App Storeリニューアル、「見つけやすさ」がさらに低下?:ARのプッシュのせいか

ブランド各社は長年、AppleのApp Storeでアプリを見つけてもらいにくいことを嘆いてきた。今年の9月、AppleはiOS 11のアップデートにともないApp Storeのデザインを変更。同社は、このアップデートによりアプリの見つけやすさが飛躍的に向上するとしていた。だが実際は、新しいレイアウトとAppleが最近プッシュしているAR(拡張現実)のせいで、ブランド各社がカスタマーにアプリを届けるのがさらに難しくなったというのが現実だ。

このAppleによるARのプッシュで、デザイン変更されたいまのApp Storeでは、最適化と見つけやすさに変化が生じている。アプリ市場データを提供するアップアニー(App Annie)でマーケティングディレクターを務めるアミール・ゴドラティ氏によると、アプリ説明の検索キーワードに「拡張現実」を含むアプリを検索結果の上位に表示させるのが、この9月以降で14%ほど難しくなったという。

これはARに対応したアプリをつくるデベロッパーの増加に起因する。AppleはiOS 11の導入にあわせてARKitをローンチした。これによりデベロッパーは自らAR体験を生みだすためのツールと技術を手にした。

「拡張現実」の検索が増えた

ブランド各社、とくにウェイフェア(Wayfair)、イケア、オーバーストック・ドットコム(Overstock)をはじめとする家具ブランドはこのチャンスに飛びつき、ARを導入するため自社アプリのアップデートや新しいアプリの製作を行っている。11月はじめ、Appleのティム・クックCEOは同社の第4四半期の収支報告で1000以上のARアプリが作られたとしている。アップアニーによると、iOSのアップデートにともない「拡張現実」で検索するユーザー数は50%増加したそうだ。

このデータがもつ意味は大きい。なぜならゴドラティ氏によると、アプリのダウンロードの大半は、特定のアプリ名や「拡張現実」といったキーワードで自発的に検索したユーザーによるものだからだ。アプリのダウンロードの実に65%はそうした検索に基づいて行われる。そして統計調査企業のスタティスタ(Statista)によると220万にのぼるアプリが存在するApple App Storeにおいて、検索結果で上位に表示されるためにはブランドはあらゆる手段を講じる必要がある。

「アプリの説明を更新することで、関連キーワード検索におけるアプリの順位を上げることが可能だ」と、ゴドラティ氏。

検索広告の利用も盛んに

ウォルマート(Walmart)は、休暇シーズンに先がけてiOSのアプリをアップデートしたブランドのひとつだ。アップアニーによると、同社のバージョンは11月19日に更新され、「休日もそうでない日も、当社の『妖精』はお客様が時間を節約できるように毎日働き続ける」と書かれている。同社のアプリのアイコンも同時に休暇をあらわすものに更新され、雪を背景にしたスクリーンショットが追加された。いずれもコンバージョンにつながるやり方だとゴドラティ氏は指摘し、また「休暇」という単語を使うことがアプリケーションの検索順位の向上につながる場合もあると語る。

とあるエージェンシーの幹部は匿名を条件に、Appleは検索で見つかりやすくすることに関心がないと述べている。なぜならばブランドに自社の検索広告を購入してほしいからだ。Appleが2016年10月に導入した検索広告を購入さえすれば、検索結果のトップに表示されるようになる。マーケターは、キーワードを入札してAppleの検索広告を購入しているのだ。Appleによれば、その価格は大きなブランドでは1タップあたり50セント、小さなブランドでは1タップあたり25セントとのことだ。

同社の営業は効果を上げている。もともと検索で上位にあるアプリですら、検索結果のトップになるため検索広告を使用している。検索広告によって、ブランド各社は自社のアプリケーションでそれまで上位になかったキーワードで宣伝できるようになった。また検索広告は、競合他社に対抗するためにも用いられている。たとえばウォルマートは、「ターゲット」というキーワードで検索結果を広告しているし、Amazonは「ウォルマート」というキーワードの検索結果を広告している。一方ナイキ(Nike)は、「ナイキ」で検索広告を行っている。これは競合他社が宣伝の結果、自社のアプリより上位に表示されるのを避けるためだろう。

