日本のメディアも予習すべき、Snapchat「Stories」活用法:米4メディアの投稿事例

パブリッシャーたちは現在、Snapchat(スナップチャット)のメディアコンテンツセクション「Discover(ディスカバー)」(TOP画像)の限られた枠を手に入れようと必死だ。

ただ、そこにも落とし穴はある。「Discover」に参入すれば、Snapchatが求める質の高いコンテンツを毎日提供できるよう、専任のチームが必要となるのだ。

閉じたプラットフォームであるSnapchatは、コンテンツ提供社のWebサイトにトラフィックを送り込んではくれない。したがって、大量のページビューや広告を獲得しない限り、その労力を正当化することは難しいのだ。

さらに、「Discover」のチャンネル数が16に増えたため、各パブリッシャーは読者の関心を得るために、ますます懸命な取り組みが求められている。

「Stories」も活用次第で生きる

一方、「Discover」に参加していないパブリッシャーも、Snapchatアプリを通じてフォロワーとつながる方法を手に入れようとしている。しかも、それほどリソースを使わずにだ。

一般ユーザーも投稿できる「Stories(ストーリーズ)」のメリットは、ミレニアル世代(15〜35歳の世代)と(そして、多くの場合は、わざわざ彼らのアカウントをフォローしている忠実な読者たちとも)、直接的で個人的なつながりを築けることだ。それは、選ばれたメディアしか参入できない「Discover」や、ほかのソーシャルプラットフォームでは不可能なことだという。

「Stories」に投稿された写真や動画の閲覧は「24時間限定」。それ以降は自動消去されるため、米国の若年層は「リアル感」を楽しんでいる。日本の若年層でも「静かなブーム」になっているという人もいる。

以下、「Discover」にチャンネルをもっていない4つのメディア、「ミック(Mic)」「ワシントン・ポスト」「ザ・バージ(The Verge)」「ハフィントン・ポスト」が、Snapchatの「Stories」をどう活用しているかを見ていこう。

ミレニアル向け情報サイト「ミック」

mic1ミレニアル世代を対象としたニュースパブリッシャーである「ミック」は、1分で読める最新ニュース、ニュースの裏側、インタラクティブなクイズやゲームなど、多彩な形式の「Stories」を毎日追加している。

最近の投稿としては、朝食メニューの終日提供を開始したマクドナルドに対する客の反応や、アイオワ州で開かれた民主党大統領候補討論会(と、討論後の候補者インタビューが行われるスピンルームで待機する「ミック」の記者)の画像などがある。

「ミック」の編成責任者であるジョエル・パヴェルスキ氏は、「あらゆる種類のアクセス。それがオーディエンスの求めているものだと、私たちは知っている」と述べた。

「ミック」は、Snapchatで大切なのは、フォロワーと深く関わることだと考えている。その方法としてゲームを使うこともあれば、フィードバックを求める場合もあるという。後者の例としては、「読者が経験したことのあるマイクロアグレッション(無意識的に発せられる差別的な含みのある言葉)はどんなものだったか?」という最近の投稿が挙げられる。

Snapchatのデータは入手しにくい(パブリッシャーらによると、Snapchatが教えてくれるのは「Stories」の閲覧回数と最後まで読まれた回数だという)。しかし、「ミック」によれば、投稿を見たユーザーの2~5%がリプライを返してくれるし、フィードバックを求めた場合は、12%ものユーザーが返信してくれるという。フォロワーの半数近く(45%)が毎日閲覧しており、忠実なユーザー基盤がうかがえる。

Snapchatがうまくミレニアル世代を大統領候補討論会に釘付けにしたことから、「ミック」はSnapchatを利用することが重要だと考えている。

前出のパヴェルスキ氏は、次のように述べている。「Snapchatを使った報道はとても役に立つ。ある意味、開拓時代のようなものだ。いまは実験的なことができる時期であり、非常に刺激的だ」。

老舗の地方紙「ワシントン・ポスト」

washigton1「ワシントン・ポスト」のSnapchat参入は、2014年初頭に遡る。「Discover」が追加される1年前だ。ソーシャルを担当するチームはやり過ぎないよう心がけていて、投稿するのは大きなニュースがあったときだけだ。

そのため、普段は週に数件投稿する程度だという。「Stories」に最近投稿されたものとしては、アイオワ州で開催された民主党大統領候補討論会や、ミャンマーの総選挙(写真参照)などがある。

