【一問一答】「デバイスグラフ」とは?:デバイスを超えて個別ユーザーを識別できる技術

デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する、「一問一答」シリーズ。今回のテーマは、複数のデバイスにまたがっても、それを利用するひとりの人間を識別できる技術「デバイスグラフ」です。

マーケティングミックスにおけるモバイル広告の価値を判断するのは、いつもながら難しいものです。測定手法がデバイスによってまちまちで、デスクトップの主要な指標であるクッキーがモバイルでは使えないからです。そのため、人々がメディアにアクセスするデバイスの種類が増えるにつれて、モバイル広告が購買行動にどの程度影響を与えるのかを把握するのは、答えのない問題を解くようなものになっています。

そこでデバイスグラフの出番です。このアイデア(および技術)はここ数年で登場したものですが、急速に採用が進んでおり、その技術は成熟度を増しています。Facebookの(デバイスベースではなく)ユーザーベースのマーケティングツールは、ユーザーIDのログインデータをベースとしており、マーケターの問題の改善に役立っているというのが広告業界の幹部らの評価です。

ああ、また新しい広告用語の登場ですね。一体何のことでしょうか?

デバイスグラフは「ID管理」とも呼ばれており、ある個人とその人が利用しているすべてのデバイスを結びつける地図の役割を果たします。

そのデバイスは、職場にある自分用のコンピューターかもしれませんし、自宅のノートパソコンかもしれません。あるいは、タブレットやスマートフォンかも。デバイスグラフは、各デバイスをそれぞれ異なる個人の行動とみなすのではなく、それらのデバイスをひとりの人間とみなすため、重複が起こりません。

広告主は、ひとりの人間が広告を目にした時刻やデバイスなどの情報がわかるようになるため、モバイル広告が購買行動に果たす役割を把握しやすくなります。

つまり、アトリビューションモデルの強化版なのでしょうか?

イエスでもありノーでもあります。取り組む問題は同じですが、デバイスグラフのほうが手法としてはより正確です。

デバイスグラフには、決定論的モデルと確率論的モデルの2種類があり、マーケターは両方を組み合わせて使う必要があります。決定論的なデバイスグラフは、ユーザーがメールアドレスの入力を求められたときなどのログインデータを利用します。Facebookはこの方式であり、グーグルや、ISPなどのほかの企業もそうです。確率論的なグラフは、位置情報データを利用してデバイスとユーザーを結びつけようとします。

メディア企業のゼニスオプティメディア(ZenithOptimedia)でデータおよびアドテクの責任者を務めるサミール・シャー氏は、「一部のベンダーは、この手法でおよそ80%の精度を達成したと主張しています。以前は40%でした」と説明します。

ほかにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

リターゲティング広告はこの数年間、あまりに露骨な戦略だとして評判を落としています。ごく普通に、以前に購入した製品の広告がいつまでもWebで表示されています。

ですが、デバイスグラフを用いれば、広告や広告が表示されるデバイスを調整できるようになるため、より適切なタイミングで広告を打ち、その結果、より関連性の高い広告を提供できるようになります。

ゼニスオプティメディアのシャー氏は、次のように述べています。「デスクトップでスポーツのコンテンツを見ている日に、モバイルでショッピングやファッションのターゲット広告が表示されるべきではありません。これがデバイスグラフの果たす役割です。また、アドブロックが普及するなか、モバイル広告体験が人々にとって邪魔にならないようにする必要もあります。だからこそ、このことが重要なのです。ユーザーの行動をシームレスに関連づけられるのですから」。

マーケターにとって役立つもののようですね

そのとおりです。ただし、マーケターはその潜在的な影響に気づく必要があるのですが、まだ十分に認識しているとは言えません。

「非常に重要なのは、モバイルで常に存在する測定結果のズレをきちんと説明できることです。これは、すべてのデバイスにまたがるマクロな広告体験に関わるものであり、モバイルは消費者の大多数が利用するデバイスになりました。マーケティングは、消費者の行動に追いつく必要があるのです」と、アドフォーム(Adform)の最高戦略責任者アンソニー・リンド氏は言います。

また、ブリス(Blis)でマネタイズ担当バイスプレジデントを務めるダン・ウィルソン氏によると、マーケターにとっては、Facebook以外の場所で広告を提供できる機会が増えることになるそうです。

わかりました。では、パブリッシャーにはどんな意味がありますか?

広告主は、モバイル広告が、たとえばコンピューターを介した購買行動に結びついている証拠を目にすれば、さらに多くを求めるようになるでしょう。そのため、需要密度が増大し、理論上はパブリッシャーに利益がもたらされます。

リンド氏は、「モバイルのCPM(インプレッション単価)が安くないのは、その広告フォーマットのせいであり、トラッキング機能のせいでもあります。バイヤーが、モバイルの価値と購買にいたる経路とを結びつけることができれば、価格は上がるべきです」と、述べています。

よさそうな話ばかりですが、問題点は何でしょうか?

現時点では、デバイスの共有について説明できる現実的な手段がありません。多くの家族がノートパソコンやタブレットを自宅で共有しており、スマートテレビも共有されているのが普通です。

これらすべてを結びつける鍵となるのは携帯電話ですが、小さな子供が自分用のスマートフォンを所有したり、保護者の携帯電話やタブレットを利用したりする例が増えています。そのようなことはすべて無視されていますが、いまのところは、これが業界が見い出した最適な答えなのです。

また、実施における問題や、確率論的モデルと決定論的モデルの大きな違いが存在します。

ブリスのウィルソン氏は、「実施面では、一部の広告主やパブリッシャーが、全員のモデルを改善するために自社のデータをデバイスグラフに取り込むことを嫌がる可能性があります。けれども、これは自動運転車のようなものです。あるドライバーが事故を起こせば、普通はそのドライバーしか事故から学ぶことはできませんが、無人運転車が事故を起こせば、すべての車がその事故から学べます。デバイスグラフについても同じことです」と、述べています。

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Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)
Image by Thinkstock / Getty Image