Facebook動画制作、人気メディアたちのハック事例:莫大なオーディエンスを稼ぐヒント

「ザ・バージ(The Verge)」のエンゲージメントエディター、ヘレン・ハブラク氏が今後を見据えるとき、そこにあるのは動画、そしてFacebookだ。ザ・バージでは2016年、動画のビューがページビューを上回った。そして今年、同サイトが制作する動画数は2倍以上に増えるとハブラク氏は見ている。

「動画はいまや、Facebookページ構築の唯一の方法になっている」と、ハブラク氏は語る。「とてつもないオーディエンスがあるのだ」。

実入りのよい動画広告の料金とFacebookでの露出が見込めることから、パブリッシャーたちはこぞって動画を制作している。Facebookでは、写真やテキストリンクよりも動画を投稿するほうが、コンテンツを見てもらえる確率が高いのだ。2017年第1四半期、メディア企業によるFacebookへのソーシャル動画のアップロード数は93万1000本で、前年同期から109%増加した(チューブラー・ラボ[Tubular Labs]がメディア企業2000社を測定した統計)。

しかし、動画制作には時間もお金もかかる。そこでパブリッシャーたちは、功罪はともかく、さまざまなハックに頼っている。今回は、そのなかでも一般的な手法をいくつか紹介する。素晴らしいと思うか軽蔑するか、その判断はみなさんに委ねたい。

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ライブ動画ハック:Facebookは、CNNからVice Mediaまで、さまざまなパブリッシャーたちに総額5000万ドル(約57億円)以上を払ってライブ動画を作らせ、ライブこそが新しい重要な優先事項だと宣言した。その際、クリエイターがライブ動画の制作に殺到するように、ライブのためのインセンティブを設定した。その結果、デイリー・ドット(The Daily Dot)やユニラッド(Unilad)といったパブリッシャーのように、実際にはライブでもなんでもない、事前に録画した動画をライブとして投稿するところが出てきた。ほかに、ライブ機能を使ったアンケートやカウントダウンクロックもよくあるトリックで、BuzzFeedなどが使っている。

Facebookは録画動画をライブ動画として使うことを認めておらず、また調査ベースの動画はフィードでの表示を減らしていくとしているが、これらは完全になくなってはいない。Mic(マイク)は、政治討論番組などの事前録画動画をライブとして流すなど、悪びれることなく、このフォーマットを実験している。またラックト(Racked)は先日、口紅のふたつの色からひとつを選ぶ調査を静止画に添えたものを投稿した。カイリー・コスメティクス(Kylie Cosmetics)によるこの動画は、ライブ動画として投稿されている(次の動画)。

 

GIF:GIFアニメも、クリエイターがFacebookのアルゴリズムの裏をかく方法として使われている。各プラットフォームでオーディエンス獲得をめざす動画クリエイターを支援するスタートアップ、ICXメディア(ICX Media)でマーケティング責任者を務めるサベル・ハリス氏によると、5分間の動画をたとえば2分間に短縮するのに何時間もかかることがあるのに対し、GIFは5分で制作できることから、同社のクライアントはGIFをよく投稿しているという。「簡単に作れて、ビューをあんなに稼げる。Facebookも、エンゲージメントを得られるコンテンツを優先している、というわけだ」とハリス氏は述べる。一方、ザ・バージのハブラク氏も、「我々はGIFをFacebookにたくさん投稿しているが、実にパフォーマンスがいい」と語った。

しかし、批判的な向きからは、ユーザーが離れるリスクがあるとの声がある。GIFはループという性質上、エンゲージメントの数値は高くても結局は中身がないエンゲージメントになることから、ハリス氏もクリエイターにはやめるように言っているという。「空虚なフェイク指標のようなところがある」とハリス氏は語った。

ほかの人の動画:必要なだけの動画を作れないという人も、心配はいらない。ほかの人の動画を再投稿すればいいのだ。Facebookのアルゴリズムの動きは謎なところがあるが、ハリス氏によると、パブリッシャーは動画をまったく作らなくても、動画を投稿すればほとんどの場合、エンゲージメントのポイントを得られる。すると回りまわって、そのパブリッシャーのコンテンツが人々のフィードに多く表示されることになる。「ビューは稼げなくてもエンゲージメントは手に入る。そうすればFacebookは、類似コンテンツを(人々に)表示するようになる」と、ハリス氏は語る。

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(VoxがTech Insiderの動画を紹介した投稿)「この男性は6週間、中国のiPhone工場に侵入した。そこがどんな工場だったのかを紹介しよう[動画はTech Insiderより]」

自動化:動画は動画である必要はまったくない。調査やカウントダウンクロックのように、静止画をつなげただけのものに、テキストとモーショングラフィックスを重ねたものでもよいのだ。ウォッチイット(Wochit)とウィビッズ(Wibbitz)の2社は、パブリッシャーの安価な動画制作を自動化ツールで支援している主要ベンダーだ。たとえばガネット(Gannett)傘下のUSAトゥデイ・スポーツ・メディア(USA Today Sports Media)では、自動化ツールを使って時間をかなり短縮できていると、スポーツデジタル資産担当GMのクリス・ピロン氏は語る。ソーシャルユーザー向けにテキスト編集者が静止画とグラフィックスから何時間もかけて動画を作るのを、自動化ツールがあれば30分くらいに短縮できるという。

「デジタル制作のROI(投資利益率)が下がっている」とピロン氏は語る。「動画制作はこれまでずっと、Final Cutを使う動画チームが必要な、お金がかかるものだった」。それが自動化ツールによって、「エンゲージメントのための動画制作に、専門の動画制作チームを持つ必要がなくなった」のだという。

音声の再利用:パブリッシャーたちのあいだでは、ポッドキャストの露出を増やすのにFacebookのライブ動画が使われている。たとえばUSAトゥデイ・スポーツでは、「MMAジャンキーラジオ(MMAjunkie Radio)」が音声番組の露出拡大を試みた。ピロン氏によると、Facebookのライブ動画で番組のストリーミングを開始したところ、ポッドキャストのダウンロード数の3倍以上にあたる、3万人もの人々がチャンネルを合わせたという。

ハブラク氏のような人からすると、こうしたツールやフォーマットは「楽しくて面白い」ものを作る「自由」を、自分たちのような人々にもたらしている。一方、純粋主義者たちからすると、オリジナル動画(場合によってはオリジナルのライブ動画)に満たないものはすべて、Facebookのアルゴリズムと相まって不公平な優位性を生み出し、大衆をミスリードしているということになる。

GIFを動画として運用するのは「ユーザー体験の不当表示だ」と、アップワージー(Upworthy)のコンテンツコラボレーション担当VP、ニコール・キャリコ氏は非難する。「オーディエンスを意図的にミスリードすれば、得られる価値以上のコストを払うことになると我々は考えている」。

しかし、純粋主義者以外の人からすると、パブリッシャーはFacebookの膨大なリーチを利用するためにやる必要があると思うことをやっているだけだ。それに、パブリッシャーの動画マネタイズにFacebookがほとんど協力していないとなると、少なくともそこでの露出を最大化するため、やる必要があると思うことをやることになる。

「Facebookで私がやらないことはほとんどない。というのも、Facebookの潜在力をあますところなく使っていないところが多いのだ」とハリス氏は述べる。「Facebookはあまり教育を提供していないので、いまもかなり無統制な競争状態にある」。

Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)
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