AppleとGoogleの広告規制に震えるパブリッシャーの憂鬱

6月の前半は、プラットフォーム大手の力が誇示された時期だった。

まず、Googleの計画についてさらなるニュースが流れた。迷惑な広告を締め出し、サードパーティー製のアドブロッカーを使用する訪問者にパブリッシャーが料金を請求して、その収益をGoogleと共有させるツール「ファウンディングチョイス(Funding Choices)」を提供するという。続いてAppleが、「Safari」ブラウザをアップデートし、自動再生動画をブロックすると同時に、ユーザーのブラウジングの追跡にピリオドを打つと発表した

こうした動きはもっぱら、「消費者の勝利」とされている。繰り返し表示される迷惑な広告とプライバシーへの懸念から、アドブロッカーをインストールする消費者が増えているからだ。だが、パブリッシャーは、テック大手2社が自分たちの市場シェアを守ろうとしているのだと見なしている。Appleは自社を顧客のプライバシーの守り手として位置付けることによって。そしてGoogleは、ライバルであるFacebookのデジタル広告シェアをできるだけ奪い取ろうとすることでだ。そのように、大手2社がしのぎを削るなかで、巻き添え被害に苦しむ恐れがあるのはパブリッシャーなのだ。

困窮するパブリッシャー

楽天的な見方をすれば、迷惑広告の規制は、アドブロックの増加に歯止めを掛け、最終的には、広告に依存するパブリッシャーの助けとなって、デジタル広告に対する広告主の信頼を取り戻してくれるかもしれない。デジタルメディアはしばしば、広告売上を増やそうと躍起になって、持続不可能な軍拡競争に苦しんでいるように見える。

また、動画ベンダーのブライトコーブ(BrightCove)で最高経営責任者(CEO)を務めるデビッド・メンデルス氏は、迷惑なのは広告主もわかっているので、自動再生動画広告は、どちらにしてもパブリッシャーにとって良い収入源ではない、と指摘する。一方、プレミアムパブリッシャーの業界団体デジタル・コンテント・ネクスト(Digital Content Next)のCEOであるジェイソン・キント氏によると、Appleが追求しようとしているリターゲティング広告は、パブリッシャーの売上高の3~4%を占めるにとどまっているという。

それに、現実を見据えよう。パブリッシャーは、自分の足を引っ張るような真似をしてきた。気分を害する広告をサイトに掲載し、最初にアドテク企業が訪問者のデータを収集できるようにして、プラットフォームが現在、介入して解決しようとしている問題の一因となってきたのだ。おそらく、大手テック企業がブロッカーをブラウザに組み込んで歯止めをかけていなければ、パブリッシャーはまだ、ポップアンダー広告やポップアップ広告でユーザーを徹底的に悩ませていただろう。

Googleの計画に妥当性は?

だが、どういう広告フォーマットが許容範囲であり、どういうものが許容できないかをプラットフォーム大手1社(または2社)に決めさせると、利害関係のあるパブリッシャーにとって気がかりな疑問が浮上する。

あるパブリッシャーの幹部は、提携するプラットフォームを怒らせることを恐れて匿名で次のように語る。「ユーザー体験をコントロールすることで既得権を得ている企業は、業界の方針を定めるべきではない。検索を本業とするGoogleの場合、業界の方針を定めても、Googleの中核事業がダメージを受けることはないからだ。Googleは、自分たちにとって利害関係のない広告に対するフィルターを開発しようとしているが、ほかの広告フォーマットの供給が減るので、むしろ検索への需要が高まる。最悪のシナリオは、寡占に好都合な広告フォーマットにつながることだ」。

こうした締め出し策がどういう形で実行されるのかについては、疑問がある。動画や動画プレーヤー全体がブロックされるのか? 自動再生動画広告をときどき流している保守系ニュースサイト「インディペンデント・ジャーナル・レビュー(Independent Journal Review)」のCEOであるアレックス・スカテル氏は、疑問に思っている。パブリッシャーは、サイトへの広告掲載方法を変更せざるを得なくなる可能性があるからだ。

すべてのパブリッシャーが、等しく影響を受けるわけではない。パブリッシャーが自動再生動画広告を武器にできなくなると、それでなくてもアドテク需要のせいで追い詰められている小規模な独立系パブリッシャーに不相応な影響が及ぶと、女性向けライフスタイルメディア企業ポップシュガー(PopSugar)の最高売上責任者(CRO)ジェフ・シラー氏は指摘する。

パブリッシャーの成功が必要

プラットフォームによる広告対策が、特定のフォーマットを大ざっぱに扱いすぎるという懸念もある。特定の広告に対するユーザーの忍耐は、置かれている環境や前後関係で変化する可能性がある。視聴したいと思っているテレビ番組の前に30秒間流れる自動再生動画広告なら大丈夫でも、30秒間のニュースクリップの前に同じ広告が流れるのは耐えがたいかもしれない。

自動再生広告をすべて一掃しても、持続可能な事業をオンラインで構築しているパブリッシャーの問題は解決しない、とメンデルス氏は言う。

「苦闘しているパブリッシャーから何かを奪おうとしているが、役には立っていない。大手プラットフォーム企業にとっては、パブリッシャーが成功して真のビジネスモデルを持つことが必要だ。だが、大手プラットフォーム企業がしようとしているのは、パブリッシャーの生活をより困難なものにすることばかりだ。誰もがパブリッシャーに、金を稼げない方法や自分たちの金を奪われない方法を教えている」とメンデルス氏は言う。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)