「ユーザー体験」を極めたら、広告効果も高まった!? 〜老舗メディアの逆説的な試み

2015年4月にデジタル版サイトデザインのリニューアルを行った、創刊150年超の老舗週刊誌『アトランティック(The Atlantic)』。その際に取り組んだユーザーフレンドリーな設計は、とても逆説的な試みだった。広告をページの目立たない部分に配置し、読者にクリックを迫らないことで、ユーザー滞在時間の増加を狙ったのだ。

この試みは奏功し、読者は増えた。しかも、ネイティブアドの閲覧が改善され、クリック率(CTR)は3倍になったという。また、ページ滞在時間もかつての4倍、5分に増えた。広告を控えめにすることで、広告の効果を引き上げることに成功したのだ。

いかに「ネイティブアド」の効果を高めたか?

広告効果測定を提供する企業ナッジ(Nudge)はこう分析した。「デザインを一新したのち、同誌のネイティブアドは、ソーシャル上でのシェア数を格段に増やした。ページ滞在時間で比較すると、いまやソーシャル拡散を得意とする『BuzzFeed』や『Mashable』をしのぐ」と。

たとえば、この半導体設計開発大手クアルコム(Qualcomm)の広告は、Facebookに4万1000回、Twitterには450回もシェアされたと、ナッジは言う。別の例も挙げよう。ボーイングだ。こちらはFacebookで7000回、Twitterで319回、それぞれシェアされている。

ネイティブアドプラットフォームのPolarによると、「アトランティック」のオーディエンスの滞在時間の長さは業界平均を超している。さまざまなデバイスで同誌のネイティブアドが視聴される時間は、平均で2分41秒。コンテンツのカテゴリーによって長短があり、ニュース・カテゴリーで約2分。金融で4分という。

ナッジの分析によると、「アトランティック」は、コンテンツのなかでネイティブアドの露出を増やすアドテクサービス「スタンブルアポン(StumbleUpon)」の利用を減らした。「スタンブルアポン」は表面的な視聴しかされないとの批判を受けていたからだ。これを考慮した「アトランティック」は、エンゲージメントを高めるといわれるFacebookなどのソーシャルネットワーク拡散に注力したという。

「アトランティック」の現在のページは、意識的に読者が目にするネイティブアドの数を減らした造りにしている。そうすることで、むしろ目立たせることに成功した。

品質面でも向上させた「ネイティブアド」

同時に「アトランティック」は、2015年に自社内のマーケティング部門「Re:think」の人員を20%増やした。キャンペーンでのインタラクティビティとデザインのテコ入れが目的だった。

クアルコムのシリーズ・キャンペーンでは、作り込んだアートとしてのビデオや情報をもっと見てもらおうと、オリジナルのイラストを盛り込んだ。

このクリエイティブ面での微調整が、同誌のネイティブアドの評価を高め、2014年における「アトランティック」の広告売上の60%を占めるまでになった。2015年もまた、10月までの広告売上において、30%も成績が伸びた主要因になっている。

「一気にたくさんのことを実行した」と、バイスプレジデント兼発行人のヘイリー・ローマー氏は語った。「読者向けのデザインリニューアルだったのだが、報われた。ネイティブアドをサイトに統合する手立てについても考え直した。エンゲージを高めたい広告主に応えていく。それが絶対目標だった」

編集コンテンツと混同する読者も

エンゲージメントは重要な目安である。だが、ブランドイメージの影響力を高め、購買につながるように仕向け、さらにはこれらがうまくいっているかを計測することこそが、パブリッシャーの次なる使命となるだろう。「読者はネイティブアドを、編集コンテンツと広告、どちらとして見ているのか?」という疑問が浮上してきたのだ。

コンテンツマーケティングプラットフォームの「コンテントリー(Contently)」は2015年7月、「アトランティック」をはじめ、7つパブリッシャーが配信しているネイティブアドを対象とした研究を行った。「アトランティック」に関しては、回答者の約半数(47%)が、ネイティブアドを編集コンテンツだと思い込んでいた。ほかのパブリッシャーのネイティブアドは、さらに混同されていたという。7つの広告のうち、5つまでを編集コンテンツだと思い込んでいた人がほとんどだった。

「記事広告」などのラベルをつけても、編集コンテンツのような風貌のネイティブアドは、いまなおパブリッシャーに葛藤をもたらす。ローマー氏は、記事広告を識別しやすいように、サムネイルへ「スポンサードコンテンツ」というラベルを表示しており、ネイティブアド配信においても早くからガイドラインをつくったと説明している。

Lucia Moses(原文 / 訳:南如水)
Image courtesy of The Atlantic.