「Twitterの価値はライブであり、アルゴリズムではない」:グローバルブランド責任者 メリッサ・バーンズ氏

グローバル消費財メーカーは成長著しい新興国への進出を続けている。新興国のモバイルファーストな人々に訴求する方法として、Twitterは重要なプラットフォームのひとつだ。

Twitterはもっとも広告費が割かれるテレビと連携するソーシャルメディアのポジションに狙いを定めている。この戦略の最前線は今後、成長著しいアジア市場になりそうだ。

Twitterグローバルブランド責任者のメリッサ・バーンズ氏は、DIGIDAY[日本版]の取材に応じ「テレビのセカンドスクリーンとして、消費者の瞬間(モーメント)を楽しいものに変える」と話した。以下、そのやり取りの中身を一問一答形式でお届けする。

テレビCMと同時にデジタル広告を打つブランドは、Twitterに対し、どんな役割を期待していますか?

Twitterはライブでオープンという性質を持っています。グローバルブランドが行うテレビを含めたキャンペーンの全体の流れを補完する役割として利用されています。先月、日本で新しい動画広告「ファーストビュー」を開始しましたが、その日最初にTwitterにログインした時、タイムラインのトップに表示されるので、ブランドに対し素晴らしいリーチを提供できます。すでに17カ国のマーケットで60のブランドに使ってもらっており、今後も使っていきたいと前向きな反応をもらっています。

日本における最初の「ファーストビュー」事例は、コカ・コーラの「ファンタ」ですが、このキャンペーンでは視聴完了率50%を超えました。

ファンタ_FirstView

動画広告の展開例に関しては、ナイキの例が参考になります。長いバージョン、15秒、Vineなどのさまざまな事例がある。「リツイート」「いいね」が出て、リーチを拡大していきます。

 

TwitterにはライブストリーミングアプリPeriscope(ペリスコープ:2015年にTwitterが買収)もあります。テレビスポットがTwitterと連動するのは、ブランドについて想起させたり、製品について想起させたりすることに繋がるからです。テレビとTwitterを同時に展開すると、ブランドメッセージの想起率が46%伸びるという事例も出ています。

テレビと同じクリエイティブでいいのでしょうか?

ブランドはテレビCMの素材をすでに制作しており、それをTwitter用に加工しています。ただ、デジタルやデバイスの特性を踏まえ、CMとは異なるものをTwitter用に制作することも検討しています。

広告主はテレビとTwitterで別々の指標を、均(なら)してほしいと考えているようです。

これは大きな課題です。テレビとTwitterのあいだの課題だけではなく、Google、Facebookというほかのプラットフォームともどう調整するか、という課題も含んでいます。この点、広告主とは密に連携して、どうすれば均(なら)した形で評価できるか話し合っています。いまは道半ばですが、あるべき形にもっていけると思います。同時に広告主とは、キャンペーンの最終的な目標は、広告主の収益を最大化することと、ブランドの認知を拡大することだと話し合っています。

Twitterはテレビに対し、どのような役割と認識していますか?

テレビは力強いメディアで、人の態度を変容させる力があります。ただし、消費者側の行動も変わっており、セカンドスクリーンを利用する(ながら視聴する)傾向も見えます。

我々は次の実験をしました。バスケットボールの試合を視聴している人を、スマホでTwitterをするグループと、スマホをもたないTwitterなしグループに分けて、脳波などを計測したのです。その結果、Twitterありグループの集中力は、Twitterなしを上回りました(下図)。

EmotionalIntensitySurveyTwitterあり(=オレンジ色の曲線)方が人は集中力を発揮するのだろうか(Twitter提供)

米アメフトリーグNFLとはライブストリーミング配信の契約を交わし、木曜日夜のゲームはTwitterが独占的に配信しています。ほかのプラットフォームもNFLに提案したなかでTwitterが選ばれたのは、ライブエクスペリエンスを提供する最高のプラットフォームとして評価してもらったためです。グラミー賞の舞台裏をPeriscopeで同時中継することで、テレビで表舞台を観ながら、舞台裏をPeriscopeで観られます。テレビ視聴の集中力が増し、コンテンツをめぐるカンバセーション(会話)が活発になるでしょう。

スマートなマーケターは消費者行動のあり方を踏まえ、その瞬間(モーメント)を一番楽しい物に変えるにはどうすればいいかを考え、テレビと平行してTwitterを使えば効果を増幅できるという結論をもっています。広告主は通年のマーケティングスケジュールを常に考えており、最近は動画広告への予算を増やしています。ディスプレイ広告のパフォーマンスが落ちていることも、動画広告への予算配分が増える一因になるでしょう。

サムスン「S7」では、キャンペーンに関する絵文字もつくりました(編集部注:米国では若年層に絵文字が人気で、絵文字マーケティングが一般的)。サムスンとはカンバセーショナル広告(Conversational Ad)でのプロモーションや、独自の絵文字開発などをグローバルに進めています。

ライブ動画には競合がたくさん存在していますね。

我々の核心的な価値は「ライブ」であり、「アルゴリズム」のプラットフォームではありません。人々は重大なことが起きたときにはTwitterを選んでいます。

PeriscopeもTwitterの「ライブ性」にぴったりです。たとえば、パリでテロがあったときには、Periscopeで何が起きているかを伝える人がおり、それで状況を知ることができました。我々は最近、Periscopeの広告商品の開発に乗り出しました。(小型ビデオカメラメーカーの)GoProとも提携しましたので、GoProのカメラで撮影した動画をPeriscopeに載せることができます。

我々は低画質の動画が、ビデオプラットフォームでは良いパフォーマンスを出すことを知りました。だから、低画質の動画を専門に制作するクリエイター集団を買収したのです。彼らはスマホでコンテンツを製作しています。ブランドは今後、ハイエンドなコンテンツと低画質だがパフォーマンスの高いコンテンツの組み合わせを模索することになるでしょう。

米国で人気の高いアメフトのようなコンテンツとの提携が、日本でもできそうですか?

