「包括性」にフォーカスする、美容系パブリッシャーたち

よく言われるように、美はうわべだけのものではない。

いま、女性向けパブリケーション全体で変化が起こりつつある。その変化のなかで美に関するコンテンツは、表面的なものだけに焦点を合わせることから、人種やサイズ、宗教、セクシュアリティーに関連したメーキャップやスキンケア、フィットネスをもっと深く探求することへと進化を遂げた。つまり、そうしたコンテンツは飛躍的なまでに包括的になっているのだ。

「リファイナリー29(Refinery29)」や「ザ・カット(The Cut)」「ラックト(Racked)」「イントゥー・ザ・グロス(Into the Gloss)」などの比較的新しいウェブサイトは取り込む分野を広げてきており、一部の老舗パブリッシャーもその後に続きつつある。たとえば「ティーン・ヴォーグ(Teen Vogue)」は政治的な題材やアイデンティティーに基づく題材への大幅な方向転換を称賛されるようになっている。「アリューア(Allure)」も、2015年11月にミッシェル・リー氏が編集長に就任して以来、包括性を高めたコンテンツを優先させるようになった。

包括性を高めたコンテンツ

2017年7月、「バーディー(Byrdie)」でフィーチャーエディターを務めるアマンダ・モンテル氏は「『美』はフィッシュテールやマスカラよりもはるかに大きなものであることを私たちはわかっている。美はアイデンティティーなのだ」と述べた。同ウェブサイト内に新設されたバーティカル「ザ・フリップサイド(The Flipside)」を紹介する記事のなかで同氏は、それを「私たちの社会が定義する『美』に挑む、思いも寄らないユニークでパーソナルなストーリーを専門に扱う場所」と称している。これまでに登場した執筆陣はフェム(レズビアン)やビーガン、イスラム教徒などさまざまで、トピックも美容整形やナチュラルヘアなど多岐にわたる。そこでは美に関する従来のコンテンツは扱われていない。

ビューティーコンメディア(Beautycon Media)などの企業(若い消費者を対象とするカンファレンスシリーズとして2012年にローンチしたコンテンツクリエイター)も自社のミッションを拡大し、従来の美の基準に挑み、「美が意味するものを再定義する」ことに焦点を合わせるようになっている。そこではあらゆる年齢や人種、アイデンティティーが、いわゆる不完全さと同じく受け入れられている。

「バーディー」の新たなハブ「ザ・フリップサイド」のロゴ

「バーディー」の新たなハブ「ザ・フリップサイド」のロゴ

 

「ラックト」は、有色人種の女性が髪を染めたいと思ったときに知っておくべきことや、曲線美を誇る女性が太ももの内側に吹き出ものができたときに使うべき最良の製品、イスラム教徒の女性がメーキャップの使用を自分の信仰と調和させる方法などを取り上げてきた。

アイデンティティーや自信に焦点

「リファイナリー29」は、さまざまなスタイルの三つ編みに関する概要を配信したり、ストレッチマーク(妊娠線)を愛せるようになった新米ママの記事を読者と共有したり、髪の毛を自然な状態に変えるという感情体験にスポットを当てたりしてきた。また新シリーズ「パワー・フェイシズ(Power Faces)」では、パワフルな女性と彼女たちが選ぶ(あるいは選ばない)メーキャップとの関係を掘り下げている。

「記事はメーキャップに関するものだが、実際には製品名も写真も一切出さない」と、同サイトのビューティーディレクターを務めるキャット・クイン氏は語る。「その代わり、登場人物は自分たちの美の外見がアイデンティティーや自信にどう関係するかに焦点を合てる」。

一方「バーディー」は、大きめの鼻を称賛する記事や、美容業界を揺るがしているトランスジェンダーモデルのリスト、「Why Having a Beauty Icon Was So Important for My Femme Lesbian Identity(美のアイコンをもつことがフェムである自分のアイデンティティーにとってとても重要だった理由)」と題された記事などを配信してきた。

同様に「イントゥー・ザ・グロス」はボーイビューティー(美容男子)などのトピックにスポットライトを当てている。「ザ・カット」は、こうした美の再定義に寄与しているインフルエンサーやブランドを定期的に特集している。「アリューア」も7月の「アメリカンビューティー」特集号で、イスラム系アメリカ人モデルのハリマ・アデン(あるいはヒジャブを着用した女性)を登場させたアメリカ初のメインストリームマガジンになった。実のところ「アリューア」は、2017年に入って刊行された7号のうち、5号の表紙で有色人種の女性をフィーチャーしている。この領域においては少しずつしか前進しない業界で、これは偉業だ。

いまが絶好のタイミング

こうした変化は待望されて久しいが、いまが絶好のタイミングだ。アメリカには1億2000万人以上のマルチカルチュラル(非白人系)の消費者がおり、その購買力は3兆3000億ドルを超える。同様にアメリカ国内のLGBTコホート(全人口の7%を占めると推定される)も、9170億ドル超の購買力を誇っている。しかも、これらの数字は上昇する一方と見込まれている。

