WPPのM・ソレルCEO:「テンセントとアリババに要注意」

広告世界最大手WPPのCEOマーティン・ソレル氏は、中国の大手テック企業、テンセント(Tencent)とアリババ(Alibaba)が広告・マーケティング分野でGoogle、Facebook、Amazonに匹敵する競争力を得ていると考えている。

「Google、Facebook、Amazon、それに加えてふたつの中国企業、テンセントとアリババ。我々はこれらの企業を注視する必要がある」とソレル氏は9月25日、アドバタイジングウィーク(Advertising Week)にて、ニューヨーカー(New Yorker)のライター、ケン・アウレッタ氏とのやりとりのなかで語った。

ソレル氏が率いるチームは、この発言に先立つ3週間前、中国に10日間滞在して31の地元企業を訪問するなかで、テック企業大手の規模に驚いたという。たとえば深セン市にある通信大手ファーウェイ(Huawei)の本社では、全従業員20万人のうち5万人が働いている。杭州市にあるアリババの本社にも、約5万人の従業員が勤めているとソレル氏は語った。「欧米企業は私自身も含めて、中国企業の成功を望まない。我々が中国市場に進出して、競争したいからだ。だが中国企業は成功し、競争で優位に立つだろう。たとえばシンガポールでは、アリババはAmazonと接戦を繰り広げている」。

広告分野でも増す存在感

テンセントとアリババは、欧米の広告主から関心を集めていることを十分に意識している。同25日、アドバタイジングウィークで行われた別のプレゼンテーションで、テンセント幹部のスティーブン・チャン氏は、同社が技術、データ、コンテンツ、メディアを提供して「広告エコシステム全体」を築くことができると豪語した。またテンセントとアリババは、今年のCES(国際家電見本市)とカンヌ・ライオンズで、大規模な広告プロモーションを行った。

チャン氏はテンセントのパワーについて、例を挙げて説明。同氏によると、中国では毎分2億6800万人が、同社が開発した初のインスタントメッセージング・サービスであるQQを使っている。中国のモバイルユーザーはオンライン時間の平均58%以上を、月間アクティブユーザー数9億3800万人を擁するWeChat(微信)などの同社のアプリの利用に費やしている。同社はゲーム分野で年間売上高およそ1660億元(約2兆8200億円)を計上し、世界最大級のゲームデベロッパーとなった。さらに、同社のオンライン広告売上高は年間2550億元(約4兆3300億円)に上るという。

「我々はQQ IDとWeChat IDを活用することで、我々が提供する世界のなかで消費者の行動を追跡し、情報を広告主に提供できる」とチャン氏は語った。

寡占状態が大きな魅力

2つの持ち株会社が最近、アリババやテンセントとパートナーシップを結んだ。WPP傘下のメディアバイイング企業、グループエム(GroupM)は9月25日、広告キャンペーンの初期段階で潜在顧客を特定していくために、アリババとのパートナーシップを発表した。また電通イージス(Dentsu Aegis)は今年のカンヌライオンズで、テンセントとのグローバルパートナーシップを発表。双方のデータを組み合わせて、モバイルにおけるオーディエンスの目的を特定し、ターゲット広告を展開していく。

「アメリカでは複数のプラットフォームやベンダーと提携し、さまざまなデータを繋ぎ合わせなければならない。だが中国では有力企業1社と提携するだけで、大規模にオペレーションを展開できる。それがテンセントやアリババの圧倒的シェアの力だ」と、電通イージス・ネットワークの最高戦略イノベーション責任者ニーゲル・モリス氏は、チャン氏とのパネルディスカッションで述べた。

アメリカ進出の可能性は

ブランドセーフティやビューアビリティに関しては、中国のマーケットはアメリカほどには発展していない。チャン氏は、中国におけるデジタル広告はまだ5年ほどの歴史しかなく、メディア評価評議会(MRC)のような業界団体はまだ存在しないが、テンセントなどの大手が自己管理をさらに強めていくと語った。

「Facebookがアメリカでニールセン(Nielsen)と提携したように、我々も2年前にニールセンとの取り組みをはじめた。中国市場の成熟は時間の問題だ」と、チャン氏は述べた。

テンセントとアリババは、大きなパワーと同時に限界も抱えている。主なターゲットは、中国で暮らす人々か、海外旅行中の中国人だ。アメリカへの進出は、まだ模索段階。「アリババやテンセントが、中国から直接アメリカに進出してくることはないだろう。おそらくまずは東南アジアやアフリカを通る」と、ソレル氏は語った。

Yuyu Chen原文 / 訳:塚本 紺)