BBC、音声プラットフォーム対応「SFドラマ」を試験制作

メディア企業によるAmazon Echo(エコー)やGoogle Home(ホーム)のような音声アシスタント機器の利用はこれまで、ニュースヘッドラインを配信するのが中心だった。だが、BBCの研究開発ラボは、ユーザーとのインタラクションが可能なコンテンツの開発に取り組んでいる。その成果のひとつが、この9カ月間にわたって制作会社ロジーナ・サウンド(Rosina Sound)と共同開発してきたカフカ調のオーディオドラマ『インスペクションチェンバー(The Inspection Chamber:検査室)』だ。

「ハロー、私の名前はデイブ」と、女性の声が語りかけて物語ははじまる。「隔離室での生活は快適だったでしょうか」。

ドラマが進むと、リスナーは3人の登場人物の声を聞く。女性ロボットのデイブと、ケイとジョセフという2人の科学者だ。異星人の可能性もある科学者たちは、故郷に帰る前に、新しい生命体であるリスナーを正確に識別する必要がある(ドラマは、物語がどこで進行しているのか、そして「故郷」がどこなのかを明かさない)。リスナーは、科学的な検査の一環で、「自分は特別だと感じる?」「いまの気分は幸せ、それとも憂うつ?」といった質問に答える。

「科学者たちによる謎解きのアプローチは異なるため、2人のあいだには緊張がある。また、彼らとデイブのあいだにも緊張がある。デイブはコンピュータよりも信頼できない感じがする」と、BBCの研究開発チームのシニアプロデューサー、ヘンリー・クック氏は説明する。

ドラマは約20分続く。大筋は変わらないが、詳細は質問に対するリスナーの回答次第だ。クック氏は、配信開始の前に多くの詳細を明かすことを避けたが、リスナーの回答によって3通りのエンディングが用意されていると述べた。

音声アシスタント機器は、ピザの注文や列車の乗車券の予約のような比較的単純なコマンドを想定して設計されているので、BBCはフィクション制作に応用する方法を編み出してきた。『The Inspection Chamber』での取り組みから、そうしたことを学んできたのだ。

定期・自発的な相互作用を促す

AmazonのAI音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」のスキルの場合、毎回少なくとも90秒間は対話する必要がある。Google Homeでは2分間の対話が必要だ。ドラマでは、リスナーが強制されていると感じることなく回答するような理由が欠かせない。「デイブとのインタラクションは、シーンの切れ目のようになった」と、クック氏は説明する。「技術仕様の制約に基づくクリエイティブの決めごとだったが、実にうまくいった」。

音声アシスタント機器は、あらかじめ選ばれた言葉しか理解できない。開発者は、リスナーが使うと予想される語句を示す。これをフィクションに適用すると、リスナーは条件に合う回答を提示されることになり、不自然な感じになりかねない。こうした制約があるため、どんなジャンルの物語にも適用できるわけではない。それでも、特定の手順に従う科学検証のような、プロセス通りに進むフィクションの分野なら、不自然さがないストーリー構成が可能になる。

登場人物の人数を制限

Alexaに似た登場人物であるデイブと話すことで、物語がはじまり、音声アシスタントの世界をフィクションに結びつけてから、その後のストーリーが展開していく。

BBCの初期のプロトタイプは、テレビ番組の台本のように読むスタイルで、やりとりが多すぎて混乱を招くものだった。ユーザーが1人の登場人物としか話さない別のテストでは、物語の範囲が限られた。3人の登場人物なら、リスナーに物語での自分の立場を理解させるのに十分であり、機器との定期的なやりとりが可能で、興味を失わせることもない。

「我々が避けたかったのは、メンタルモデルとリスナーの立場が複雑になりすぎることだ」と、クック氏は明かす。同氏はさらに、進行がはっきりするよう、合図の音を鳴らして、リスナーに話すタイミングを示していると付け加えた。

BBCはまだ『インスペクションチェンバー』をテスト中だ。年内には試験的番組『テイスター(Taster:味きき役)』を配信開始して、オーディエンスからフィードバックを集める。このドラマは、AlexaとGoogle Homeに対応し、今後登場する新製品にも対応する予定だ。

大半の時間はスクリプトの制作に充てられ、最後の2カ月間は録音とストーリーの開発に費やされた。「スキルを作成する際、作業はコーディングではなくモデリングが中心になる」と、クック氏は説明する。「複雑なフィクションの物語を作るなら、その作業が2倍になる」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)