「ブランドセーフティ」はどこまで進化するのか?:Supership/Momentum/SNCによる実証結果

現在、アドプラットフォーム事業者のSupership(スーパーシップ)株式会社が、アドベリフィケーションやブランドセーフティに関する実証を行っている。

これはSupershipに加え、アドベリのスペシャリスト企業Momentum(モメンタム)株式会社、ソニーグループに対して自社のアドプラットフォームの活用を推進するソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社(以下、SNC)の3社共同プロジェクトだ。その第1弾は、3月13日から22日まで、10日間に渡って実施されたことは、すでにご紹介した。本記事では、その背景と結果を踏まえ、各社担当者による鼎談の内容をお届けする。

お話いただくのは、Supership広告事業本部長の宮本裕樹氏(TOP写真中央)、Momentum代表取締役社長の高頭博志氏(TOP写真右)、SNCのUX企画運営部門データインテリジェンス&メディアグロース部事業開発マネジャーの山本琢也氏(TOP写真左)の3名だ。以下、読みやすさのために若干の編集を加えている。

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――まず、取り組みがスタートした背景を教えてください

山本琢也氏(以下、山本):弊社とSupershipさんは、ソニーグループの広告配信効率の向上に向けたアドプラットフォーム協業をしています。クライアントとなるソニーグループ各社の広告を配信するうえで、意図しない広告面やコンテキストへの広告掲載は、ソニーグループ各社のブランド毀損に繋がりかねない深刻な問題と捉えています。ソニーグループにとってもブランドセーフティは、顧客とのコミュニケーションを図るうえでの重要課題。ブランドを毀損しない広告の掲載面を選定したいというニーズがありました。

アドプラットフォームにおいてSupershipさんと協業させていただいたのも、豊富なデータとプラットフォームのテクノロジーに長けており、国内最大手の1社として業界をリードしている会社だからでした。その延長上に、今回の取り組みがあります。

――そのクライアントニーズにどう応えようとしたのですか?

宮本裕樹氏(以下、宮本):広告配信の現場では、CPAや売上貢献などの成果が重視されるのはもちろんですが、成果だけではなく、ブランドとしての信頼性が担保されなければ、顧客との継続的なコミュニケーションは実現出来ません。その意味で、アドベリフィケーションは、最近特に重要視しています。

以前よりSNCさんとアドプラットフォーム協業を推進するなかで、不正広告への対策も行っていました。ひとつは、掲載媒体、掲載面のレポートで情報を開示し、どの枠に、どのくらい掲載しているか、ブラックボックス化しないように透明性を担保するという基本的な取り組み。もうひとつは不正ボット排除の取り組みです。

しかし、ブランドセーフティの分野においては、なかなか自前でやりきれていませんでした。そこでMomentumさんと相談しながら、アドベリフィケーションの専業ベンダーとやれることを、実案件でトライアルしようとしたのです。

「アドベリフィケーションは、最近特に重要視している」とSupership宮本氏

高頭博志氏(以下、高頭):Momentumは、アドベリフィケーション専業のテックベンダーです。アドプラットフォームに対して、そのテクノロジーを提供しています。

起業した2014年当時は、DSP市場が立ち上がってきた時期で、より市場が成熟していくために、ブランドセーフティや広告不正問題に対処していく必要があると感じていました。しかし、それを専門に対応するテックベンダーが国内にまだなかったため、自分で起業したのです。

いまのところ、国内には競合企業がない状況。国外にはいくつか存在しますが、特に弊社は、日本語解析に独自の強みをもっています。今回の取り組みであるブランドセーフティは、日本語のコンテンツ、コンテキストを解析する必要がありますので、自然言語処理による弊社の解析技術の優位性が発揮できると考えています。

――ちなみに一般的なブランドやメディアの意識は?