グローバルでのパートナーシップは模索していきます。世界でオーディエンスを増やしていきたいです。

どうやって、Twitter広告の効果を証明していますか?

サムソンのスマートフォン「S7」のケースではTwitterのキャンペーンをしっかり練ってもらいました。その結果、収益を伸ばすことに貢献できました。もちろん、Twitterが担った役割はその一部ですが、あらゆる兆候から、Twitterが需要の創出に貢献できたと考えています。

とあるブランドのキャンペーンでは、人々がTwitter上で「言葉をシェアすること」と収益には直接相関があることが分かりました。そのブランドはTwitterに絞ったキャンペーンをしており、「シェア」がセールスに反映されたことを掴むのが容易だったのです。

大半のマーケターがクロスチャネルでキャンペーンを展開しているため、個々の広告がどれだけ貢献したかを確かめることはとても難しいのです。しかし、さまざまなシグナルをみることで、Twitterが貢献したと示すことができます。我々はリサーチ部門に多大な投資をしているからです。

スーパーマーケットなどリアル店舗での購買への貢献をどう示しますか?

データロジックス(ポイントカードなどから2兆ドル[約240兆円]に及ぶ消費者の購買データを収集していると言われるオラクル傘下のデータ企業)や、そのほかのマーケティングの効果をめぐるデータ・サービスと提携しています。プライバシーの安全を確保した上で、クレジットカードのデータとメールアドレスなどをマッチさせ、消費者のトランザクション(取引)を追跡しています。それからTwitterで調査をかけられます。Twitterの広告を見た後に、商品を買おうという兆候を見せたりしたか、ブランドを認知したりしたかがわかるのです。

広告主はさまざまなデバイスをまたいだ、確度の高い測定を必要としていますが、Twitterはそれを提供できますか?

測定のレベル、種類によりますが、さまざまな測定を提供しています。Twitterを利用して調査をかけることもできますし、今後も技術が進歩していきますので、測定を生み出すための投資は続けていきます。

グローバル消費財メーカーは国境をまたぐリーチを求めていますね。

それは消費財メーカーとのグローバルパートナーシップの核心的な部分です。彼らがグローバルに規模を拡大し、操業し、他社に対して明確な優位性をもてるように支援していきます。ネスレのネスカフェでは複数の国で別のキャンペーンを展開した後に、そのなかから効果的なキャンペーンをモデル化し、他国に広げる試みをしました。広告主との関係性はすでに成熟しており、「それができるのか」の段階は終わり、いまは「どう最適化していくか」「どうインパクトを広げるか」という議論をしています。

digiday2016_1082_finナイキのキャンペーンを説明するバーンズ氏。東京都中央区のTwitterジャパン

サムソンとは4年に渡って提携し、70の市場でキャンペーンを展開した実績があります。過去の製品ローンチのキャンペーンから改良を続けています。我々は市場の特徴を理解するようになっています。

アジア市場をどう捉えていますか?

我々はアジア全体に注目しています。日本は有望なマーケットであり、巨人です。Twitterにとって3500万のユーザーがあり、日本のユーザーのふるまいは洗練されています。

同時にインドネシア、フィリピンでも興味深いことが起きています。日本の前にソウルを訪れましたし、この後はシンガポールです。これらのマーケットにはさまざまなポテンシャルがあります。新興国では可処分所得をもった消費者が増えているため、消費財メーカーが深い関心をもっています。インスピレーションの源になっており、トレンダーセッターとして面もあります。我々がマーケットに教えるだけではなく、マーケットから教わる点があります。

多くのグローバルブランドがインドネシアで事業を行っています。インドネシアはTwitterユーザーのスケールがあり、ユーザーの行動が特徴的です。

もちろん、急速な成長を遂げているインドもまた極めて重要です。マーケターはインドに強い関心を抱いています。先週にはインドのマーケター向けのイベントを開催しましたし、昨年、我々はジップダイヤル(ZipDial)というマーケティングプラットフォームを買収しました。インドのビッグブランドのTwitterプロモ事例もありますが、まだ公にはできません。しかし、我々はイノベーションがインドから現れると確信しています。

▼メリッサ・バーンズdigiday2016_1077_fin

ヘッドオブグローバルブランド。グローバル企業の経営者やマーケティングチームとの協働を通して、Twitterのビジネスインパクトを啓蒙。Twitter入社以前は、フライシュマン・ヒラードにおいてシニアバイスプレジデントとして消費財、自動車、アパレルなどの企業向けにデジタルソリューションやサービスの提供を統括。

Written by 吉田拓史
Photo by 渡部幸和