CNNが歩んできた、分散化メディア最前線から見えるもの:「コンテンツとその配信方法は不可分だ」

米ニューステレビ局のCNNは、ソーシャルニュースの最前線に立つことを躊躇しない。さまざまな場所に存在する読者にリーチするという固い信念のもと、自社のジャーナリズムをソーシャルメディアプラットフォームへ積極的に展開している。

Facebook上のエンゲージメントに関しては、ニュースメディアのなかで上位にランクされる常連だ。また、世界中に巨大なオーディエンス層を抱えることから、CNNはプラットフォーム各社から寵愛を受けている。Snapchat(スナップチャット)の「ディスカバー(Discover)」や、Appleのニュースアプリ「News」のように、プラットフォームが新たな取り組みや新機能をローンチする度、CNNは決まって協力を求められてきた。

しかしCNNは、プラットフォーム全盛の時代において、ジャーナリズムを届けるためにできることは、ほかにもまだあると考えている。その任務を課せられたのが、CNNに加わったばかりのミトラ・カリタ氏だ。同氏は前職が「ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)」の編集長で、それ以前は「クオーツ(Quartz)」や「ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)」でも編集者を務めてきた。

約20億円の採用活動

カリタ氏は今後、CNNのデジタル編成担当バイスプレジデントとして、最大18人のチームを率い、モバイル、ソーシャル、Webサイト、アラートの編成を行う。これは、CNNが進めている事業のなかでも、より大がかりな「テレビからデジタルへの移行」プロセスの一環だ。この移行のために、同社は2000万ドル(約20億円)をかけて200人を採用する。

「CNNはすでに、計り知れない価値を社会に提供している」とカリタ氏は語る。「我々が行いたいのは、ごく大雑把に表現するなら、新しい出来事が起きて人々がCNNのチャンネルを観るとき、チャンネルを変えずにいてもらう方法を見つけ出すこと。これは、あらゆる場で新たな読者を見つけることと同じだ。コンテンツとディストリビューション(記事配信)を分けて考えるべきではない。人々がどこで読むのかを考えなければ、うまくいかないからだ」。

カリタ氏のチームは現在12人で、さらに最大6人の採用を予定している。チームはCNNのソーシャルニュース責任者、サマンサ・バリー氏と緊密に連携しながら、ニュース配信のベストな方法を見極めている。

いま求めている人材

そのためカリタ氏が求める人材は、ジャーナリズム、テクノロジー、プロダクト、デザインのスキルをもつ人物で、複数のスキルを併せもつことが望ましい。プラットフォームと分散型コンテンツのノウハウを把握しており、ビジュアル分野での経歴もある、といった具合だ。

カリタ氏は、そういったタレントをもつ人材は「業界では極めて貴重であり、誰もが求めている」ことを認識している。それでも、可能性があればニュースの定型を破って、新しいものを創造することを厭わない人物を求めているという。

「このようなスキルをすべてもっているとしたら、たとえば、『ポケモンGO』のプレイ画面を再構成してSNS動画を作り、このアプリがどんなゲームかを説明するようなことかもしれない」と、カリタ氏は説明してみせた。「あるいは、アニメーションになるかもしれない。我々はニュースの伝え方を変えられるだろうか? キャラクターを登場させて、ニュースの意味を解説させるのはどうだろうか? いくつかのニュースをメタ(抽象)化して伝えるのはどうだろうか? そうしたニュースは、CNN.comやネットワーク局で生放送する以外の配信方法があるはずだ」。

常に変化する配信形態

CNNは、すでにプラットフォームで大量のニュースを配信している。コロンビア大学ジャーナリズム大学院トウ・センター(Tow Center)の調査によると、4月最終週にCNNが発行したニュースは1カ月で2046件で、「FOXニュース(Fox News)」や「ハフィントン・ポスト(The Huffington Post)」といった、ほかの大手ニュースパブリッシャー8媒体を上回った。

パブリッシャーのなかには、Appleの「News」からのトラフィックに失望を語る者もいるが、カリタ氏は「ロサンゼルス・タイムズ」時代に政治記事や解説記事のApple「News」への配信をした経験から、大きな可能性を感じている。

また、Amazonの音声認識スピーカー「エコー(Echo)」向けの編成も行い、エコーでニュースをシェアしたりコンテンツを特集することが有効かどうかも検討している。CNNはモバイルファーストの考え方も取り入れはじめた。カリタ氏のチームも、モバイルの重要性をニュースルーム全体に行き渡らせ、こうした考え方を発展させることを目指しているという。

「ルールも変化し続ける」

一部のパブリッシャーは、各プラットフォームの独自性を考慮して、プラットフォームごとに担当者を割り当てるのが主流になりつつある。だがカリタ氏の場合は、プラットフォームが移ろいやすいことから、柔軟性を保つ必要があることを認識している。

「あるプラットフォームについて、それがどんな場所なのかを理解する前から依存しすぎないようにしたい。ルールも変化し続けるからだ」。

ニュースメディアは現在、競争力を維持するためにオーディエンスの規模を必要としている。そのため、制作するコンテンツを最大限活用することが不可欠だ。それには、古いニュースを再発掘し、新たな形式に転用する、またはシェアしやすく作り変える、といった方法がある。

ニュース読者の開拓という使命

シェアされやすいコンテンツというと、クリックベイト(click bait:タイトルであおる「釣り記事」)を連想する人もいるだろう。この手法は、オーディエンスを積極的に増やしてきた「ワシントン・ポスト(The Washington Post)」も実行しているとして批判を浴びた

だが、報道レポーター出身のカリタ氏は、自分の役目を政治・経済系のハードニュースを読む、新しいオーディエンスを開拓することだと語る。

「私がキャリアの大半を費やしてきたのは、人々にニュースへ関心をもってもらうことだ。デジタルの面白さは、世界に関心をもつことと、新しく発掘した読者を結びつける能力にある」と、カリタ氏。「たとえば、こんな風なタイトルにすることも可能だと思う。『現在の牛乳の価格と、あなたが本当に気にかけるべきこと』。すると面白いことに、読者はベネズエラのインフレに関心をもってくれるのだ」。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)
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