宮本:少し前までは、「不正ボット等を排除したクリーンな掲載面への掲出を保証する分、広告料金が割高になります」と説明すると、掲載を見送る広告主少なからずいましたが、最近では、クリーンな面で、ビューもある程度保証されていることに対して対価を払うというように、広告主の意識の変化が感じられます。メディア側も、ビューを保証することで広告単価が高くなりますし、テクノロジーによって透明性の担保ができれば、広告主の理解も得られると考えるようになってきましたね。

山本:広告主は、広告料金が割高でも、出す価値があれば対価を払うという意識が強くなっています。我々としても、厳選された面で、少し高めの価格設定のメニューと、一般的なメディアで安い価格設定のメニューの選択肢を用意し、広告主に選んでいただくようにしています。

高頭:米国では、昨年の大統領選で、ヘイトスピーチやフェイクニュースのメディアに広告を配信しないというアドベリフィケーションのニーズが高まりました。それをサポートするためのテクノロジーをテックベンダーが開発しているのが現状です。国内でも、いまはアドベリフィケーションが広告枠の買い付けのスタンダードになりつつあるほどに意識の変化は感じているところです。

――3社ならではの強みはどこにありますか?

宮本:Supershipは、PMP、DMP事業も手がけており、特にモバイルに関するサードパーティデータを豊富に保有しています。そのため、不正ボット排除に関してほかではできないクオリティで実行できることが独自価値となっていますね。

高頭:弊社Momentumの解析技術は、ベンダーのデータを使わなくても、より精度の高いブランドセーフティ、アドベリフィケーション機能による不正の排除が可能になるという点が差別化ポイントです。

山本:我々も広告主であるソニーグループ各社に対してアドプラットフォームの活用を提案する立場のため、どんな掲載面に掲載されたか、ほかのアドプラットフォームと何が違うかという差別化ポイントは、常に問われます。そのうえで、不正ボットなどによる広告主のムダな投資を排除できることは、我々が提供するプラットフォームの付加価値になると考えています。

「広告主も出す価値があれば対価を払う」とSNC山本氏

――今回の実証の具体的な内容は?

宮本:実証は、ブランドセーフティと不正ボット排除の2種類を実施しました。前者は、アドプラットフォームが広告配信のリクエストを受け取る際に、Momentum社のタグが「どんな枠からリクエストが来ているか」を把握し、不適切な枠の場合は広告主の広告を表示させないというもの。後者は、テスト配信をした結果、全体のインプレッションのうち「価値あるインプレッション」がどれだけだったかを、ログ集計・分析するものです。

高頭:出稿媒体をホワイトリストとして絞り込み、さらに記事単位で、スポンサードしたくない面を排除します。つまり、プレミアムなメディアでも、たとえば、飲酒運転による事故のニュース記事にはアルコール飲料の広告を配信しないなど、記事のコンテキストでも絞り込んでいるのです。

山本:実際の運用については、我々が選定したホワイトリストに基づき、広告をセットして配信します。ホワイトリストの絞り込みは基本的に手作業ですが、Supershipさんでも選定をサポートしてくれます。

高頭:Supershipさんのアドプラットフォーム、Scaleoutが提供している広告主へのレポートで、掲載面のドメインがわかるようになっています。しかし、1キャンペーンあたりの掲載面は膨大になるので、弊社のようなアドベリフィケーションサービスを用いて配信ドメインのカテゴリを色付けすることで、広告投資すべき配信面の意思決定を弊社の方でサポートしています。

――第1弾の実証は、どんな結果でしたか?

