YouTube広告騒動、その裏で起きていることまとめ

Googleにとって、この数週間は厳しいものだった。YouTubeで広告が不適切なコンテンツと一緒に表示されるという、マーケターにとってトンデモナイ事実が明らかになったからだ。

当初は、広告のボイコットによってGoogleの収益が低下するという予測もあったが、それが正しいかどうか、まだ検証の必要がある。だが、パブリッシャーやGoogleのライバル企業は、このボイコット騒動を自社の利益のために今も利用している。そこで本記事では、いったい何が大きな問題になっているのかをまとめてみた。

問題点

この問題のもっとも重要な点は、GoogleとFacebookの両社が、自社のプラットフォーム上で公開されている第三者のコンテンツの検証を拒んできたことにある。そのために彼らは、従来のメディアと同じような責任を問われることがなかった。

だが、政治環境がきわめて混乱し、意見の対立が激しくなっているいま、ブランドの多くは、自社ブランドがフェイクニュースやほかの不適切なコンテンツと結び付けられることに神経を尖らせている。しかも、GoogleとFacebookは、英国のデジタル広告支出の70%以上を占有している状態だ。そこでマーケターは、強い不快感を示すと同時に、今回の騒動を自社の交渉力を高める手段として利用している。

とはいえ、この「危機」はYouTubeのみにかかわる話ではない。業界が「作られた怒り」と呼ぶ攻撃の矛先が向いているのはGoogleかもしれないが、問題の根ははるかに深いところにある。そもそもの問題の発端は、クライアントであるブランドが、(デジタルメディアにとって都合のいいスケープゴートとしての調達チームを利用して)大量のメディア広告枠をできるだけ安いコストで獲得するよう、エージェンシーにプレッシャーをかけ続けたことにある。そのような調達を可能にしたのは、プログラマティックトレーディングだった。

「これはGoogleやFacebookだけの問題では決してない。広告のコンテキストをコントロールしようとすれば、それだけコストは高くなる。エージェンシーやメディアオーナーは、その点をもう少しはっきりさせる必要がある」と、メディアエージェンシーのVCCPメディア(VCCP Media)の会長、ポール・ミード氏は語る。

それに加えてYouTubeは、エージェンシーに対して自分たちをテレビ局だと宣伝することで、テレビ広告予算の獲得を増やしてきた。テレビは、リーチという観点からみれば、いまでももっとも安価なメディアだ。YouTubeも安い価格でリーチを提供できるが、テレビと同程度の品質を保証はできない。YouTubeはユーザー生成コンテンツのプラットフォームだからだ。

既得権者

デュオポリーに関しては、誰もが思惑を抱いている。

メディア業界の大御所であるルパート・マードック氏は、以前から積極的にGoogleを批判してきた。偶然とはいえ、その同氏の所有するニューズ・コーポレーション(News Corp)がGoogleと競合するアドネットワークを立ち上げた時期に、今回の騒動は起こっている。また、英国の放送局はビデオオンデマンドの販売実績を伸ばしていることが、業界情報サイトのキャンペーン(Campaign)で報じられた

さらには、アドテクベンダーも今回の機会を都合よく利用している。今回の騒動が起こった時期は、ロンドンで広告の祭典アドバタイジングウィーク(Advertising Week)が開催中で、広告枠販売イベントのニューフロント(NewFronts)やアップフロント(Upfronts)の準備が間近に迫っている時期でもあった。

「メディアオーナーたちは、Googleを叩くことで予算獲得を狙っている」と、ある新聞社幹部は匿名を条件に話してくれた。「実際には、どれも大きなタブーとされている話だが」。

一方のFacebookも、猛烈な批判を受けている。同社がフェイクニュースを広める役割を果たしたからだ。だが、YouTubeの広告騒動の陰で、その批判も下火になった。

こうした状況に、一部の人は困惑している。米国時間3月22日には、シカゴで集団暴行の様子がFacebookのライブ動画で配信されるという事件が報じられた。だが、YouTubeの広告ボイコット騒動と比べれば、このニュースもそれほど注目を集めていないようなのだ。

「Facebookのライブ動画の一件は、実に恐ろしい話だった。だが、彼ら(Facebook)はYouTubeのように責任を問われてはいない」と、オムニコム(Omnicom)の元デジタル責任者で、現在はアドテク企業アイオテック(Iotec)のCEOを務めるポール・ライト氏は言う。「たとえその動画の脇に広告が表示されていなかったとしても、そのことが重要なのではない。問題なのは、そのようなプラットフォームに広告が掲載されているということだ。ITV(イギリス最大かつ最古の民間放送局)が、自社のプラットフォームにそのようなコンテンツを公開したらどうなるか、考えてみればいい。広告主から激しい怒りが沸き起こり、何らかの措置が取られるだろう」。

次に来るもの

今回の事態がいつまでも続くといったことは、現実には起こりそうもない。デジタルに精通している一部の大手ブランドは、そうした考えから距離を置きはじめている。広告ホールディングス世界最大手、WPPのCEO、マーチン・ソレル氏は、3月31日に出演したCNBCの番組で、広告を引き上げると脅せば満足感を得られるだろうが、最強ではないにしても、強力なメディアのひとつをボイコットするのは「賢明ではない」と語った。

「誰がこのような見せしめ的行為を続けているのかということに、我々は注意する必要がある。より伝統的なメディアからこうした話がいつまでも出てくるのは、彼らに既得権があるからだ」と、あるブランドの上級幹部は、匿名を条件に述べた。

それでも、危機というものは、無駄にするにはもったいなさすぎるチャンスだ。業界がそのようなミスを犯すとは思えない。

エージェンシーは今後、こうした状況をコントロールできているとクライアントを安心させる(かつPRする)目的で、新しい検証ツールをリリースしたり、新しい提携を発表したりするだろうし、また、YouTubeのすべての広告を詳しく検証していくだろう。パブリッシャーは、この騒動が自分たちの主張を前に進める唯一の手段であることから、今後も団結し、抵抗を続けるだろう。今回の出来事は、あらゆる関係者にとって警鐘なのだ。

Facebookも、近いうちに同じような注目を受けることがあるだろうか? おそらく、あるだろう。いや、ないかもしれない。

ライト氏は次のように述べている。「次(に審判を受けるの)はFacebookかもしれない。だが、誰がその筋書きを書くのかはわからない。問題は、インスタント記事を利用しているニュースパブリッシャーが、トラフィックをFacebookに依存していることだ。利用はしているものの、コントロールすることはほとんどできない。そのようなメディアプラットフォームについて、ある日突然否定的な記事を大々的に書くようなことはしないだろう。このことは、おそらくYouTubeにはあてはまらなかった。ニュースパブリッシャーにとって、リファラーチャンネルとしての重要性ははるかに低いからだ。結局のところ、パブリッシャーの主要なトラフィックは、Googleの検索とFacebook、そしてAppleの『News』から来ているのだ」。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)
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