iOS9の「Apple News」配信に、パブリッシャー利益はあるのか? 参入を決めた4社に聞いた

すべてのプラットフォームがニュースをより良くアグリゲートすることに躍起になっている。Facebookは2015年5月、パブリッシャープラットフォームの「Instant Articles」をローンチ。これに対し、Appleは同年9月16日、iOS9のリリースとともにニュースアプリ「Apple News」を配信する。

Facebookの「Instant Articles」への参入に対しては、慎重な姿勢を見せた多くのパブリッシャー。しかし、このニュースアプリに対しては、歓迎ムードを漂わせている。

「Apple News」は、パブリッシャーが記事を直接配信できる最新のプラットフォーム。iPhoneというデバイスを通して、このアプリには、「ニューヨーク・タイムズ」や「CNN」を好むいわゆる「保守派」の読者から、「Vox.com」や「Mashable」を好むいわゆる「デジタル・ネイティヴ」な読者まで、多種多様なオーディエンスが存在すると見られている。

また、「Apple News」で読まれた記事は、そのままパブリッシャーのトラフィックとしてカウントされるという。そのため、多くのパブリッシャーが積極的に参入してくると考えられている。そこで、本記事では、すでに同アプリへコンテンツ提供を決めた、4つの大手パブリッシャーの動きを追った。

CNN

米CNNテレビはこの1カ月ほど「Apple News」ベータ版を試しているパブリッシャーの1つだ。CNNが自社サイトで掲載しているすべてを「Apple News」ベータ版に投稿しており、パララックスや動画レイアウトなどの専用のパブリッシングツールも利用している。CNNの最高商品責任者であるアレックス・ウェレン氏は、このようなテストを実施した理由に、大規模に配信することが読者のコンテンツに対する反応を見る、最適な方法だからだと話す。
「ここまでの規模でコンテンツをアプリに投入したプラットフォームは、ほかにはない」と、彼は語る。「オーディエンスと効率的に繋がっているかどうかを見極めるためには、大規模に取り組むことが唯一の方法だ」。
Appleはパブリッシャーのコンテンツによる収益化を支援すると表明。2つのケースがあり、1つは「Apple News」の広告枠をパブリッシャーが自ら販売する場合。この場合、得た利益はすべてパブリッシャーのものとなる。もう1つはAppleに広告枠の販売を任せ、収益の70%を得るというもの。この場合は、Appleが30%の手数料を得ることになる。これについてCNNは、現在検討中だという。

Vox Media

Vox Mediaも「Apple News」のベータ版に参加しており、アプリのローンチ時には「SB Nation」「The Verge」「Vox.com」など、8つの自社メディアすべての記事を配信する。新たな読者を獲得できる能力と、コンテンツを自社サイトと同様の見栄えで掲載できることに期待しているという。
「コンテンツエクスペリエンスを、プレミア感のある、エンゲージの高い、共有できるものに変化させる機会となった」と、Vox Mediaのグローバル・マーケティング・パートナーシップ部長、ジョナサン・ハント氏は話す。
広告枠が販売できることもVox Mediaが「Apple News」における取り組みを推進する要因の1つだ。しかし、Vox Mediaの役員たちは、直近における広告枠の販売は検討していない。コンテンツに読者がどう反応するかを見極める時間が必要だという。

タイム

タイムも「ピープル」「タイム」「スポーツ・イラストレイテッド」を含める、すべてのメディアを「Apple News」に参加させる。オンライン上に記事が配信されると、すぐさま「Apple News」に反映されるようにした。
これには、各メディアのスポンサーたちの広告を、より多数のオーディエンスに届けるという思惑がある。また、「Apple News」が読者に対して、記事をレコメンドしてくれることが予想されるため、さらに多くの人に見てもらう機会が広がるという。
「より多くの記事を掲載するメリットがある」と、タイムのデジタル部門担当バイスプレジデントのスコット・へイヴン氏は語る。「Facebook の『Instant Articles』は、Facebookだけにアクセスが集中し、自社サイトへのトラフィックはもらえない。いわゆる『ゼロサムゲーム』のようなものになっている。しかし現時点では、『Apple News』は我々が期待する、新しい仕組みになりそうだ」

Wired

コンデナストも「Apple News」に対する努力を惜しまない。数人のデベロッパーとデザイナー、そしてエディターを「Apple News」の専属とし、自社内でカスタムした「ワードプレス」のプラグインを通して運用する。
1日あたり投稿する予定の記事数は約24本。同社のメディア「WIRED」担当者も、Appleが記事を「美しく直感的に」読者へ提供する機会をくれたと話す。
「Apple News」は新しいプラットフォームであるため、トラフィックの予想が難しい。「WIRED」はいまのところ、自社で「Apple News」の広告枠を販売している。広告事業部長のロビー・ザウワーバーグ氏は、2016年度の資金やトラフィックの予想がつき次第、従来の広告キャンペーンも追加する計画だと話す。

Lucia Moses(原文/訳:小嶋太一郎)
Photo by Apple

【2015年9月17日 11:00 追記】本日未明にリリースされたiOS9では、「Apple News」の存在は確認されていない。2015年9月25日に発売される新モデルにおいての実装になるか確認が待たれる。詳細は改めて追っていきたい。(DIGIDAY[日本版]編集部)(新規追記あり↓)

【2015年9月17日 13:00 追記】「Apple News」とはアプリというより、機能という意味合いが強く、ホーム画面の左側にある「検索画面」に表示されるものであるがわかった(下図)。パブリッシャーにとっては、窓口が増えたことになり、オーディエンス獲得の機会が広がったのは間違いない。(DIGIDAY[日本版]編集部)(新規追記あり↓)

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【2015年9月17日 21:00 追記】「iPhone Mania」の伝えるところによると、iOS9の新アプリ「Apple News」は、アメリカ、イギリス、オーストラリアの3カ国対応。日本でも地域をアメリカ合衆国に変更するとプリセットアプリとして利用できる。(DIGIDAY[日本版]編集部)