マーケティングの「データ活用」は新たなステージに:「TREASURE Network Showcase vol.2」レポート

データを活用したマーケティングのデジタル化の鍵を握るのは、「データ統合」だ。データから顧客を理解し、あらゆる顧客接点で顧客体験を最適化するには、広告からCRMに至るシステムのサイロ化をなくし、データ連携、統合を実現していく必要がある。

去る9月1日、六本木のハリウッドホールで、さまざまなテクニカルベンダーが集い、データを利用した最新ソリューションを披露し合う「トレジャーネットワークショーケース vol.2(TREASURE Network Showcase vol.2)」が開催された。主催は、「プライベートDMP」から考えと機能を大きく進めた「CDP」(Customer Data Platform:カスタマー・データ・プラットフォーム)を標榜するトレジャーデータ(Treasure Data)だ。

本イベントのセッションから、データ統合に関する最新テクノロジーや、パートナーソリューション連携事例といったデジタルマーケティングの「いま」と「これから」を振り返る。

「CDP」という新たな流れ

オープニングトークに登壇したトレジャーデータの堀内健后氏は、「デジタルトランスフォーメーションを実現するためのデータ活用プラットフォームは、DMPからCDPへと進化している」と述べた。

同社は日本でビジネスを開始して4年目。これまでプライベートDMPを提供してきたが、日本で約200社のマーケターの声から「マーケターには5つの課題があることがわかった」と堀内氏は話す。その5つとは、「顧客をもっと深く理解したい」「適切にセグメント分けしたい」「適切にコミュニケーションしたい」「施策のROIを計測したい」「PDCAをクイックに回したい」といったものだ。

これらの課題解決を支援するには、「データ統合」が鍵を握ると、堀内氏は語る。サードパーティデータを扱うパブリックDMPや、自社データを蓄積、管理するプライベートDMP、各種チャネルを通じて収集したメールアドレスや自社サイトに登録した顧客IDなど、さまざまなデータソースを統合し、解析、活用していくプラットフォームが求められているという。

「データ統合が鍵を握る」と語るトレジャーデータの堀内 健后氏

「データ統合が鍵を握る」と語るトレジャーデータの堀内健后氏

 

アメリカではこうした顧客データ統合プラットフォームとして「CDP」というサービスカテゴリーが生まれていると、堀内氏は続ける。この「CDP」を日本でサービス化したものが、昨年からトレジャーデータが提供する「TREASURE CDP(トレジャーCDP)」だ。

その特長は、多様なログデータを、データソースの生データのままセキュアに取得、期間の制限なく大量に保管できる点。さらにコンプライアンス面では、EU一般データ保護規則(GDPR)にも準拠している。マーケターが「ノンプログラミング」で使えるUIも用意。セグメントを切るための分析画面や、BIツール等の機能拡張により、マーケターが容易にデータ活用することを支援する。

さらに、データ取得、分析、可視化、施策実行などの外部サービスと連携することでパートナーエコシステムを確立。「Webもモバイルも、データ連携によりサイロ化をなくし、施策の最適化に貢献していきたい」と、堀内氏は述べる。

会場では、20社のパートナーがブースを展開。あわせて1社15分程度のセッションでパートナーのサービス紹介、トレジャーデータとの連携メリットなどが紹介された。以下、各パートナーのセッションから印象的なサービスをピックアップする。

動画マーケのROI最適化

動画を顧客のエンゲージメント強化に活用したいというニーズは強い。動画配信プラットフォームを手がけるブライトコーブ(Brightcove)の大野耕平氏は、「ブライトコーブの『ビデオクラウド(Video Cloud)』と『TREASURE CDP』を連携することで、動画マーケティングの視聴情報のトラックが可能となる」と述べる。

「再生数という指標だけで動画マーケティングの成否を評価していないか」と、大野氏は会場に問う。動画には時間軸(タイムライン)があり、「たとえ再生回数が高くても、最初の5秒で離脱が激しいと、施策が成功したとはいえない」。

TREASURE CDPと連携することで、誰が、どの動画を、どの程度視聴したかというデータが取得可能になり、分析結果は、その後のアクション改善に生かされる。「データを活用してカスタマーエンゲージメントを向上させることで、動画マーケティングのROIを飛躍的に向上させることが可能になる」と、大野氏は期待を寄せた。

在庫の質を高める効果も

DMPから得られたデータは、セグメント設定や、広告配信の最適化にも生かされる。アドテク企業として、グローバルに20拠点を構えるザ・トレード・デスク・ジャパン(The Trade Desk Japan)の新谷哲也氏は、DSPに関する広告主の課題として「インベントリー(広告在庫)の量はコモディティ化し、質が問われている」と指摘する。

