アドテク企業に冷たくなった、ベンチャー投資家たち:投資額と契約件数が「激減」した2015年

昨今、アドテクノロジー企業がベンチャー投資家のもとを訪ねても、快く迎え入れられることは少ないという。

モバイルアプリへの投資が最盛期だった頃、投資家たちはこぞって手を差し伸べたものの、その勢いが渋ってくると掌を返したようにアドテク起業家たちへの支援に消極的になった。そしていま、業界で飽和状態となっているアドテク業者の数と、アドブロッキングの脅威、加えて、そのパフォーマンスの停滞が、投資家たちの興味を急速に失いつつあるようだ。

米国のベンチャーキャピタル企業は、アドテク企業に対して、投資額だけでなく契約件数も減らしている。投資情報を提供する企業ピッチブック(Pitchbook)のデータによると、アドテク企業に対して2015年に行われた投資は、これまでのところ127件の契約で9億7600万ドル(約1198億円)にとどまっているという。これは、251件の契約で15億ドル(約1841億円)が投資された、2014年を大きく下回っている。

下火になったアドテク投資

投資においては、最終損益が重視される。アドテクに対する楽観的な見方が下火になった発端のひとつは、2013年に第一陣として株式を公開したアドテク企業の株価パフォーマンスだ。ロケット・フューエル(Rocket Fuel)やユーミー(YuMe)、チューブモーグル(TubeMogul)における2015年の株価は、2014年と比べて70%も下がっている。

2015年9月には、ベライゾン・コミュニケーションズの子会社AOLが、モバイル広告ネットワークのミレニアル・メディア(Millennial Media)を2億5000万ドル(約306億円)で買収したが、2012年の新規株式公開(IPO)時の時価総額18億7000万ドル(約2295億円)にはほど遠い金額だ。ただし、すべてのアドテク企業が低迷しているわけではない。ルビコン・プロジェクト(Rubicon Project)やクリテオ(Criteo)は、2014年と比べて上向いている。

すでに勝ち組は決まっている

イールドボット(Yieldbot)やザ・トレード・デスク(The Trade Desk)、メタマーケッツ(Metamarkets)などのアドテク企業に投資してきた投資会社、ニュー・ベンチャー・キャピタル(Neu Venture Capital)のジェリー・ニューマン氏はこう述べる。「多くの新興企業がここしばらく資金提供を受けていないが、これは、すでに勝ち組が決まったからだ。勝ち組でない者たちがその事実に気づいているかどうかはともかくとして。そうした状況が変わることはないだろう」。

pitchbook-ad-tech米国におけるベンチャーキャピタルの対アドテク企業投資契約の推移
棒グラフ 投資額(単位:100万ドル) / 折れ線グラフ 契約件数

アドテク企業は全体的に売り込みが困難になっているが、特定の分野の企業はさらに売り込みに苦労している。それが、広告サーバー技術企業やモバイル広告ネットワーク、サードパーティデータ用のデータ管理プラットフォーム(DMP)、リターゲティングネットワーク、さまざまなデバイスにまたがるユーザーの追跡を手がける企業などだ。

アドテクを毛嫌いする投資家

これらの企業に対して「極めて面白味のない投資対象」だと語るのは、エージェンシーであるMDCパートナーズ(MDC Partners)の投資部門kbs+ベンチャーズ(kbs+ Ventures)でマネージングパートナーを務めるジョシュ・エングロフ氏だ。「『アドテク』という言葉は禁句になっている。Googleが登場して破滅させられる前の検索エンジン企業にたとえられる」。

ニュー・ベンチャー・キャピタルのニューマン氏は、「ベンチャー投資家は常にアドテクを毛嫌いしてきた」と指摘し、アドテクに対する関心の低下は意外なことではないと述べている。ベンチャーキャピタルによる投資契約は、2014年に比べれば減少したが、2015年の投資額は、この分野への投資額が9億7300万ドル(約1194億円)だった2010年と同程度だ。

これは、多くのアドテク企業のビジネスモデルが、利益率の低いマネージドサービス企業(運用管理のアウトソーシングサービス事業社)と大いに似てきたことに起因する。また、成長や利益率、投資資金回収の見込みを重視するベンチャーキャピタル企業は、エージェンシー事業モデルをひどく嫌っているという。

巨大テック企業という大きな壁

将来有望視されるべき多くのアドテク企業にとって、もうひとつの大きな壁は、既存の巨大テック企業のキャパを乗り越えられる企業がほとんどいないことだ。GoogleやFacebook、Twitter、いまではベライゾンも、その仲間に入れられるだろう。

巨大テック企業はユーザーが利用しやすいエンドトゥーエンド・プラットフォームを構築して、業界への新規参入を阻む。そして、蓄積した膨大なファーストパーティーデータを利用して、さまざまなデバイスのユーザーを容易にターゲティングできるのだ。

さらにこれらの企業は、モバイルにおけるマネタイゼーションの面でも支配的立場にある。マーケティング調査会社eマーケター(eMarketer)は、GoogleとFacebookは、2017年までに、米国におけるモバイル広告支出の40%近くをシェアすると予測した。

先述のkbs+ベンチャーズのエングロフ氏は次のように述べる。「モバイルの世界にはcookieが存在せず、すべてがユーザーIDを中心にまとまっているので、これらの企業が勝ち組になるだろう。そうした状況は、サードパーティではなくファーストパーティのアドテク企業に有利に働く。リターゲティング技術を手がけるタパッド(Tapad)のような企業がもう1社現れたとしても、私なら近づかないだろう」。

Ricardo Bilton (原文 / 訳:ガリレオ)
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