないよう気遣いつつ、最新のファッションニュースがいち早く携帯に届くようにしている」。

現在のところ、パブリッシャーにとって、「WhatsApp」や「Snapchat(スナップチャット)」などのプラットフォームは、TwitterやFacebookと比べて、静かな環境でニュースや記事を提供できる場所となっている。

プログラマティック・ダイレクトメール・プラットフォーム企業のペブルポスト(PebblePost)でCMOを務めると同時に、調査会社フォレスター(Forrester)のテクノロジー・アナリストでもあるデビッド・クーパースタイン氏は、「『WhatsApp』は整然とした環境だ。パブリッシャーは人々が多くの時間を『WhatsApp』に費やしているのを知っており、競争が少ない環境で認知度を上げようと方法を模索している」と述べている。

ユーザーのフィードを守ることが課題

また、「WhatsApp」などのアプリは、アドブロッカーの手が及ばない場所でもある。とはいえ、パブリッシャーにとって、このメッセージプラットフォームが何もかも理想どおりの場所だとは必ずしもいえない。

「WhatsApp」のコミュニケーション・ディレクターであるブランドン・マコーミック氏が2015年米DIGIDAYに語ったところによれば、同社はニュースアラート機能を正式にアプリに組み込む予定はないという。いまのところ、「WhatsApp」を利用するパブリッシャーは、個人アカウントのように使うしかない。

クーパースタイン氏はさらに、「WhatsApp」のようにあまり雑然としていないソーシャルマーケティング・ツールを使うことの短所として、そうした環境を維持することの難しさを挙げ、次のように語った。

「ユーザーが興味のある企業からだけ、メッセージを受け取り続けられるかどうか保証などない。いずれ企業はプラットフォーム上に広告を流そうとするだろうし、そうなれば対抗して、テキストブロッカーが登場するだろう」。

なお、日本においてはすでに、ファッション誌では講談社の『ViVi』や集英社の『MORE』が、同様のメッセンジャーアプリ「LINE」を通して情報発信を行っている。だが、その他大勢のパブリッシャーやブランドも「LINE」での情報発信に参戦しており、「トーク」や「タイムライン」が情報過多に陥っている感がないわけではない。

Hilary Milnes(原文 / 訳:ガリレオ)