「ブランドには社会意識を介して世界を良くする力があると若い消費者は考えている」とリサーチ会社カッサンドラ(Cassandra)でインサイトおよび戦略部門のディレクターを務めるレイチェル・ソーンダース氏は語る。同社が発表した報告書「Impact」によると、アメリカの12~34歳の若年層のうち65%は、世界により大きなプラスの影響を及ぼせるのは政府ではなく企業だと考えているという。「Z世代は歴史上もっとも多様性に富んだコホートだ」とソーンダース氏は言う。「すでにインクルーシビティー(包括性)を取り入れている企業が将来、ロイヤルティーを獲得する見込みは、今後さらに高まるだろう」。

ボーイビューティーに関する「イントゥー・ザ・グロス」のエディトリアル記事の写真

ボーイビューティーに関する「イントゥー・ザ・グロス」のエディトリアル記事の写真

 

「読者は雑誌の常套句に嫌気が差している。『ビーチボディーガイド』や、過度のエアブラシ修正が施されたモデルが喧伝する美と理想に関する非現実的な『ルール』といったようなものだ」と、「バーディー」のエディトリアルディテクター、フェイス・シュエ氏は語る。

「何十年ものあいだ、こうしたコンテンツの中心は比較、つまり均一な完璧さという一種の理想だった」と、ビューティーコンでコンテンツ部門の代表を務めるエリッサ・スタークマン氏は述べている。「我々に与えられるプラットフォームがオンラインとオフラインの両方で増え、美が意味することの領域を探求できるようになるにしたがって、話題は個性へと移り変わってきた」。

誰にとってもわかりやすい手段

実際、我々が取材したエディターの多くは、YouTubeやインスタグラムなどのソーシャルメディアプラットフォームを、このテーマの変化を促進する重要な要素だとした。それらがコンテンツの制作や消費を民主化してきたからだ。「こうしたプラットフォームは、個性と創造性を光り輝かせる何百万人規模のコミュニティーを育ててきた。そしてそれは、エディトリアルのなかにも少しずつ入るようになってきた。何が美しいとみなされ、何がそうでないのかは、もはや誰にも断言できるものではない」と、シュエ氏は言う。

我々が住む世界の著しい政治性もこの変化の一因だ。「この9カ月間で、新たな緊急の課題として、すべての人種や宗教、年齢、性的指向、ジェンダーを網羅する姿勢がジャーナリストに対して求められるようになってきたことは間違いない。もちろんビューティー系のエディターやライターも例外ではない」と「アリューア」でエグゼクティブビューティーエディターを務めるジェニー・ベイリー氏は言う。

一部の人々の目には、美とより大きな世界の問題は奇妙な取り合わせに映るかもしれないが、今日のエディターは一方を、他方を論じるためのより好ましい入口ととらえている。「美は社会的変化についての会話を活発にする優れた手段だ。誰にとってもわかりやすいからだ」と「リファイナリー29」のクイン氏は言う。大局に容易に適応できるのは、多くの人々が議論するトピックなのだ。「髪の毛やメーキャップについて、ハリマやアンドレア・ペジック(トランスジェンダーモデル)、ジェームズ・チャールズ(ボーイビューティー界のスター)、モンタナ州にある保留地の女の子などから話を聞くとき、我々は彼らがどこから来たのか、何を信じているのか、世界とどう交わっているのか、などについても打ち解けた会話を交わしている」とベイリー氏は述べた。

こうした新しいコンテンツに対する怒りのコメントをFacebookで見かけることもある彼らだが、反応はおおむね良好だ。

カバーガールのハリマ・アデン。「アリューア」7月号

カバーガールのハリマ・アデン。「アリューア」7月号

 

「読者から、どの記事も楽しんで読めた、共感できる場所を見つけたような気がするといった内容のメールが非常に多く寄せられている」と「ザ・フリップサイド」のシュエ氏は言う。

「すでに定着している」

ビューティーコンは、この方向への転換をはかって以来、エンゲージメント率が2倍になったと公表している。「リファイナリー29」でも、ナチュラルヘアに対するものをはじめとして、関連検索が増加してきている。

「読者の外見を直接反映し、彼らにかかわる問題に目を凝らすことで、我々は突出した別種のつながりを築いている」と「ティーン・ヴォーグ」でビューティー&ヘルス部門のディレクターを務めるジェシカ・マトリン氏は言う。

関係者たちは誰もが、この進化が束の間のトレンド以上のものであると確信している。

「自己表現やアイデンティティーといった、主流となっているこうした話題を促進する動きは、すでに定着している」とビューティーコンのスタークマン氏は語る。「そうでなければならない。我々は、サイロ化された生活やコミュニケーションが可能な時代に生きているわけではないのだから」。

Jessica Schiffer (原文 / 訳:ガリレオ)