BBC、「スローニュース」戦略で フェイクニュース対策:連載「リアリティーチェック」の狙い

偽情報のオンライン拡散への対抗姿勢を強めているBBC(英国放送協会)。このたび、ニュース編集室の中心に嘘を暴く特命ユニットを設置した。

「BBCニュース(BBC News)」でエディトリアルディレクターを務めるジェイミー・アンガス氏によると、チームに配属されたのは現在6人で、倍に増員する計画も進行しているという。この新チームの仕事は、裏が取れていないニュースや、事実を装うニュースを取り上げ、徹底的に検証するテキスト記事や動画を作成することだ。これらのコンテンツは「リアリティーチェック(Reality Check)」というシリーズ名で掲載される。BBCがこれを開始したのは、オーディエンスが英国のEU離脱(ブレグジット)におびえ、事実に対する彼らの信頼が揺らいでいた、英国の国民投票(EUレファレンダム)のときだ。

「スローニュース」の流れ

アンガス氏によると、編集のリソースを集中させるべき対象に優先順位をつけることで、ニュース編集室におけるワークフローの力関係が次第に変わってきたという。調査チームがどの偽情報に絞って暴くかを見極めることは、いまや朝のニュース会議の中心になっている。1年前ではありえなかったことだ。

「リアリティーチェックを要請するのに必要な疑問の種類によって、ワークフローが変わってくる」と、アンガス氏は語る。「きょう我々は論争の的になっている事項のどれについて真相を究められるのか、それをリアリティーチェックのフォーマットに収めるにはどうしたらいいか、という疑問が、我々の朝のニュース会議の中心になっている」。

リアリティーチェックのフォーマットを強化することは、最近BBCがいわゆる「スローニュース」の作成にコミットしていることと歩調を合わせている。それが意味するのは、同社の代名詞であるニュース速報からの転換ではない。今後はより多くのリソースを、作成に時間がかかるデータ視覚化や統計データ主導型の記事とともに、長尺の綿密なテキスト記事や解説動画の掲載にも注入していくということだ。

米国を意識した戦略

BBCは概して、あからさまな嘘とみなされるニュースの誤りを暴くことにリソースを向けることを避けてきた。たとえば、米大統領選の選挙運動期間中に拡散したあからさまな虚偽ニュースのひとつには、「ローマ教皇がドナルド・トランプを支持した」というものがあった。だが今後は、うさん臭い「オルタナティブファクト」(もうひとつの事実)にも焦点が向けられることになる。「我々はインターネット全体の事実確認などできない。事実確認は、記事の編集を中心にしたプロセスであるべきだ」と、アンガス氏は付け加えた。

リアリティーチェックのフォーマットは以前、EUレファレンダムに関連する国内ニュースにだけ使われていたが、のちに対象は拡大され、よりグローバルなトピックを取り上げるようになってきた。最近掲載された記事には、たとえば「リアリティーチェック:米国では数百万人が違法に投票したのか?」や「リアリティーチェック:米国と難民」などがある。

アンガス氏は、嘘を暴く取り組みが、国際的な競争力、とりわけ米国における競争力をBBCにもたらしうると考えている。BBCが米国向けに出すコンテンツは、英国とは異なり、商業的な面がより重視されている。「米国のオーディエンスはBBCニュースに目を向けつつある。なぜなら、ほかの国々は米国で起きていることをどう思っているのかという疑問が、つねに頭から離れないからだ」とアンガス氏。

量ではなく質を重視

チームは今後、読者のトラフィックとエンゲージメントの独自データを使い、リアリティーチェックで注力すべき対象を見極めていく。ただしアンガス氏は、注力の対象を示す指標として使うのは、クリック率(CTR)だけではないと強調する。現在、リアリティーチェックの掲載は1日に2本程度だが、今後は増える予定で、フォーマットもソーシャルプラットフォームで機能するものに拡張される。BBCはすでにFacebookライブ動画を頻繁に配信しているが、今後は、このツールを使って作るリアリティーチェック風の番組が増える可能性が高い。

とはいえ、重視するのは、量ではなく質になるだろう。「我々が目指すのは、スピード至上の量産ではない。提供する編集記事を丁寧に選んでいくことだ」と、アンガス氏は付け加えた。

Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)