【一問一答】「ダイナミックアロケーション」の開放とは?:ヘッダー入札に対するGoolgeのアンサー

デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する、「一問一答」シリーズ。今回のテーマは、「ヘッダー入札」に悩まされるようになったGoolgeからのカウンター、「ダイナミックアロケーション」の開放です。

Webサイトへ広告を配信するアドテク企業各社は、Googleがあまりに強大なことをずっと恐れてきました。デジタル広告の買い付けと売り付けの双方におけるGoogleの力が絶大なことから、Webサイトと広告主の運営にかかわるルールをGoogleが決定できてしまうからです。

Googleはこれまで、さまざまなアドテクサービスを抱き合わせることや、独占のおそれがある行為が非難されてきました。そんななか、同社は2016年4月、重大な動きを見せます。「ダイナミックアロケーション」と呼ばれるシステムを開放し、Googleを含むすべての入札者がWebサイトの広告在庫を平等に競争できるようにするという意向を示したのです。

ダイナミックアロケーションのが約束の通り実施されれば、Googleの主要な競合社がオークションでの力を取り戻す戦術として活用している「ヘッダー入札」は、必要なくなるかもしれません。こうしたルールの変更とパワーバランスの変化に対して大切なのは、Googleのオークションにおけるダイナミックアロケーションに目を向け、それが広告主とパブリッシャーにとって、何を意味するものなのかを知っておくことです。

ダイナミックアロケーションとは何でしょうか?

ダイナミックアロケーションは、Googleが自社のアドエクスチェンジで広告主に提供してきた、広告枠オークションへの参加方法のひとつです。Googleのエコシステムを介して、ほかのエクスチェンジを上回る価格を提示すれば、優先的に広告枠を買い付けられるというものでした。これを介することでパブリッシャーは、Googleと競合するアドエクスチェンジにインベントリー(在庫)を売るよりも高い値を広告主につけてもらえる仕組みになっているため、利点があるという触れ込みだったのです。しかし、実際には、これによって売価が、必ずしも最高値になったわけではありませんでした。

新興のメディアパブリッシャーであるソート・カタログ(Thought Catalog)のCRO、アレックス・マグニン氏は、「ダイナミックアロケーションにより、Googleのダブルクリックアドエクスチェンジ(DoubleClick Ad Exchange、以下AdX)が、Google傘下のアドサーバーであるダブルクリックフォーパブリッシャー(DoubleClick for Publishers、以下DFP)から最高の広告インプレッションをいいとこ取りすることができた」と語っています。

Googleは、ルビコン・プロジェクト(The Rubicon Project)やオープンX(Open X)などの競合アドエクスチェンジが提示する「平均価格」を基に、あらゆる入札に勝利してきました。ルビコンの「平均価格」が2ドルならば、Googleは2.01ドルでそれを上回ることで、そのインベントリーを獲得できたのです。たとえ、ルビコンが「平均価格ではなく」、もう一方の広告主による価格に基づくならば、5ドルを支払ったかもしれない場合でもです。つまり、DFPはAdXに対してはダイナミックでしたが、リアルタイム入札ができないほかのアドエクスチェンジに対しては、そうではありませんでした。

「Googleは最善のインプレッションの買い付けについて情報面で非公式な優位性をもち、その優位性は、アドサーバーをGoogleが所有しているという事実によるものだった」と、マグニン氏は語ります。

それで何が変わるのでしょうか?

Googleによると、ダイナミックアロケーションの競合アドエクスチェンジへのは現在テスト中で、実施されると、競合するアドエクスチェンジからGoogleのAdxと同じ情報が見えるようになり、それにしたがって入札できるようになります。パブリッシャーには、インベントリの価格を最大化する、クリーンで開かれたオークションがもたらされます。

アドテク新興企業ビーズワックス(Beeswax)のCEO、アリ・パパロ氏は、「パブリッシャーの利益を優先させる、Googleの勇気ある呼びかけだ。痛みはすべてパブリッシャー側に負わされていたが、これの実施により、AdXの負担によってパブリッシャー側の収益が改善される。パブリッシャーにとっては、実のある措置だ」と、話しています。

