売上20%増、流入36%増…インスタント記事の効果を検証:パブリッシャーたちのさまざまな声

読み込みが速いコンテンツをFacebookに直接投稿できる「インスタント記事(Instant Articles)」。4月にローンチされ、その効果がわかりはじめている。

配信をFacebookにすっかり委ねてしまうとどうなるのか、パブリッシャーたちはこの新しいフォーマットで実験中だ。インスタント記事として投稿するコンテンツの種類や量を調整し、パフォーマンスとマネタイズへの影響を計算している。

ゲームとエンターテイメントのメディア企業であるIGNによると、インスタント記事はそれ以外の記事のほぼ2倍の人にリーチしているという。これに対し、女性向けライフスタイルメディアの企業ポップシュガー(PopSugar)では、モバイルのトラフィックは急増したが、コンテンツの滞在時間が減少した。

また、経済メディアのビジネス・インサイダー(Business Insider)は、広告の販売をFacebookに任せており、そのマネタイズ管理は見事だと語っている。これに対し、自社で広告を販売しうまくいっていると話すパブリッシャーもいる。

IGNの製品担当バイスプレジデントを務めるトッド・ノースカット氏は、「リーチとインベントリー(在庫)が増加すると期待していたが、予想をはるかに上回った」と語っている。Facebook経由のインプレッションが増えたため、IGNではインスタント記事の広告売上が、それ以外の記事と比べて20%多いと、ノースカット氏は言う。

このようにインスタント記事の効果がさっそく漏れ伝わってきている。パブリッシャーから聞いた、これまでにわかったことをさらにご紹介しよう。

リーチ

ポップシュガーの製品マーケティング担当シニアバイスプレジデントであるクリス・ジョージ氏は、「大きな疑問がひとつ浮かんだ。アルゴリズムはインスタント記事をそうでない記事よりも重視するのだろうか? Facebookはそれはないと言ったが、消費者はインスタント記事の投稿のほうが快適なことに気付きつつあり、こちらがよりクリックされる」と話す。

インスタント記事を使うパブリッシャーを人為的に底上げすることはしないとFacebookは主張するが、インスタント記事のほうがクリックされるため、順位が上がってより多くの人のフィードに表示されるようになり、結局はインスタント記事の投稿のほうが多くの人の目に留まることになる。

IGNは、インスタント記事とそうでない記事のリーチがわかる1週間分のデータを披露してくれた。インスタント記事のリーチはほぼ2倍だ。IGNのFacebookページのファンであるオーディエンス350万人のうち、インスタント記事の投稿が平均12%にリーチしたのに対し、インスタント記事ではない投稿のリーチは平均7%だった。

エンゲージメント

難しいのはエンゲージメントだ。たとえば、ポップシュガーは読者に自社サイトを訪問してもらうことを重視しており、できるだけ長く滞在してもらおうと努めている。

そんな同社は、4月にインスタント記事のプログラムに参加してから、モバイルのトラフィックが36%増加したという。それは、インスタント記事へのトラフィックを、Webサイトへの訪問としてとらえ、サイト側のトラフィックに足すことができるからだ。インターネット調査企業のコムスコア(comScore)は、パブリッシャーと広告主向けにトラフィック関連の数字を検証するためのサードパーティ計測を提供している。

ポップシュガーによると、インスタント記事はトラフィックこそ多いものの、滞在時間はサイトを訪問する読者の平均セッション時間の半分だったという。「インスタント記事はその特性上、同じレベルのエンゲージメントを得られない」と、ジョージ氏は語った。

ポップシュガーは、インスタント記事の読者にWebサイトと同じくらい滞在してもらえるように、現在、アンケートやレシピなど、単純な記事以外にもさまざまな形式のメディアを実験しているという。

コンテンツ

パブリッシャーは、リンク、写真ギャラリー、投票、その他メディアなど、インスタント記事にはどんなコンテンツを、どれくらい投稿するのがもっとも有効なのか、策を練っている。

ビジネス・インサイダーの最高執行責任者(COO)ジュリー・ハンセン氏は、「うちは記事だけで、写真ギャラリー、スライドショー、動画はやっていない。もっともシンプルな、一番基本的な記事に注力している」と話す。

ビジネス・インサイダーが記事の約10%をインスタント記事として投稿しているのに対し、ワシントン・ポスト(The Washington Post)のように、すべての記事をインスタント記事として投稿しているパブリッシャーもある。

マネタイズ

Facebookがパブリッシャーに提示しているマネタイズの選択肢はふたつある。ひとつはインスタント記事内での広告ユニットの販売。Facebook上の訪問者数はコムスコアが測定できることから、インスタント記事のトラフィックと自社サイトのトラフィックをひとつにまとめることができるのだ。そして、もうひとつ、Facebookに独自のアドネットワークでインベントリーを販売してもらうというものがある。

IGNのノースカット氏は、「うちは独自の広告がたくさんあり、この新しいインベントリーはクロススクリーンの『オールIGN』のインベントリーの一部として扱っている」と話す。「これがずっとうちの戦略になっていたので、我々にとってはモバイルにおけるオーガニックな成長と同じだ。コムスコアを通じてFacebookでのオーディエンスを測定できるのが、Facebookにおいてはとても大きかった。これによりFacebookのオーディエンスを記録できるようになったのだから」。

Facebookに広告枠を埋めさせるという、もう一方の道を進んでいるビジネス・インサイダーは、現在、インスタント記事のマネタイズが、自社サイトからのものと同程度になっている。

ただハンセン氏によると、ビジネス・インサイダー自身の広告主は、インスタント記事の広告スペースをそれほど欲しがっていないようだ。「うちの広告主からこれといった要望はきておらず、反発もまったくない。とにかくマネタイズはFacebookに任せており、Facebookはよくやってくれている」とハンセン氏は話している。

Garett Sloane (原文 / 訳:ガリレオ)