Facebook、SSP事業縮小の裏側でパワープレイ発動か?:ライブレイル騒動の背景

パブリッシャーはかつて、主要アドテク市場におけるGoogleの対抗馬として、Facebookに目を向けた。だが、いまでは、その期待も薄れたようだ。

米経済メディア「ビジネスインサイダー(Business Insider)」によると、Facebookはアドテク部門ライブレイル(LiveRail)の再編を進めており、その一環としてライブレイルの最高経営責任者(CEO)マーク・トレフガーン氏と従業員40人が退社。ただし、この混乱の陰でFacebookは、パワープレイと受け取れる行動に出ており、ライブレイルのパートナー媒体社をFacebookが推し進めるアドネットワークに引き込もうとしているという。

こうした動きによって、いくつかのパブリッシャーが広告掲載に関する支配権を失ってしまった。Facebookは彼らを、自社の広告主のキャンペーンを拡大できる、新たな場所としか思っていないのかもしれない。

今回の報道の背景

Facebookは2014年、ライブレイルを5億ドル(約549億円)で買収。以降、Hulu(フールー)、メジャーリーグベースボール(MLB)、A+Eネットワークス(A+E Networks)などに提供してきた動画広告サービスを徐々に縮小している。アドサーバー事業を取りやめ、アドエクスチェンジも75%縮小した。

Facebookは、ライブレイルのアドエクスチェンジを段階的に縮小している理由について、それほど多くのトラフィックを保証できないからと回答。業界を悩ませている不正なオンライン活動が広範に広がっていることを指摘した(当然ながら、これを都合の良い言い訳と見る人もいる)。情報筋によると、そこで同社は、ライブレイルのプレミアムプログラマティック広告サービスを使い続けているユーザー企業に対し、Facebookのアドネットワークに参加する必要があると伝えたという。

ライブレイルのユーザー企業に近い情報筋は、こう話している。「Facebookはライブレイルを、ほぼ完全に同社の『オーディエンスネットワーク』へ組み込んでいるため、ライブレイルは単なるアドネットワークになっている。これは良いことではない」。ちなみにFacebookのオーディエンスネットワークは、同社のモバイルサイトやアプリ以外にも、そのターゲティング技術を利用して、広告を掲載できるアドネットワークサービスだ。

メディア企業との関係性

Facebookはここ数カ月にわたってライブレイルを後退させる動きを見せているが、2016年1月には、今後も長年のユーザー企業向けにプライベートエクスチェンジを運用し続ける意向を明らかにした。Facebookはプライベートマーケットプレイス(PMP)を通じて、HuluやMLBといった大手Webサイト上の認証済みトラフィックに対して、引き続き動画広告の配信を支援できるかもしれない。

訪問者がFacebookのアカウントも持っていれば、Facebookはそれぞれのサイトに向かう大量のトラフィックを確認することができる。Facebookは、たとえばHuluの視聴者と自社のユーザー基盤をマッチさせたり、自社のデータを使ってターゲティング広告を配信したりすることが可能だ。

その一方でメディア企業は、PMPモデルを利用すると、インベントリーや売上の管理が可能になる。Facebookは、彼らをオーディエンスネットワークへ引き入れる際に、そうした管理権限を手にするという。これは、Facebookがユーザーや広告主に関するすべてのデータを保持し、その豊富なデータを自らの判断で配信パートナーに少しずつ分け与えるという、新たな領域を示している。プラットフォームが支配する世界では、パブリッシャーの生きる道などそんなものだ。

アドテク関連のある情報筋は次のように語った。「パブリッシャーには、セールスチームが何とかFacebookのデータに対抗して販売するためのアクセス手段が必要だ。それを見込んでいたが、今後はライブレイルを通すことになるだろう」。

「目標はパブリッシャーの支援」

各Webサイトは、Facebookのオーディエンスデータを使って自前のオーディエンスデータを強化できるかもしれないと考えて、セールスチームにこの強力な組み合わせの売り込みをさせた。ところが、そこに登場したのが、2014年に提供開始されたオーディエンスネットワークだ。これはFacebookの拡張機能で、配信パートナーはアプリやモバイルサイトで広告を運用できる。

これらの広告は基本的に、各ブランドがFacebook上ですでに行っていた注文の延長線上にあり、配信パートナーが何か特別な関係を築いた結果というわけではない。「そのためパブリッシャーは、Facebookの思うままだ」と前述の情報筋は述べた。

Facebookによると、同社はパブリッシャー向けプラットフォームの開発に取り組んでおり、広告インベントリーを処理するために必要なものをパブリッシャーに提供しようとしているという。Facebookはメールで声明を寄せ、そのなかで次のように述べている。

「我々は、パブリッシャーが関心のある広告主やデマンドソースと取引可能なPMPツールの開発に力を注いでいる。我々の目標は、プログラマティック広告の販売や運用を簡単かつ効果的に管理できるようパブリッシャーを支援することだ。それに加えて、パブリッシャーがFacebookの『ピープルベースドマーケティング(people-based marketing)』にアクセスできる、拡張可能な環境の基盤を構築したいと考えている」。

オーディエンスネットワークの行方

Facebookオーディエンスネットワークは年間売上のランレートが先ごろ10億ドル(約1080億円)に達しており、アドテクに関するFacebookの野望のなかでも希望のもてる部分だと考えられている。ある大手アドテク企業の幹部は、「FacebookはFAN(Facebookのオーディエンスネットワークの略)を、サード―パーティーのパブリッシャーと協力する手段としての主要なメカニズム、おそらくは唯一のメカニズムにしたがっている」と、語った。

Facebookは、Googleの広告プラットフォーム「ダブルクリック(DoubleClick)」に対抗できるように、多額の資金を出してライブレイルを買収した。ビジネスインサイダーの報道では、この計画が変更され、ライブレイルの技術やチームが解体された経緯について概要を伝えている。

ライブレイルは、新たなアトラス(Atlas)になりつつあると指摘する人もいる。アトラスは、Facebookが手がけたもうひとつのアドサーバープロジェクトだ。業界情報メディア「アドエクスチェンジャー(AdExchanger)」は2016年2月、アトラスが「テスト段階での苦境」にはまり込んでいると伝えていた。

動画アドテクプラットフォームを手がけるウーヤラ(Ooyala)のシニアバイスプレジデント、ソロシュ・タバコリ氏は次のように話す。「発展の仕方がアトラスに似ている。ライブレイルが考えていた戦略と、今後向かう戦略は異なる。パブリッシャーがPMPを利用できるよう支援するためだけに、(Facebookが)今後もライブレイルを維持してアップデートしていくとは思えない。彼らが手がけるほかのどの事業とも整合性がない」。

Garett Sloane(原文 / 訳:ガリレオ)
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