まだテスト段階であるため、多くのアドテク企業はまだ慎重な姿勢を見せています。この新しい入札方式のテストを最初に報じた「アドエクスチェンジャー(AdExchanger)」によると、テストにはパブリッシャーとしてハースト、ジロー(Zillow)、メレディス(Meredith)などが、広告プラットフォームとしてインデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)やルビコンが参加しているそうです。

Googleプロダクトマネジメント担当取締役のジョナサン・バラック氏はブログ投稿で、「ダイナミックアロケーションにおける他者を交えた入札により、パブリッシャーは業界標準のRTB(リアルタイム入札)コールを使ったリアルタイム価格提示に、信頼するサードパーティーのエクスチェンジやSSP(サプライサイドプラットフォーム)を招くことができる」と、説明しています。

ヘッダー入札にどう関係するのでしょうか?

ヘッダー入札は、オークションにおけるGoogleの強大な地位が理由で進化しました。Googleがすべての情報を入手していったのに対し、競合社は入札プロセスに割り込む方法を考案するまで、何も情報が得られなかったのです。

競合アドエクスチェンジは、広告の競争促進をめざすパブリッシャーと合意して、Webサイトのヘッダーにコードを置いてもらえるようになりました。このコードによって競合エクスチェンジはインベントリーと向こう側にいるユーザーの特徴がGoogleより早くわかるようになり、それにしたがって望むようなインプレッションに入札できるようになったのです。ルビコン・プロジェクト、オープンX、アップネクサスといったGoogleの主要競合社の一部では、このヘッダー入札によるインサイトがアドバンテージになっています。

アップネクサスのパブリッシャーテクノロジーグループでシニアバイスプレジデントを務めるトム・シールズ氏は、電子メールによる声明のなかで次のように述べています。「ヘッダー入札は、DFPの顧客が透明なオークションによって、複数のデマンドソースへ対等に直接アクセスできるようにするためのものだ。今回の発表が、ダイナミックアロケーションのオープン化をDFPが完全に受け入れることを伝えるものだとすれば、パブリッシャーにとって素晴らしいニュースとなる。しかし、パブリッシャーが好きなデマンドパートナーと直接取引することができないのならば、また、そうしたデマンドパートナーがみかじめ料を強いられるのならば、ヘッダー入札には依然として存在理由がある」。

それで、ヘッダー入札はこれで終わりなのですか?

そう考えるのは早計です。Googleはまだこうしたより平等な広告オークションのテストを部分的に行っているだけです。ヘッダー入札のようなものが必要かどうかは、結局のところ、Googleがダイナミックアロケーションをどこまでオープンにするか次第です。DFPのオークションや、ヘッダー入札を展開する必要がないオークションに、すべてのアドエクスチェンジが参加するのか、あるいは参加を望むのかは不透明です。それにGoogleが、オークションへの参加料金を設定し、自社のアドエクスチェンジへの参加を制限するかもしれません(そのような計画をほのめかしているわけではありませんが)。

いまのところ、アドテクのコミュニティの前にはヘッダー入札とは別の道が見えています。実際、ヘッダー入札は、組み込まれたGoogleのアドバンテージを回避するハッキングにすぎませんでした。マグニン氏に言わせれば、決して長く続くソリューションではなかったのです。

ヘッダー入札はまた、パブリッシャーからすると、こうした別レイヤーのオークションを管理することでページの読み込み速度が遅くなるという欠点があります。「Googleの変更によって、パブリッシャーがDFPからの収益をサードパーティーのヘッダー入札といったほかの戦術で強化する理由はなくなる」と話すのは、モバイルアドテク企業アデルフィック(Adelphic)の共同設立者であるジェニファー・ラム氏。同氏は「パブリッシャーは、アクセスできるデマンドソースの増加、最適化による収益増、ページの読み込みの高速化といった恩恵を受けることになるだろう」と語っています。

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Garett Sloane (原文 / 訳:ガリレオ)