宮本:あくまで速報値ですが、ボット排除においては、適切ではないと推測されるインプレッションは全体で2.20%、クリックレートは3.49%となりました。この数字には、ボット判定によるものだけではなく、広告枠の設計が不正だった(広告非表示の状態、勝手にローディングされる状態、広告枠しかない面、など)ケースも含まれます。

高頭:不正ボットについては、平均は5%くらいが相場です。ホワイトリストを小さくすること、つまり厳選されたメディアだけにすることで、平均よりも下げることが出来ました。その一方で、細分化して見ると、国内の一部の配信ネットワークにおけるPCにおけるフラウドのクリック率が15.80%と計測されるなど、まだ高いレートが検知されることもあります。ここの真因を深掘ることでより精緻化していきたいですね。

宮本:ブランドセーフティにおけるネガティブな可能性のある掲載面への掲出は、0.56%でした。ここでいうネガティブな掲載面とは、たとえば政治的に過激な内容の記事などを指しています。

高頭:この結果は、ホワイトリストで不適切な面を排除しても、ブランド毀損につながりかねない枠へ配信される可能性があったことを示しています。広告主のブランド毀損リスクを限りなく低減させるために、Momentumのようなテクノロジーが必要になってきます。引き続き実証を重ねて、意図せぬ面への掲載を回避していきたいです。

「将来的には、機械学習による自動化も検討している」とMomentum高頭氏

――獲得重視型の施策にも効きそうですね

高頭:おっしゃるとおりです。実際に、別の案件では、ブランドのコンプライアンスが厳しく、限られたホワイトリストしか配信できないというときに、弊社のツールを活用することで、限られた配信面のなかでリーチを広げつつ、CPAを下げることができました。

宮本:今回の取り組みには、ブランドセーフティと不正ボット排除の2つの方向性がありますが、獲得重視型の場合、特に不正ボット排除が効果を発揮します。ですが、そもそもの問題として、不正ボット排除はプラットフォームベンダーとして最低限やらなければならないという課題意識を持っています。

――この取り組みの達成目標は、どうお考えですか?

山本:まず現状を知ることが第1目標です。現状を知り、アドプラットフォームの改良につなげたいと考えています。たとえば、実証結果を見て、数百あるホワイトリストのうちブランド毀損に抵触する可能性がどのくらいあるのかなど、ホワイトリストを精緻化していく方向性が見い出せます。

また、ホワイトリストを設定して配信しても、広告によって相性もあるので、そこを可視化できる点にも期待しています。いずれにしても、結果をもとに、どういう改善ができるかを本取組の結果から検討したいです。

高頭:どの程度ネガティブな記事を排除したか、媒体別、記事単位でレポートが出てきますので、それをもとにホワイトリストを設定するだけでなく、継続的な取り組みを通じて、ブラックリストの精緻化にも活用できる可能性があります。

宮本:「デジタル広告には不透明な部分が多い」というイメージを払拭するためにも、きちんと検証結果を開示することも目標のひとつです。プラットフォームとしてこのような取り組みをしていることを明らかにすることが、健全な広告市場の確立につながると考えています。

――さらなる将来の展望は?

宮本:アドベリフィケーションは、まだこれからのテクノロジー領域だと思いますが、プラットフォームの立場としては、不正が多いという認識がむやみに広がることも、また、それを「過度な脅威」にも使うことも避けたいので、事実に基づいた適正な認識を広めていきたいです。

良質なメディアの適切な枠に広告が配信されるのが理想的ですが、ブランドセーフティはテクノロジーのサポートがないと実現できません。今回の取り組みを通じて、Momentumさんのテクノロジーと、我々のアドプラットフォームのテクノロジーが連携して広告不正の問題を解決し、それがSNCを通じて広告主への価値提供につながっていけばいいと思います。

高頭:今回はポストビット対応でしたが、将来的にはプレビット対応(広告リクエストに応じる前に、未然に防ぐやり方)も実施していきたいと思っています。

また、いずれ配信リスト作成を全自動化できると考えております。今回の取り組みがその礎になると位置づけています。機械学習により、人が行うリスト選定作業を自動化・精緻化することが期待されます。実現のためのイテレーションを回すという意味で、今回の取り組みがその一歩となることに期待しています。

この3社の取り組みは、まだまだ続いていく

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Written by 阿部欽一
Photo by 渡部幸和