インベントリー再販をめぐる、SSPの根深い問題:「もはやパブリッシャーへ直接連絡するまでだ」

あるパブリッシャー幹部が最近、匿名を条件に業界全体に関係する問題を告白した。その内容は、オープンな市場へ1日2万しか自社の動画インプレションを出していないにもかかわらず、1日に10万以上の動画インプレッションをこのパブリッシャーのものだと思い込んで購入した一部の広告パートナーがいたというもの。

安いインベントリー(広告在庫)を求める一部の広告主たちが、こうしたトリックに2回以上引っかかったケースもある。彼らはのちに、ひどい買い物をしたことを認識し、このパブリッシャーへなにかしらの埋め合わせを求めてきたという。

「エージェンシー側の間抜けが、我々を介さずに我々のインベントリーをオープンマーケットで買おうというなら、そいつには無駄金を使わせてやるまでだ」と、この幹部は息巻く。「メディアバイヤーはオープンマーケットでの取引には用心すべきだろう」。

このパブリッシャーの打ち明け話が示すように、テクノロジー中間業者には詐称の悪習が横行していることが知られてきた。サプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)がこれをやる場合、インベントリーを再販売して、自分たちが代理しているパブリッシャーを偽って伝えるという手口だ。この問題を回避するため、パブリッシャー側は、ベンダーが自分たちのインベントリーをどのように利用するのか、契約のなかで明確にする必要があると話す。一方のバイヤー側はというと、パブリッシャーとの直接取引ブラックリストの使用を提案している。

アドネットワークの弊害

長年にわたり、アドネットワークはバイヤーに対し、誤解を招くような表現を使って、自分たちがインベントリーにアクセスできるサイトについて、その実態をごまかしてきた。アドネットワークはアービトラージ(裁定取引)を手がけることにより、商材と関連性のないのパブリッシャーのインベントリーをパッケージしなおして、再販売することができたのだ。PubMatic(パブマティック)のCMOを務めるジェフリー・ハーシュ氏は、「これはSSPの登場前にさかのぼる、業界でしばらく続いている問題だ」と指摘する。

こうしたことから多くのパブリッシャーがアドネットワークから離れていったが、この問題は依然として、SSPなどのほかの統合技術において、ときどき浮上する。複数の情報筋は米DIGIDAYに対し、オープンな市場でCPM向上を目指すパブリッシャーは、「レートが上がる限り、インベントリーが最終的にどこに行き着くのかを気にかけない」のも問題だと指摘する。

パブリッシャーはまた、インベントリーを実際よりも売りすぎるたびに、パッケージしなおして再販売を奨励してきた。たとえば、あるパブリッシャーで受注件数に対してインベントリーが不足した場合、ほかのパブリッシャーからインベントリーを買い付けて、両者のインベントリーをひとつにパッケージングする。この『冒険野郎マクガイバー』(主人公は手近な材料で危機を切り抜ける)をほうふつとさせる寄せ集めインベントリーのアプローチは、パブリッシャーが難局を乗り越える助けになるかもしれないが、取引を行なう相手である当事者にとっては迷惑なことであり、不透明な印象を与えている

技術パートナーの透明性

「インベントリーをつなぎ合わせるSSPたちが、ほとんど価値をもたらさないパッケージのまま余計なアドテク税を上乗せすることで、問題を大きくしている」と、SSPプロバイダーのソノビ(Sonobi)で最高製品責任者を務めるジョン・ドナヒュー氏は語る。

情報筋らが強調するのは、ほかのSSPを介して買い付けたインベントリーを再販売しているだけのベンダーと、保有するインベントリーのインプレッションについてまさしく嘘をついているベンダーとを見分けるのが非常に難しい点だ。この件に関する調査は不足しているが、トラフィックのロングテールにおいて大量の再販売が発生していることは明らかだ。

広告トラッキング企業パスマティクス(Pathmatics)のデータによると、広告インプレッション別トップ50パブリッシャーで平均した場合、彼らが直接取引するパートナー企業(SSP、アドネットワーク、エクスチェンジなど)の数は5社。また、間接取引で取引高の1%以上を占める補助的なパートナーは3社だという。しかし、この1%の取引高というしきい値を取り除くと、間接的に取引しているパートナーの数は一気に40社に急増する。

