モバイルで「決め打ち」の自動車購買層とどうコミュニケーションするか:トヨタマーケ ✕ Facebook対談

スマートフォンにより消費者行動が変化している。あるいは、そのセンサーとしての役割から、人々の行動や属性の多様さも明らかになっている。耐久消費財として高価格帯に位置する自動車もこのトレンドの例にもれない。

トヨタマーケティングジャパン 第2プロモーショングループの松崎圭佑氏(写真右)とフェイスブック ジャパン 執行役員 本部長中村 穣氏に、トヨタ自動車が「ルーミー / タンク」のFacebookによる動画のマーケティングキャンペーンについて、話してもらった。トヨタは消費者がモバイルで情報収集を終え「決め打ち」でディーラーを訪れる時代に、どうモバイルでの顧客接点をつくったのかを、利用者のモバイルファースト傾向が著しいFacebookとの対談で追いかける。

「ルーミー / タンク」は20〜30代で子供のいる若い夫婦をターゲットにしたミニバン。運転を楽しむというよりも、自動車の機能性や価格を重視する傾向がある若い購買層を想定し、価格帯と機能性のバランスが追求された車種だ。

松崎氏は「我々の独自調査では、自動車を買うときに大体80〜90%の人がウェブサイトを見てから店頭に来るという大きな流れがある。特に僕が担当していた『ルーミー / タンク』では、9割のなかでも6割の人がスマホを見てから店頭に来る。僕らのマーケティングを考えるうえでも、ここ2~3年、スマホはかなり重要な位置付けになっている」と語った。

モバイルで比較検討を済ませる

「数十年前はディーラー数店舗回ってから買う流れだったが、いまはスマホで調べつくして、店頭には『決め打ち』で来る。昔は4〜6店舗行ったのが、ほとんど1〜2店舗ぐらいしか行かない。デジタル上で見た上で決めて店頭に来る」。

「車種によって大分異なるが、『コンパクトカー』という低価格帯の車種だと、自動車にそもそも興味がない人が多い。自動車へのこだわりが少ないので、いま人気の車に乗ろうというの考えの人が多い。たとえば価格比較サイトで人気の順番調べたり、情報サイトで人気の車を調べたりする。たとえばトヨタの『アクア』であれば『人気が高いからアクアにしようか』となり、調べて見積もりなどをして店舗に来る流れがコンパクトカーではより強い」。

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トヨタマーケティングジャパン 第2プロモーショングループ 松崎圭佑氏

中村氏は「『モバイルムーブスオート』というイベントを昨年11月にやったとき、同時にカンタージャパンで調査をかけた。調査によってひとつ分かったことは、車を検討する方で、事前にモバイルを使って調べると回答した人が過半数を超えていた。さまざまなタイプの方々がモバイルで調べ、モバイルファーストで生きている。PCよりモバイルを使う時間が長い。そういう人が60%超もいる。購買を検討する過程のなか、相当モバイルを使って調べていることが分かってきている」と語った。

中村氏は「トヨタさんを中心に自動車メーカーの皆さんはテレビを使って多くのお客さんにリーチをして、潜在顧客を発掘するアクションを中心に行っている。『ルーミー / タンク 』で若年層をターゲットにしているため、テレビ離れをしている人たちに対して、Facebookとしてはテレビを補完するような形でサポートができる」と語った。

「もう1点は時間帯だ。特に20歳以上ですでに就業しているような場合、当然、昼帯はなかなかテレビを見ることができないだろう。朝と夜以降に偏重してくる。当然、そこがボリュームゾーンになってくると思う。若年層はご存じのようにモバイルをずっと持っている。だから我々はテレビで取れない時間帯をとれる。若年層でなかなかテレビを見ない人にリーチしたり、時間帯別でテレビを見ることができない時間でリーチしたりできる。テレビを補完するようなことで、認知向上に貢献できると考えている」。

