ブランデッドコンテンツの競争激化。自社エージェンシーをリストラする、米風刺メディア「ジ・オニオン」

ユーザーはデジタルメディアにおける広告を嫌いやすい。そのため、ブランドのメッセージをコンテンツで読者に訴えかける「ブランデッドコンテンツ」が注目を浴びてきたのだ。

風刺メディア「ジ・オニオン(The Onion)」は広告代理店を介さずにブランド企業とやりとりするため、2012年にブランデッドコンテンツ専門の自社代理店を設立した。ただし、ブランデッドコンテンツをめぐる競争が激化し、同路線のコメディ系媒体も乱立するなか、「ジ・オニオン」は難しい舵取りを迫られている。

Web媒体社が社内代理店機能を組織する例は多くあるが、ニッチな風刺メディア「ジ・オニオン」の試みは、1つのモデルケースになるかもしれない。

一時は売上の8割を担うも

1988年創業の「ジ・オニオン」は、老舗の出版社として大樹に成長した。ここ数年は、母体の紙媒体発行をやめ、デジタルに1本化。ビデオスタジオとともに、エージェンシー「オニオンラボ(Onion Labs)」も設立した。化粧品のDove(ダブ)やMTV、米格安チケット予約サイト「Orbitz」など、大手ブランド企業向けの広告制作のためだ。

ところが、最高経営責任者のマイク・マカボイ氏は、先週スタッフに宛てたメモのなかで、苦闘の色を見せた。シカゴを本社とする我が社の売上自体は伸びているが、目標の達成となると両手を上げざるを得ない、と。

先のメモでは「長期的な成功に向けて力を蓄えるのに力添え」できる投資家を、まだ探していると続いていた。マカボイ氏は一連のマネジメント変革とともに、「オニオンラボ」を再編成すると明らかにしていた。

運用開始から3年目になる「オニオンラボ」は、社を動かすエンジンだった。売り上げの80%を叩きだしたこともある。「ジ・オニオン」は、全米で最も広告料の高いスーパー・ボウルにTVスポット広告を出すという途方もない野望を抱いていた時期さえあった。

メディア事業注力、原点回帰

同じメモのなかで、「メディアエージェンシーとしては牽引力を無くしつつあるオニオンラボ」には人材の一新が必要だとされていた。その引き換えとして原点に返り、旗艦の「ジ・オニオン」と他3メディアに力を注ぐ。

最高執行責任者のカート・ミューラー氏によると、「オニオンラボ」は今年の売り上げを20%増やしつつあるが、「ジ・オニオン」グループの牽引役としては難しい数字だという。ブランドのニーズを反映させたコンテンツを作成し、ディストリビューションを推し進められる営業サイドの人材を加え、事態の打開としたい。そのためには、「オニオンラボ」のクリエイティブに偏ったスタッフ構成を変えなければならないため、2人のクリエイティブをレイオフした、とミューラー氏は明かした。

「人手を抱えすぎていた」とミューラー氏。「ブランド向けの新しいコンテンツは山ほどあるのに、満たすだけの需要がない。需要自体はあるが、過大な期待を寄せてしまった」。

ブランデッドコンテンツの競争激化

小さな独立系パブリッシャーとして、外部から資金調達してこなかったことが、試練になっている。「ジ・オニオン」の2015年8月における月間ユニークユーザー数(MUU)は、1650万人に達した。インターネットメディア調査企業comScoreによると、前年比で20%増。最大の旗艦サイトであるTheOnion.comは、940万人。同じく前年比では11%増だった。Facebookには490万人、Twitterには840万人ものフォロワーがいるなど、ソーシャルでも大規模なオーディエンスを抱えるが、多くの広告主にとって同社は「ニッチな出稿先」になる。

キャンペーンにスケールをもたせられないのが、パブリッシャーがブランデッドコンテンツを打つ際の課題になる。実際に、さまざまなブランド企業が、効果に疑問符がかかるディスプレイ広告からブランデッドコンテンツに広告費を動かすことも視野に入れているという。しかし、出稿先は老舗エージェンシーや、ほかのパブリッシャーとたくさんあるのだ。

しかも、ベンチャー・キャピタルが出資する「Funny or Die(ファニー・オア・ダイ)」や、米ウェブメディア大手のIAC系の「CollegeHumor(カレッジ・ユーモア)」など、競合のパロディーメディアもブランデッドコンテンツ作りに勤しんでいる。

風刺と広告のかみ合わせが悪い

「ジ・オニオン」風刺のテイストに対して、心穏やかに話ができるブランドは限られるだろう。「ヒーローがいる記事どころか、逆に冷笑的なジョークばかり。そこに身を委ねるという考えを、ブランドはもちづらい」。仏ピュブリシスグループ(世界3位)傘下のデジタルエージェンシーであるDigitasLBiのレイモンド・ブリランテス・グリーン氏(メディア・ディレクター)は語る。

「著名なブランドの多くには、明快なアイデンティティーがある。また、そこから容易に逸脱しないよう厳しいガイドラインで律している。経営の理屈からすれば、オニオンラボは素晴らしいアイデアだ。だが、私には言わせてほしいことがある。『エージェンシーやブランドの当事者は、日頃からブランデッドコンテンツに慣れ親しんできたからこそ、いまもブランデッドコンテンツづくりで右に出る人がいない。そんな世界なのだ、と』」

Lucia Moses(原文 / 訳:南如水)
photo by DIGIDAY US