投資急増、プラットフォーム発の動画コンテンツ:今週のデジタルサマリー

プラットフォームのビデオ(動画)コンテンツ投資が目を見張るレベルに達している。ユーザー生成コンテンツ(UGC)から発展してきたネット上のコンテンツ流通だが、近年はプロコンテンツの参入が著しい。

今週はアメリカのキラーコンテンツ、アメフトの争奪戦が報じられた。Recodeの23日(現地時間)の報道によると、来シーズンのNFLの「サーズデイナイトフットボール」のライブストリーム権(10試合)をめぐって、Facebook、Amazon、Twitter、YouTubeが入札した。4社は昨年同じライブ権の争奪戦を演じ、Twitterが1000万ドル(約11億円)程度で落札。2015年は米YahooがこのNFLのライブストリーミングに巨費を投じていた。

Netflixが50億ドル、Amazonが30億ドル

特にコンテンツ投資額の伸びが著しいのが、NetflixやAmazonなどのサブスクリプション型の動画配信サービスだ。Netflixは昨年、オリジナルコンテンツに50億ドル(約5500億円)を投資した。柴田尚樹氏のブログによると、Netflixは手持ちの現金を減らし、合理的なレベルで債務を増やしながらコンテンツ投資をしている。

Amazonも2016年にコンテンツに32億ドル(約3500億円)を投資すると16年末の段階で推測されていた。同時期にスポーツコンテンツをプライムに組み込もうとコンテンツホルダーと交渉しているとWSJに報じられている。

世界最大級の予算をもつESPNの2017年のコンテンツ投資額が73億ドル(約8000億円)と推定されており、NetflixやAmazonの予算はテレビ事業者レベルに匹敵しており、今後のグローバル展開によってはESPNを超えるのも時間の問題だろう。

映画参入のアリババ、テンセント

米国だけではない。中国の2強は映画事業もまるまる飲み込む「コンテンツ投資」をはじめている。テンセントは映画スタジオ「テンセントピクチャーズ」を設立。ディズニーのようなコンテンツ制作と流通を含めた事業形態を狙っているようだ。Bloombergによると、テンセントは日本アニメ300作品の権利を取得。ゲーム、電子書籍、動画、ソーシャルなどを組み合わせたエンタメの完全パッケージをつくろうとしている。テンセントピクチャーズCEOのエドワードチェンはハリウッドとの協業に意欲を示している。

アリババも「アリババピクチャーズ」を設立し、スティーブン・スピルバーグ氏のスタジオに出資。両社のコンテンツ予算はまだ小さいようだが、資金力はFacebook、Amazonに匹敵するレベルであり、急激に成長する中国の映画産業に2強が食い込む可能性がある。

近年、ハリウッド映画にとって中国市場は極めて重要になっており、中国での配給を勝ち取るために中国人の登場人物を増やしたり、中国ロケを組み入れるようになっている。スクリーン数は中国が世界一であり、中国の映画館収益は今年、米国を追い抜き世界一になる見込みだ。

YouTube広告停止と出稿額の関係

広告型のサービス提供者の存在感もせり上がっている。

今週はYouTubeの英国での過激主義者関連動画への広告挿入に端を発した、YouTubeへの広告掲載停止が米大企業にも広がった。この広告主/代理店とYouTubeのもみ合いは、裏を返すと大型キャンペーンのなかでYouTube広告の存在感が増していることを意味している。

ビジネスインサイダーが引用した金融大手UBSによると、YouTubeの広告収益は年々拡大を続け、2015年段階で80億ドル(約8800億円)と前年度比33%の伸び。Google親会社のAlphabetの2016年通期決算では、検索広告と並ぶ収益牽引要因に数えられている。

もみ合いはYouTubeへの広告出稿が拡大していることを意味しており、その主要取引先に対しブランドサイドの要求が厳しくなってきたようだ。

Facebookは近年、強烈な速度で動画化してきたが、今年はついにコネクテッドテレビ用アプリとコンテンツ制作部隊をもった。DIGIDAY USのサヒル・パテル記者の記事はFacebookのオリジナルコンテンツ制作に関してこう伝えた。

Facebookはデジタル予算のなかでは最高レベル、TV予算的には最低レベルに相当するプロジェクトを探していると情報筋は見ている。これはつまり、Facebookがベライゾンの「ゴー90(Go90)」や「YouTube」の有料サービスである「YouTube Red」と同じ土俵で戦うということになる。

プラットフォームはテレビや映画などをデジタル上で再現しようとしており、投資先行の激しい競争が繰り広げられている。

以下、今週のその他のトピック。

▼テンセントが好決算

テンセントの2016年通期決算が22日、発表された。収益は前年比48%増の1519億3800万元(約2兆4600億円)、純利益は前年比42%増の410億9500万元(約6640億円)と好決算。柱のゲームだけでなくWeChatの決済、広告が収益に貢献した。Facebookと遜色ないレベル。

▼YouTube広告取り下げ

英タイムズ紙が白人至上主義団体KKKなどの過激主義者のYouTube動画に大手企業の広告が配信されていると先週、報じた。広告代理店ハバスの英支社はYouTubeへの出稿を取り下げ、ヨーロッパの広告主でも広告取り下げの動きが出た。米国でもAT&Tやジョンソン&ジョンソンが取り下げへ。

▼Mediumがサブスクリプションモデルを開始

Mediumは22日、月に5ドル(約560円)を課金する会員制度を発表した。エヴァン・ウィリアムズCEOは偽ニュース騒動の際に広告モデルは「壊れている」と発言していた。

▼インスタ、広告主100万人超え

インスタグラムは広告主数が100万人を超えたと発表した。6カ月間で倍増した。

▼Twitter、有料のプレミアム版検討

Twitterは23日、企業のマーケティング担当者やジャーナリストなどを対象とした有料のプレミアムサービス導入を検討していると明らかにした。一部利用者向けの有料サービスは同社にとってはじめてとなる。ロイターが報じた。

▼アドビがアドテクに本格参入

Adobeが21日(米国時間)、米ラスベガスで開催した同社イベントで広告管理運用プラットフォーム「Advertisng Cloud」を発表。テレビ軸で動画などのデジタル広告を買う大手広告主を想定顧客にしている。昨年買収したチューブモーグル(TubeMogul)の機能と既存機能を統合。アドテク領域に大きく踏み出した。

▼Facebookがヘッダー入札に参画

Facebookは22日ヘッダー入札に参画すると発表した。Amazon Publisher Services、Sonobi、AppNexusなどがテック企業のパートナー。ジェフ・ベゾス氏のワシントンポストなどが媒体パートナー。ヘッダー入札はGoogleの優位性をかわすことを主眼に置いたソリューションで、そこにFacebook、Amazonなどがテコを入れている形。詳細は来週以降の記事で触れる。

デジタル広告市場をめぐっては、昨年まではGoogle、Facebookのデュオポリー(2社独占)が注目されたが、Adobeの参入やFacebookのアドサーバー事業の撤退からのヘッダー入札に参画、静かに地歩を進めるAmazonと新しいファクターが加わり、興味深い展開を迎えている。

Written by 吉田拓史
Photo by GettyImage