「ガーディアン」紙、VRチーフエディターの1日:「哲学は現実とは何かを知る方法」

新しく設立された「ガーディアン」のバーチャルリアリティー(VR)チームは、冗談ではなく、下水道にいる。

「アンダーワールド(Underworld)」と称された、彼らにとって2番目のバーチャルリアリティープロジェクト製作時の話だ。そのプロジェクトは、実際に汚い現場に足を踏み入れることなしに、ロンドンのビクトリア朝時代の下水道が織りなす、地下迷路の探索へ視聴者を誘う。

11月10日にリリースされた「アンダーワールド」は、Googleの最新VRヘッドセットとコントローラ「デイドリームヴュー(Daydream View)」で利用できる。この作品は、これから18カ月のあいだに公開が予定されている6つのVR映像の最初のひとつだ。

franVRエグゼクティブエディター、フランチェスカ・パネッタ氏(写真右)は、4月の同パブリッシャー初のVRプロジェクト「6×9:独房監禁の仮想体験(6×9: A Virtual Experience of Solitary Confinement)」を中心となって支えた編集者だ。VRプロジェクトの将来的な商業性を模索する「ガーディアン」のコマーシャルストラテジーオフィサー・ディレクターのアダム・フォレイ氏とともに、彼女は現在、5名のVRチームを率いている。

こうしたプロジェクトは、調整に数カ月を要する。「アンダーワールド」制作の最終段階に取材したものを、分かりやすく少し編集し、パネッタ氏の典型的な1日として紹介する。

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07:00 am 起床。アラームはセットしているが、鳴ることはない。私はほんとうに朝型人間だ。ヨガに30分、そして自転車で職場へ向かう。

08:30 am ブレックファストミーティング。アダム・フォレイと私で、メディアエージェンシーに会う。スポンサーシップ獲得の可能性があるミーティングだ。我々が行おうとしているアイデアについてのプレゼンをした。メディアエージェンシーがもっとも気にかけるのは、VRを使うことが目的になってしまうこと。そこで、アメリカの独房での監禁がテーマの「6×9」を我々は紹介した。

これは、我々が作った最初の作品であり、ギミックなどではまったくない。感覚が完全に奪われる心理的な衝撃をあたえ、とても不気味なコンテンツに仕上がっている。我々のアイデアすべてがこれほどハードなものではないのだが、それぞれストーリーをもっている。これまで作られてきたVR作品は、その点で失敗しているものもないわけではない。VRとはいえ開始から30秒たつと飽きられてしまうからだ。

09:45 am チームのスタンディングミーティングの時間。「アンダーワールド」制作に残されたのは2週間。それは、Google「デイドリームビュー」の発売に合わせて発表される、ロンドンの地下水路をバーチャルに探検するという作品。我々はそれぞれがやるべきことを素早く確認する。

技術者のアンドリューが最新ビルドでユーザーテストを行った。この仮想体験を試した人々は、地下の下水道の迷路のなかで道に迷っている。こちらの下水道のセクションのあたりなら、我々であれば進む方向がわかるかもしれない。というのも、我々はこの作品の制作に3カ月つきあっているから。

しかし、人々は水門の近くで行きづまってしまう。人々が好きなように歩き回ることができるようにするべきか、それとも道順を示すべきかについて議論する。また、通路を閉鎖することも検討する。人々に自由を与えつつ、フラストレーションも与える、ほどよい線引きになる。

アンドリューとデザイナーのダーン・ルーターは、当社のWebサイトで「アンダーワールド」を宣伝するための、インタラクティブの最新プロトタイプを披露。こちらにはスクロールダウンは使用したくない旨を強く主張した。Webページを下に進んで行くよりも、トンネル内を前に進む感覚を人は得たいはずだ。コンテンツと画像について話し合う。都会での探検ではなく、そのインタラクティブの経緯に集中して話を進める。

ボイスオーバーについての議論。都市探検家のブラッドリー・ギャレット氏によってナレーションされているが、小説家ウィル・セルフ氏と歴史家リチャード・バーネット氏を含む、ほかの8人の声も挟むことにする。そのアプローチが成功するか、ほかの人々の声をどうやって挟むかについて話す。

10:00 am アイラ・グラス氏(テレビ番組「ディスアメリカンライフ(This American Life)」司会者)が「ガーディアン」紙のモーニングカンファレンスミーティングに招待され、会議室は混雑した。彼はニュースの選択に際しての厳しいプロセスについて語る。そのあと、我々は自分たちのVRのアイデア、ラジオの狙いと録音をVRに移すことが可能かについて、アイラとおしゃべりをした。