「ワシントン・ポスト」の新興ニュースプロダクツ部門でエグゼクティブ・ディレクターを務めるコリー・ヘイク氏は「Stories」について、「人々のSnapchatの使い方や消費の仕方という点から、我々にふさわしい場だと思える」と述べている。

同氏によると、「Discover」の価値は高いが、まったくの別物だという。「『Discover』はニュースをまとめたものだが、『Stories』は、ちょっとした話題になるような、生き生きとした瞬間を切り取った写真や動画だ。そのため、作り込まれた『Discover』よりも、ユーザーとの直接的なつながりやエンゲージメントを築ける可能性が高い」と、ヘイク氏は言う。

作業は複数のニュースデスクで分担しているので、専任スタッフは必要ない。また同紙は、可能な場合にはSnapchatの素材を使い回すこともある。Snapchatに投稿したものを、インスタグラムに投稿することもできるのだ。

Snapchatの推奨フォーマットであるタテ型動画は、いまや「ワシントン・ポスト」のWebサイトのデフォルトでもある。そのため、両方で使えるというわけだ。

ヘイク氏は、実際の数字こそ出さなかったものの、「ワシントン・ポスト」の閲覧数とフォロワー数はこの1年で「劇的に」増えたと語った。「何百万人もが見ているとは言わないが、その数は確かに劇増し、我々にとって非常に重要なプラットフォームになった」

テクノロジーサイト「ザ・バージ」

verge1Vox Mediaが運営するテクノロジー専門サイトである「ザ・バージ」は、Snapchatを使ってニュースの小ネタを共有している。フォロワーとの個人的なつながりを築けるよう、投稿はいわゆるニュース報道の形式ではなく、もっと気軽で個人的なスタイルだ。

最近では、ケネディ宇宙センターからのロケット発射や、iPhone 6Sの発表イベントを記者に伝えさせた。「ザ・バージ」のエンゲージメントエディターを務めるヘレン・ハヴラック氏によると、物語風の形式は長いイベントの報道にぴったりだという。同氏は次のように述べている。

「1対1のスナップ(Snapchatへの投稿)から築ける個人的なつながりがある。人々はリアルな人間らしさを期待している。『Discover』は完全に別物だ。インターフェースのおかげで、『Discover』ではより多くの人にリーチでき、新しい人に見つけてもらいやすい。しかし、見れば分かるように、『Discover』にチャンネルを持っているブランドも、『Stories』に投稿している。それは『Stories』がユニークで特別なものだからだ。『Discover』に比べるとずっと個人的で、熱心なファンを対象にしている」。

ファンの熱心さは利用データに表れている、とハヴラック氏は言う。「ザ・バージ」が「Stories」に投稿したスナップは、50~75%が最後まで読まれているのだ。

新興ニュースサイト「ハフポスト」

huffpo-inside「ハフィントン・ポスト」は1日に数回投稿しており、Snapchatを通じて幅広いコンテンツと専門知識を提供している。内容は真面目な投稿(同時多発テロ後のパリ市民へのインタビュー動画など)から、気軽なポスト(簡単な料理の動画など)まで、多岐にわたる。ほかと同様「ハフィントン・ポスト」も、コンテンツ制作をニュースルームの複数のジャーナリストで分担している。

コンテンツの大半はオリジナルだが、もっと大きな「Stories」の一部として投稿されているコンテンツもある。「大学生へのベストアドバイス」に関する「Stories」を、Snapchatではユーザーのスクリーンショットという形で投稿したり、「ラテン料理めぐり(Latin Food Crawl)」に関連した「Stories」を、Snapchatのためにまとめたりしている。

ユーザーからのフィードバックは、Snapchatにおける成功の目安として非常に重要だ。そのため「ハフィントン・ポスト」は、「Stories」に投稿した記事ごとの閲覧数や、自社アカウントに送られてきたスナップに大いに注目している。

「ハフィントン・ポスト」のグローバル・ソーシャルメディア・エディターを務めるイーサン・クラッパー氏は、2015年7月以降、平均閲覧数は155%も増加したと述べ、「『Stories』が楽しめたかどうかについて、人々の反応は極めて率直だ」と語った。

Ricardo Bilton (原文 / 訳:ガリレオ)