しかし、広告配信ネットワークは寡占状態で、なかなかアッパーファネルの施策は打てない。アッパーファネルの施策には、「ブランドセーフティ、ビューアブルな在庫をどれだけ提供できるか」が鍵を握るという。トレジャーデータとの協業は、ファーストパーティだけでなく、セカンドパーティ、サードパーティデータをどれだけ活用できるか、多様なデバイスとフォーマットにどれだけ対応できるかという点で大きな意義があると、新谷氏は語る。

「インプレッション、クリック、コンバージョン、ビデオイベントの4つのデータをTREASURE CDPに渡し、データをもとに作り直したセグメントから、DSPの広告配信を最適化していく」と、新谷氏。これにより、たとえば、商品購入の検討層や自社サイトの会員、Web来訪者など、ユーザーの「温度」に応じた広告が配信できるといった効果が期待されるという。

新たな指標、価値づくりにも

コンテンツマーケティングにおけるデータ連携、活用も重要なテーマだ。海外150サイト、約15億PVの実績を有するレコメンドウィジェット、ポップイン(popIn)の高橋徹氏は「TREASURE CDPとの連携により、新たなコンテンツの分析指標が提供できる」と述べる。

同社には、オウンドメディアに使われる指標として、コンテンツの読了率に関する「リード(READ)」と呼ばれる指標がある。TREASURE CDPとの連携により、「スマホ普及、分散型メディアの時代に、ユーザーのコンテンツ接触時間のうち、何のコンテンツに、どれくらいの時間、接触したかがより明らかになる」と、高橋氏は説明した。

この「タイムシェア(読了時間の割合)」に注目し、リードを発展させたのが「メディアDNA(MediaDNA)」と呼ばれる指標だ。高橋氏は、「自社サイトのユーザーが、外部サイトでは何のコンテンツに関心が高いかがわかり、コンテンツ作りの指標となる」と説明する。

その一方、「ディスカバリー(Discovery)」と呼ばれる独自のレコメンドエンジンで、「フルファネル・コンテンツマーケティング(Full Funnel Content Marketing)」を標榜するアウトブレインジャパン(Outbrain Jpan)の伊藤祐氏は、コンテンツと「出会う」楽しさをデジタル上で実現するために、特に「セレンディピティ(予想外の価値の発見)」を重要視していると述べる。

そこで、トレジャーデータとの協業により、「TREASURE CDP上のセグメントを活用することで、ユーザーに思わぬ発見、ワクワク感を提供していくことができると期待する」と、抱負を述べた。

データソースの集約、整理に期待

各種データを統合、分析し、マーケティングの意思決定に活用したいという企業が増えている。2010年に米国ユタ州で設立されたドーモ(Domo)は、そうした企業に対してクラウドのBIツールを提供している。同社の奥野和弘氏は、BIツールの課題として「分析結果がアクションにつながらない」点を挙げた。

その解決のためには、「データだけを見るのではでなく、人と人の知見を結びつける」ことが大事だと、奥野氏。ドーモでは、データ分析のなかで、さまざまなユーザーとのコラボレーション、ベストプラクティスなどのナレッジを蓄積、データに基づく改善のPDCAを回していく。その点で、トレジャーデータとの協業は、「膨大なデータソースを統合する点にこそ価値がある」という。

また、マーケティングBIツール「デートラマ(Datorama)」を提供するデートラマジャパン(Datorama Japan)の小松昇平氏は、データは爆発的に増加する一方で、「それを集約・整理するには膨大な労力がかかっている」と指摘する。

デートラマは、データの集約、整理、可視化にかかるマーケターの作業時間を「8割削減し、戦略意思決定やクリエイティブに時間を使えるように」支援するツールだ。実際に、ネスレや日本ケンタッキー・フライド・チキンなどでもデジタル施策のPDCA、スピード化に実績がある。小松氏は「トレジャーデータとの協業により、データ収集、統合が容易になる」と、期待を寄せた。

会場にはパートナー各社のブースが併設され、活発な情報交換がなされた

会場にはパートナー各社のブースが併設され、活発な情報交換がなされた

 

10時から19時過ぎまで、9時間超で展開された本イベント。登壇スペースに隣接するブースでは、ユーザーとパートナー企業の情報交換が活発に行われた。今回のイベントのテーマとなった「データ統合」は、データ活用によるデジタルトランスフォーメーションが、マーケティングだけでなく、ビジネス全体に波及していることを実感させるものだった。

Text and Photo by 阿部欽一