10.30 am デザイナーと打ち合わせ。クリエイティブディレクター代理のクリス・クラークとダーンがランディングページを担当している。バーチャルリアリティの何をどこまで説明する必要があるのか、そしてヘッドセットの冷たい親近感のなさにどう対処するかについて我々は話し合う。より人間らしく感じられるように、そのヘッドセットを使用している人の反応に注目してはどうかと、クリスが提案。

12:00 pm 「ガーディアン」の文芸編集者、クレア・アーミステッドと打ち合わせ。VRをフィクションと組み合わせることができるか? アイデアを出し合う。

12:30 pm アシスタントプロデューサー、アネッタとディレクター、ニコールがローンチ計画についてひと通り読み上げる。ニュース記事、インタラクティブ、ポッドキャスト、「アンダーワールド」公開時のふたつの特集記事が予定されている。それらについて、まだやるべき必要があることについてと、それらがいつ公開されるのかについておさらい。

01:30 pm アメリカのチーフ特派員、エド・ピルキントンからの電話。先週、ホワイトハウスにて、テクノロジーが市民参加でどのように機能し、現在の難しい課題に取り組む助けになるかを紹介する展示で相互交流をはかる日、「6×9」が「サウス・バイ・サウス・ローン」に登場。「6×9」は、独房に身を置くことで、独房での監禁による心理的影響を紹介した。エドは「6×9」が良い評価を得たという。

オバマ大統領の上級顧問、ヴァレリー・ジャレット氏がそれを観て衝撃を受けたことを聞いて、私は喜んだ。このような勇気のいるテーマを取り上げることにはリスクを感じるが、ほんとうに衝撃を与えることができる。

02:00 pm チームと私は、医療研究の慈善団体、ウェルカム・トラスト(Wellcome Trust)に向かい、その「ステーツオブマインド(States of Mind)」展を見学する。そこでは、意識について注目し、現実がどのように評価されてきたのかについての歴史に焦点を当てている。私は、ほかのクリエイティブなプロジェクトや展覧会に定期的に赴き、着想を得たり、ストーリーを伝えるために、ほかの人々がどのようにテクノロジーを利用しているかについての情報入手を絶やさないようにしている。

03:00 pm 360度カメラのレビュー。新型の360度カメラでいくつかの試みを行っている。フォトグラファーのデビッド・レベンが、オフィス近くのグラナリースクエアに出向き撮影した。我々はその目の回りそうな映像を評価する。一部、三脚の影を見たり、通りの街灯のゆらめきが片目でだけ見えてしまっていたが、それ以外はそのテストに我々は満足している。

03:15 pm デジタルエディターらとの打ち合わせ。彼らは同社Webサイトのホームページを担当しており、ローンチ計画について話し合う。ステファン・モスはフラッシャー(下水道清掃員)の記事を書いている。都市探検に関するブラッドリー・ギャレット氏のポッドキャストもあり、ギャラリーも備え、我々のインタラクティブは揃っている。すべてが同日にローンチされるべきかどうか議論。

03:30 pm IABプレゼンテーションの覚書を書く。私はVRについてかなりの回数の講演を行っている。「アンダーワールド」を含めた内容にプレゼンテーションを更新する必要がある。

04:00 pm ニコールと私で、私たちの編集長、キャスリーン・バイナーに「アンダーワールド」を披露する。彼女は気に入ってくれ、どうしたら良いVR作品が生まれるか、それを作り出すための技術が何かについて、主観的側面から、双方向的にも、そして視点を含めて話し合う。これから作る作品とそれらの取り組みについても議論。

05:00 pm 最新バージョンと呼んでいる、更新されたビルド。我々はそれをダウンロードし、みんなで観た。次の1時間は、我々が提携しているVFXとクリエイティブコンテンツスタジオのザ・ミル(The Mill)用に追記を書き上げることに使う。音声のなかにはまだ重複しているものがあるが、ナビゲーションは改善されている。いまや、どこへ向かうかについては選択の余地はなく、面白みには欠ける。我々はどの通路を開放するかについて議論する。

07:00 pm 哲学の授業。現在、夕方の授業に参加している。それが忙しい日々の仕事からひと息つく時間だと思っていたが、現実とは何かを知る方法についての授業であることに、最近になって気がついた。いまはヴィトゲンシュタインについて学んでいるところ。

09:30 pm 帰宅し、eメールを片づける。西海岸のチームは仕事を開始しており、回答するメールがいくつかある。食事をして就寝。

Jessica Davies(原文 / 訳:Conyac