「アドブロック利用は、むしろWeb体験を傷つける」〜マリッサ・メイヤー氏の主張

Yahoo!のCEO(最高経営責任者)マリッサ・メイヤー氏は29日(現地時間28日)、米インタラクティブ広告協会(IAB)がニューヨークで開催した「アドバタイジング・ウィーク」に登壇。ユーザーの「関心」と「閲覧履歴」に結びついた広告は、Webのユーザー体験を損なうどころか、反対に向上させてきたものだと主張した。

「ブラウザのIncognitoモード(匿名モード)を利用して、ターゲティングされていない広告を受けとったり、アドブロックを利用して広告自体を受け取らない人にとって、Webのエクスペリエンス(体験)は極めて豊かさに欠けるものになってきた。だからこそ、アドブロックをインストールすることは誤りだと、個人的に考えている」。メイヤー氏はこうも語った。「もし友人や家族がアドブロックをインストールするべきか訪ねてきたら、こう答えると思う。『それはやめて。あなたのWeb体験が、より悪いものになるから』」

メイヤー氏の主張は、アドブロック推進派にとって、誇張のように聞こえるかもしれない。実際、そんなYahoo!もユーザー体験を傷つけた過去がある。2015年8月、クラッカーがアドビ・フラッシュの脆弱性につけ込み、Yahoo!を訪れた数百万のユーザーの端末に、広告配信ネットワークを伝ってマルウェアを感染させたからだ。そのクラッキングは、Yahoo!が自ら発見するまで、1週間近く続いていた。

広告収益モデル継続を

ユーザーエクスペリエンスをめぐる議論だけではなく、パブリッシャー(媒体社)とリーダー(読者)の間で交わされている「暗黙の契約」に相反するという一般論も、メイヤー氏は展開。広告がブロックされることは、売上の損失を意味し、パブリッシャーはライターに報酬を支払えなくなるだけでなく、コンテンツの掲載すら困難になる。アドブロックを「窃盗」と呼ぶ、パブリッシャーもいるほどだ。

彼女はヒステリックな様子ではなく、冷静に次のようなことを語った。「我々は、この収益モデルの活況を維持できることを証明したい。そして、これまでの広告モデルが的確に機能するビジネスモデルであり、インターネットの進化に寄与できることを確認する必要があると思っている」。

その一方、広告主は「善良な規範」を持って、広告を運用する必要もあると、彼女は指摘する。読者に対して、どんなデータを取得し、いかに広告を受け取るかを掌握していることを明示できればいいという。

ブロックされないネイティブアド

Yahoo!が、売上のほとんどを広告に依存していることを考慮すれば、メイヤー氏の反アドブロックの姿勢は理解できる。Yahoo!は自身が提供するコンテンツに広告を掲出するだけでなく、ほかの媒体社が収益化することを支援するサービスも提供しているからだ。ディスプレイ広告の売上は、2015年第1四半期で3億8100万ドル(約460億円)と、前期に比べて7%ほど落ち込んでいる。メイヤー氏は、モバイル、ビデオ、ネイティブアド、ソーシャルアドに注力し、大きな成果を上げることを迫られているようだ。

偶発的な形で、アドブロックはYahoo!の方針を変えることになりうる。アドブロックの浸透は、ネイティブアドへの戦略的投資をもたらしたと、メイヤー氏は語った。多くのユーザーがディスプレイ広告に不満を覚える世界では、筋の通る戦術だ。

「より広告がコンテンツとともにあるようになれば、ユーザーがそれを取り除くべき理由がより減る。それこそユーザーがたったいま、ネイティブアドで経験していることなのだ」。

Ricardo Bilton(原文 / 訳:吉田拓史)
Photo by Giorgio Montersino / Flickr