ビジネスSNSがビジネスSNSではなくなるとき:Wantedly

マイクロソフトによるLinkedInの巨額買収はビジネスSNSと呼ばれる領域が、エンタープライズITと高い親和性があることを示した。LinkedInに蓄積されたビジネスパーソンとその関係、コミュニケーションをめぐる情報は極めて重要な価値をもっている。

2010年創業のビジネスSNS「Wantedly」はビジネスSNSにとどまらないポジションを取ろうとしている。2月に開始した社内ツールの口コミサイト「Wantedly Tools」、6月にはビジネス用グループチャットアプリ「Sync メッセンジャー」をリリースし、周辺領域にも駒を置いている。Wantedly社長の仲暁子氏は「チャットなどを最近はじめ、だんだんWantedlyが仕事だけじゃないと、ちょっとずつ変わってきていると知ってもらっている。まずポジションを取るのが重要だと考えている」と語った。

「仕事領域のなかで、Wantedlyは人とユーザー、ユーザーと企業をマッチングしたところにフォーカスして生まれた。最近はその周辺領域。セルフブランディングで出会う、最後つながるっていうところまで、いろんな周辺領域を作っているので、エンタープライズITには結構近付いていくのかなっていう気がする」。

ビジネスSNSのデータの価値

LinkedInの入札にはセールスフォース(Salesforce)が競合していた。仮にセールスフォースがLinkedInを買収した場合、営業支援、CRM(顧客関係管理)という点で極めて明確なシナジーを想定できた。LinkedInの強みは少し高い年齢層のエグゼクティブの属性・行動データを保持していることだ。

一方、Wantedlyの利用者は若年層だ。仲氏は「コアのバリューが『ビジョンでつながる』ことです。45歳になると、お金とかも大事。家族もいて、ローンもある。ビジョンでつながるっていうのが響くのは、やっぱり20代30代。そこが使いはじめて、定着して、年取っていって上のほうになればいいと思う」と説明する。

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Wantedly社長の仲暁子氏

「SNSってもう古いですよね。たぶん、Facebookを使っているのってもう30代で、20代、10代は使っていない。たぶん、ビジネスチャットの『Slack』の方向になっていく。Slackはアイデンティティーがメアドでしか承認されていない。Wantedlyは、そこでソーシャルネットワークの価値がある。職歴、学歴、ポートフォリオ、ブログとか、投稿とかも全部あって、つながりもあって、チャットができる。そこが大きく違う」。

ビジネスSNSとサブスクリプションのスケーラビリティ

ビジネスSNSの部分に、人と企業のマッチングを合わせている。「Wantedlyはすごいユニークで、どこのマーケットに行っても、たぶん競争相手がいない。その分マーケットもないので、工夫が必要になる」と仲氏は語った。

「疑似的にはHR領域。エージェントは労働集約型だし、高いかもしれない。Wantedlyは、それを労働集約的ではなく、(サブスクリプションで)安くできるので、いろんな人に機会を提供できて、最終的に、ビジョンを持っている会社がいい人材と出会える」

仲氏はまだデータが意味をもつようになるには、もっと利用者の積み増しが必要だと考えている。「1000万人のデータが集まれば意味があるかもしれない。ターゲットの質も結構大事。大卒のホワイトカラーで、仕事にやりがいを感じたい人がターゲットになってくる。いま100万人なので、1000万ぐらいはいないとデータの価値もあまり出ない」。

アジアはインドネシア、シンガポールの2カ国に進出している。「もちろん、オーガニックでグロースしている国もありますけど、フォーカスしているのは、インドネシア、シンガポール」と仲氏は語った。「インドネシアはやり方をちゃんと踏まえれば、Wantedlyも広まるんじゃないかなと思っている。ローカルなチームを採用して、ローカルの人に権限移譲してやるっていうのが、簡単そうで意外とできない」。

Written by 吉田拓史
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