米通信大手AT&T、ネットテレビ「DirecTV Now」を発表:コードカット対策で勇断

米最大手通信AT&Tは28日(現地時間)、インターネットテレビ「DirecTV Now」を発表した。衛星・ケーブルの月額100ドル超よりも安価な月額35〜70ドルで60〜120チャンネルを提供する。大量のテレビ放送がモバイル、ラップトップ、コネクティッドテレビなどのデジタルデバイスに開放された形だ。衛星・ケーブルテレビの月額100ドルを超える水準よりも安くなるので、新しい顧客の受け皿になることが期待されている。

数十チャンネルをバンドルした「インターネットテレビ」のカテゴリーでは、プレイステーション提供のサービスなどが先行しているが、影響力がある通信最大手AT&Tが踏み込んだため、今後他事業者が追随する可能性がある。

AT&Tは全米最大級の通信キャリアであり、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)のため、動画ストリーミングを提供する際に技術面と戦略面で有利な点がある。

衛星・ケーブルプロバイダーの場合、膨大な設備投資を行ったため、衛星・ケーブルのサービスをインターネットにも移植するという判断が下しづらいが、通信大手AT&Tにとっては自社のインフラを活用するため決断しやすかったはずだ。

米国では衛星・ケーブルテレビを定額利用することが一般的だったが、近年はコードカットと呼ばれる解約者の拡大に苦しんでおり、特にモバイルにどうコンテンツを届けるか議論されてきた。

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発表されたDirecTV Nowのロゴ

ニューヨーク・タイムズによると、AT&Tエンターテイメントグループのジョン・スタンキーCEOは「これまでDirecTVの衛星パッケージに 興味のなかった人を惹きつけられるだろう。これまで到達できなかった新しいセグメントにサービスを開放する」と話し、既存事業を圧迫しないと説明している。

10月に合意に達しているAT&Tによるタイムワーナーの買収が、ドナルド・トランプ次期大統領に認可されるかどうかが重要だ。タイムワーナーは人気ドラマシリーズを多数抱えるHBOや国際ニュースのCNN、映画配給会社ワーナー・ブラザーズを傘下に置いており、買収により自前のコンテンツを確保でき、ストリーミングサービスを多様化したり、コンテンツを専売的にしたりするかもしれない。

競合の米大手通信ベライゾンもストリーミングに注力しており、主戦場は利用が拡大するモバイルだ。

現状の収益化方法はサブスクリプションだが、通信会社は膨大なユーザーの属性・行動データをもっており、視聴を通じてもデータを得られるだろう。このため広告も追加できると言われる。

Written by 吉田拓史
Photo by Mike Mozart(CreativeCommons)