ブルームバーグ、20人体制グラフィックスチームの仕事ぶり:ニュース視覚化の最新事例

2016年3月、ワシントンD.C.の地下鉄が前代未聞の事態に陥った。丸一日の運行停止で、70万人が通勤の足を失ったのだ。膨大な数の人々は、不満をあらわにしつつ、ヒッチハイクやレンタル自転車、配車アプリを使うはめになった。

街が通勤の混乱に飲み込まれるなか、ブルームバーグ・グラフィックス(Bloomberg Graphics)は行動に出た。彼らは「バーチャル・グリッドロック:ワシントン地下鉄運行停止の苦労を追体験」と題したインタラクティブ・グラフィックを制作したのだ。このうち、2つのマップ(ひとつは朝の通勤時間帯の混雑状況を示したもので、もうひとつは市内の自転車レンタル制度「キャピタル・バイクシェア(Capital Bikeshare)」にどれだけ空き自転車があるかを示したもの)は、チームが公開データを集め、マップに重ね合わせたものだ。

一方、Uber(ウーバー)のサージ・プライシング(需要が急増した時に乗車料金を引き上げるシステム)を示した3つ目のマップについては、単純にデータをソフトウェアに放り込むだけとはいかなかった。Uberは、配車を希望する人にだけしか料金情報を教えてくれないのだ。そのため、グラフィックスチームのデビッド・インゴールド氏とアダム・ピアース氏は、20カ所の地点から4時間に渡って手作業でリクエストを続け、価格がどのように上昇するかを追った。

インゴールド氏は米DIGIDAYの取材に対して、「データの入手法はローテクで原始的だ。でも、読者は気にしない。ストーリーを知れれば、それでいいのだから」と語った。

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Uberのサージ・プライシングを示したスクリーンショット。(出典:ブルームバーグ)

ブルームバーグ・グラフィックス

インゴールド氏は、20名からなるブルームバーグ・グラフィックスの一員だ。チームに属する記者とイラストレーターは、ロンドン、ニューヨーク、ワシントンD.C.、香港の4支局に分散している。彼らはチーム内やブルームバーグの記者たちと協力し、記事を補完するグラフィックを制作するだけでなく、オリジナルのグラフィックやインタラクティブなコンテンツも制作している。

チームの最近のテーマは、公衆衛生、科学、政治、スポーツ、ポップカルチャーと多種多様だ。彼らは、ブルームバーグに掲載された記事に直接関係するグラフィックだけを制作する義務に縛られているわけではない。そのため、ヘッドラインを見わたして、注目のトピックを独自に追うこともできる。

「いま世界で起きていることを、我々は取り上げる。我々のコンテンツは、大きなビジネス記事がないときの隙間を埋める役割も果たす」と、インゴールド氏は言う。

データで競争の優位に立つ

ブルームバーグの記者はみな、「トースター(Toaster)」という社内ツールを使って簡単な図やグラフを作ることができる。だが、さらに複雑なデータが関わってくる記事の場合、ブルームバーグ・グラフィックスに依頼することが多い。ワシントンD.C.を拠点にしているブルームバーグ・グラフィックスの記者、クロエ・ウィテカー氏によると「記者はたいてい、記事が視覚的に表現されるのを歓迎する」という。

グラフィックスチームは、インタラクティブ・コンテンツに肉付けするインサイトをデータから引き出す。これには数日から、長い場合には数週間かかる場合もある。ときには、独自に開発したアルゴリズムによってデータを抽出することもあり、これによって、数が増えつつあるビジュアル・ジャーナリズム志向の新興勢力との差別化を図る。「独自のデータをもっていれば、他社との競争で優位に立てる」と、インゴールド氏は言う。

インゴールド氏によると、チームの本来の目的は「データを美しく見せる」ことだったという。しかし、グラフィックに独自の追加説明をちりばめることが次第に多くなってきた。読者がグラフィックから学べるだけでなく、シェアできるようにするためだ。彼らの目標は、読者が学べて楽しめ、記憶に残るような情報を最低でもひとつは提示し、読者がSNSでシェアしたり埋め込んだりせずにはいられないようなグラフィックを生み出すことだ。

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「スポーツ観戦で最高の週末を過ごす方法」(出典:ブルームバーグ)

新規読者とつながる接点

グラフィックスチームはトップページ担当の編集者たちと「いい関係」にあり、そのおかげで、チームの作品はブルームバーグのトップページに目立つように掲載されることが多い。ブルームバーグが所有したり運営したりしているサイトだけでなく、Facebook、Twitter、レディット(Reddit)、それにハッカーニュース(Hacker News)をはじめ、さまざまな外部プラットフォームからトラフィックが流入してくる。トラフィックの約半分はモバイルデバイスからのものだ。時には、ブルームバーグのラジオネットワークやブルームバーグテレビジョン(Bloomberg Television)で、グラフィックが話題にのぼることもある。

このようにして、グラフィックスチームはブルームバーグのWebサイトを普段見ないような人たちとブルームバーグをつなげている。これまでの成功から、チームには「かなりの自由度」が与えられていると、インゴールド氏は言う。問題が複雑であればあるほどいい、ということもあるのだ。

インゴールド氏は冗談めかして、「人はみな怠け者だ。インサイトを見つけ出す部分は、我々がやっておいた」と語った。

Jordan Valinsky(原文 / 訳:ガリレオ)