フィーチャーされるのも効果的

そんななか、消費者はそもそもアプリの検索に時間を費やさないと考えるマーケターたちもいる。彼らはApple App Storeで見つけられるためには、フィーチャーされるほかないと考えている。インフルエンサーマーケティング企業クラウドタップ(Crowdtap)のCEOを務めるマット・ブリットン氏は、「誰もがフィーチャーされたいと思っている。トップページの後ろには、無数のページが埋もれているのだから」と語った。

また、デザイン変更にともない、増えつづけていたアプリの一覧をAppleがタブごとに分類したことも、アプリが埋もれてしまう状況に拍車をかけた。現在のタブでは「今日のApp」や「今日のゲーム」といったセクションがあり、ゲームのタブではフィーチャーされたゲームが今日のおすすめゲームといった形で表示されている。これはアプリのタブについても同様だ。さらにフィーチャーされたアプリは分かりやすく大きく表示される。これでは、ユーザーは上記の2つのセクションからカテゴリーを選んで最初に表示される3つのアプリしか見なくなってしまう。以前はユーザーがランキングのタブから好きなだけスクロールすることができた。

「いまでもランキングを見れるが、以前より時間も手間もかかるようになった。ランキングにたどり着くまでに気をそらすようなコンテンツも多い」と、モバイルアプリ分析企業のアップトピア(Apptopia)でコミュニケーション部長を務めるアダム・ブラッカー氏は語る。

この新しいレイアウトによって、フィーチャーされたアプリのダウンロード数は増えている。アップトピアの調べでは、ゲーム以外のアプリがフィーチャーされた場合、ダウンロード数は平均で1747%増加しており、ゲームアプリの場合も792%増加している。

Appleにとって収益性がすべて

とはいえ、Appleがアプリのフィーチャーをいままでより厳しくする可能性もある。Appleはランキングのリストを金銭的なサポートなしでまとめている。ブラッカー氏によると、Appleはフィーチャーするアプリを増やしているという。App Storeのデザイン変更前よりもフィーチャーアプリの入れ替えを頻繁に行っているというのだ。その一方で、現在ストア内ですでに人気のアプリがフィーチャーされる傾向が高い。同氏はAppleにこれについて回答を求めたが、返答はなかったという。

アップトピアは、App Storeのデザイン変更から30日間の分析を行った(9月19日から10月19日)。また、デザイン変更前からすでにAppleがフィーチャーしたアプリのダウンロード数は1日平均で5062となっており、そのうちの少なくとも半分のアプリで最低でも1日あたり1万ドル(約110万円)の収益がもたらされているという。

「Appleは収益をあげたいと考えている」とアップトピアの創設者でありCOOを務めるジョナサン・ケイ氏は10月24日のMedium(ミディアム)への投稿で述べている。「Appleのモバイルアプリ上の使用額の30%は同社の収益となる。Appleはもっとアプリ上で金を使って欲しいと思っているし、どのアプリがもっとも金になるかも知っている。多くは、大きな予算をもつ大企業が作るアプリだ」と同氏。

投稿のなかでケイ氏はスターバックス(Starbucks)やNBCのアプリ、マインクラフト(Minecraft)を例に挙げている。マクドナルドも同様だ。この記事の執筆時点で、マクドナルドのアプリはおすすめの新着アプリに選ばれている。だがこのアプリ自体が新しいわけではなく、新しい支払いオプションを更新しただけだ。この新しい支払いオプションにはApple Payも含まれている。

「フィーチャーするのはAppleだ。そしてフィーチャーされないアプリを見つけてもらうのは難しくなっている」と、ブラッカー氏は指摘した。

ILYSE LIFFREING(原文 / 訳:SI Japan)