SSPが主導するアービトラージは「かなり一般化している」と語るのは、エージェンシーのリチャーズ・グループ(The Richards Group)でプログラマティックを率いるデビッド・リー氏だ。「我々は業界内でたびたび、技術パートナー企業に透明性の責任をもたせることを話題にしてきた。(中略)パブリッシャーのパートナー企業とそのSSPパートナー企業にも、同様の責任を負ってもらう必要がある」。

再販売業者に求められる責任

複数のパブリッシャーは、この問題が残っているのを認識している。というのも、自社のインベントリーを買おうとすると、まったくつながりのないアドテク企業が代理しているのを目にするからだ。その一方で、オープンマーケットのバイヤーはパブリッシャーが使っているSSPを知る術がないため、インプレッションが再販売なのか不正なのかを、明確にされていないことを認識している。

こうした問題に対処するため、不正防止の業界団体、トラストワージーアカウンタビリティグループ(Trustworthy Accountability Group:以下、TAG)は、認証済みの再販売業者のリストを作成すべきかどうかを議論している。メンバー165社(その大半が年会費1万ドル[約100万円]を払っている)にこのリストを提供することが、現在検討されているというのだ。もし作成することが決まれば、パブリッシャーに対して、各社が利用しているベンダーに関する自己申告を求め、そこからデータを集約することになるだろうと、TAGのCEOを務めるマイク・ザナイス氏。

というのも、再販売業者は、複数パブリッシャーのインベントリーをパッケージングしてまとめる際、パブリッシャーとそのパブリッシャーと距離を置きたい広告主とを意図せず組み合わせてしまうことがある。たとえば、男性誌『PLAYBOY(プレイボーイ)』と女性向け健康誌『Women’s Health(ウイメンズ・ヘルス)』のインベントリーがひとまとめにされて、あたかも『PLAYBOY』のみのインベントリーであるかのようにバイヤーに提示されたらどうだろうか。勃起障害の薬剤を販売する製薬会社が、中年男性にリーチしようと考え、このインベントリーを買い付けるかもしれない。結果、その広告が女性のライフスタイルのWebサイトに表示されることになれば、『Women’s Health』は仰天することになるだろう。

どのように回避すべきか?

テクノロジー系パブリッシャーの「パーチ(Purch)」で売上および収益最適化担当VPを務めるマイク・ハノン氏は、パブリッシャーがそうした理論的にありえる失敗を防ぐため、合意条項を受け入れて、それを尊重するベンダーに提携先を限定するべきだと話す。同氏はさらに、パブリッシャーは、再販売に懸念がある場合には、インベントリーの再販売を厳禁とする姿勢を表明すべきだと付け加えた。

「もっとも効果が大きいのは、そうした話し合いをもち、実際に何が起きているのかを電話して確かめることだ」と、ハノン氏は語る。「大手SSPなら、インプレッションの出どころを把握できる。(中略)だから、広告が供給される場所について慎重になるべきだ」。

アービトラージは、パブリッシャーとブランドを損ないかねない広告を結びつけることもあれば、バイヤーに価値の低い広告枠を買わせることもある。TAGが検討しているようなリストが一般に公開されていないため、リチャーズ・グループではプライベートマーケットプレイスの取引を設定する際、「もはやSSPに話すことさえなく、パブリッシャーに直接連絡する」と、リー氏は語る。同氏によると、疑わしいURLや偽装したURLは「たくさんの詐欺が仕込まれている」ため、同社はこれを使用しているSSPのセクションのブラックリストを作っているという。また別のバイヤーは、主にプライベートマーケットプレイスを通しているので、このようなプログラマティックのごまかしを回避できていると述べた。

パスマティクスのCEO、ゲイブ・ゴットリーブ氏は、なにも動画インプレッションを過剰に売られたパブリッシャーだけが、こうした体験をしているわけではないと指摘する。同氏は、SSPが存在しないインベントリーを売り込んでいるのに気づいたこともある。一部のSSPが提供しようとするインプレッションは、パブリッシャーが実際に提供している総数より多いというのだ。

「これはよくある破壊的な行為だ」と、ドナヒュー氏は嘆く。「パブリッシャーがこのことに気づいたなら、きっと自衛するだろう。だが、プログラマティックに慣れた若手は気にせず、間接的な確認しか求めない」。

Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)