Google AMP 対応準備に奔走するパブリッシャー:広告収益化の約束は果たされるのか?

Googleによるモバイルウェブ高速化イニシアチブ、AMP(Accelerated Mobile Pages)は、パブリッシャー(媒体社)によるコントロールを前提としている。FacebookおよびAppleとの差別化要因について語る際、Google経営陣は繰り返し「コントロール」という言葉を使ってきたが、AMPのローンチを近日中に控え、パブリッシャーにとっての懸念は、広告収益化に関し、いったいどの程度の「コントロール」が得られるのか、ということだ。

AMPは、すべての広告フォーマットには対応しておらず、パブリッシャーの広告収益が制限されることになる。この点が、AMPの最大の未知数と言っていいだろう。Googleが先導し、TwitterやPinterest(ピンタレスト)も参画するAMP。多様なテクノロジーパートナーを引き入れ、ユーザーフレンドリーなモバイルページを展開する機会だけでなく、モバイルページ収益化のコントロールをもパブリッシャーに提供するという。

しかし、一部のパブリッシャーは、 少なくともローンチ時には、自社サイトと同程度のコントロールは期待できないと考えている(Facebook「インスタント記事[Instant Articles]」やApple「News」にくらべたらマシなのかもしれないが)。

「ニューヨークデイリーニュース(New York Daily News)」のデジタル部門EVPであるグラント・ホワイトモア氏は、ローンチ時にAMP採用パブリッシャーとして名乗りを上げることができ、喜ばしいことに変わりはないとしている。しかし、同社のAMPページでは、ローンチ時にアウトブレイン(Outbrain)を使用することができず、また、ヘッダー入札も行わないという(アウトブレインでは、顧客であるパブリッシャー全社に対応する前に、一部AMPパートナーでのみ展開を試行する)。

媒体社の不安:広告モデルは成立するか

「NYデイリーニュース」では、直販広告は実入りが大きいにもかかわらず、AMPページでの直販は保留する決定をした。パブリッシャー側でAMP対応に必要となる工数に見合うだけ、広告主からの需要があるか、明らかではないからだ。

「広告収入メカニズムを前提にしているというのが、AMPのもともとの約束だったが、パブリッシャーのコントロールレベルについて、AMPのロードマップではまだ明確に答えられていない疑問がある」と、ホワイトモア氏は述べている。「ローンチ時に関していえば、これは我々にとって大きな問題ではない。しかし、今年度の半ばくらいになっても、まだこの疑問が解消されないようなら、心配の種となるだろう」。

従来的な高額広告は、ロードに時間がかかり、すなわちAMPには適していないため、AMPページからの広告収入に疑問を抱くパブリッシャーもいる。「パブリッシャーだって、ユーザーエクスペリエンスの向上が必要なのはわかっている。しかし、収益化の問題がある」と、AMPをサポートする某アドテク企業社員は述べている。ユーザーエクスペリエンスの専門家が、ユーザーにとって「妨害的」と評価する広告が、ブランドにとっては「インパクトのある」広告で、パブリッシャーにとっては「金になる」広告ということもあるのだ。

Google:ロード時間を85%まで短縮

読者がパブリッシャーにアクセスする際、どの程度AMPが使われるようになるかによっては、広告への制限は、今後大きな問題となり得る。ネイティブアドプラットフォームのポーラー(Polar)CEOであるクナル・ガプタ氏によると、一部のパブリッシャーは、年度末までに、モバイルトラフィックの50%を、メディアページのAMPバージョンが占める可能性があると予測している。

AMPページには、採用パブリッシャーとして、38のメディアが名前を連ねており、その媒体社として、ニューヨーク・タイムズ、BuzzFeed、Vox Mediaなどが含まれている。オープンソースイニシアチブであるAMPには、誰でも参加することができるので、これよりずっと多くのパブリッシャーが対応準備を行っていると見て間違いない。

多くのパブリッシャーは、自社デジタルページのロード時間をカットする独自の取り組みを行っているが、Googleではロード時間(読込時間)を85%まで短縮することに成功したという。これは、大方のパブリッシャーの場合、独自の努力では達成できない数字と言っていいだろう。巷の予想では、Googleのアルゴリズムはスピードを優先しているので、AMP最適化を行わないパブリッシャーは、検索結果で好ましくない状況に陥るのではないかと囁かれている。

AMPには、ページのロード時間を遅らせる広告フォーマットを阻止する意図もあるという事実を、Googleでは公然と認めている。同時に、この検索最大手は、パブリッシャーはこれまでと同じ使い慣れたやり方で、Googleまたはサードパーティのアドツールを使って、AMPページで広告販売ができるとしている。

レコメンドエンジンにも影響あり

米Digidayの取材に対し、広報担当者は、パブリッシャー、アドテク企業、広告主、バイヤーのすべてがモバイルアドの改善に向け努力をしていると述べている。「これは業界で、まだほんのひと握りのグループにすぎないが、今後の成長に期待している。我々は、優れたモバイル体験をユーザーに提供しながら、パブリッシャーが堅実に収益をあげていく、大きな機会があると見ている」。

「おすすめコンテンツ」ウィジェット、タブーラ(Taboola)の創設者兼CEOであるアダム・シンゴルダ氏は「タブーラのウィジェットはAMPに対応しているが、パブリッシャー側で、ほかのモジュールに対して行うのと同様、AMPに特化したコードを展開する必要がある。ただし、この作業は簡単にできるはず」と述べている。

競合のアウトブレインは、2016年第1四半期の終わりまでに、AMPローンチ時には対象とされていない顧客にも同社の技術を提供するという。

「Googleは、AMP推進に目覚ましい取り組みを見せており、ローンチを心待ちにしていると、パブリッシャー各社から聞いている」と、アウトブレインの製品マーケティングディレクターであるデニス・ヤスカビッチ氏は述べている。

Lucia Moses(原文 / 訳:片岡直子)
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