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フェイスブック ジャパン 執行役員 本部長中村 穣氏

若年層向けコンパクトカーに必要なキャンペーンとは

コンパクトカーは普通のセダンやワンボックスカーとまったく違うアプローチが必要になるのではないか。松崎氏は「セダンとかSUVというカテゴリーがあるが、ああいう車種はクルマ好きな人が多く、ある程度消費者は自分たちで調べてくれるが、コンパクトカーは足代わりに使う人が多い。『安くて、丈夫であれば、正直、何でもいい』という人も多い。人気な車を調べて人気なものを買おうとする傾向は強い」と語った。

「コンパクトカーで意識しているのは『ファクトを端的に伝える』こと。テレビでもデジタルでもそうだが、もうブランドより『小さいが室内が広い』を訴える。『1LD-CAR』というキャッチコピー使っているが、分かりやすいコピーで伝えることを意識している」。

直線的なカスタマージャーニー

カスタマージャーニーはかなり直線的なようだ。「ディーラーに来たあとは、人それぞれ重視するものが違うと思うので、それに合わせて店頭のスタッフは言い分けているが、価格を気にしている人が圧倒的に多い」と松崎氏は語った。

デジタル広告では細かくセグメントを切れる。松崎氏は「『ルーミー / タンク』でいうと『20~30代の子育てファミリー』というのがメインターゲットで子どもが小学生の低学年とか、幼稚園とか、そういう人たちがいま買ってくれている。発売する前に、事前調査で競合する車がどういう人たちに売れているかを分析した。一口で『子育てファミリー』といっても、ほかのカテゴリーよりもかなり趣味嗜好が分かれている。釣り好きの人もいれば、サーフィンに使う人もいる」と説明する。

松崎氏は「一人一人に当てられるところを心がけて、今回、マーケティング戦略を作ったというのが大きい。50、100のカスタマーセグメントだった。結局40種類ぐらいの5秒間の動画を作った。それをサーフィンが趣味な人にはサーフィンの動画が当たるように広告配信をした」と語った。うまくいくカテゴリーとうまくいかないカテゴリーを分け、効率が低いのはどんどん外したという。

中村氏は「若年層は比較的クルマ離れしていて『自分ごと化』がキーワード。Facebookは細かくセグメントがこう切れる。ターゲティング、精度が高いので自分ごと化を誘発しやすい」と語った。「Facebookのなかでもトヨタの米国法人では、レクサスは1000種類のクリエイティブを作って、実際にFacebook内で、趣味趣向に合わせた人たちに別々のクリエイティブを当てている」と指摘する。

モバイルファーストの若年層に届くクリエイティブ

テレビとは別にスマホの画面を想定したクリエイティブをつくると、広告のパフォーマンスが上がりやすいというのがFacebookの持論だ。

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テレビとモバイルのクリエイティブ要件の違いを話し合う松崎氏と中村氏

中村氏は「今回『ルーミー / タンク』でテレビCMとはまったく異なる、モバイル仕様の動画を制作してもらっている。モバイルファーストビデオの効力は、広告認知では(通常のCM転用型の)3.5倍で、車種認知では3.7倍、だから、4倍弱ぐらいまでいっている。動画の再生率でも2倍ぐらい。相当大きなインパクトは出せた」と話している。

松崎氏は「ターゲットがクルマにあまり興味がなく広告をどんどん飛ばしてしまうため、端的にファクトを伝える方法が必要だ。しかも、エンタメ性がないと駄目。スタジオを10日ぐらい貸し切って、短く、面白いものをいっぱい作ることをやった」と語った。「若い人たちに買ってもらわないとマーケットはどんどん縮まってしまう。常に若者に買ってもらう取り組みは、どの車でも少なからずやっている。『ルーミー / タンク』の販売は絶好調で、納期がすごいことになっている。むしろスローダウンしようという状況だ」。

中村氏は「最大のチャレンジは、テレビCMという非常に高価なアセットを、モバイルの小さな画面、無音デフォルト、フィードという状況にどう対応してもらえるか、だ。まさに『ルーミー / タンク』でこういう事例を作ってもらい、実績も実際に出た。我々にとって強い励みになっている」と語った。

Written by 吉田拓史
Photographed by 渡部幸和