非PV主義のデジタル広告マーケットプレイスを構築する:Outbrain CEO ヤロン・ガライ氏

インターネットトラフィックにはビッグプレイヤーの影響力が強い。デジタル広告ではGoogleとFacebookの「デュオポリー(複占)」はグローバルに議論される。このような環境下で、パブリッシャーが自らのトラフィックを確保したり、企業が自らのコンテンツをリーチさせたりする手段のひとつとして、コンテンツレコメンデーションがある。

アウトブレイン(OutBrain)共同創設者兼CEO(最高経営責任者)ヤロン・ガライ氏は、パブリッシャーのコンテンツの収益性の評価を可視化することで「コンテンツがもつ『本当の価値』に基づいた適正な価格を与えることで、トラフィックのプログラマティックな取引が可能な『ユーザーセントリックなマーケットプレイス』をつくる」と話している。

アウトブレインは「Outbrainオートマティック イールド」を発表した。このパブリッシャーページの裏側に張り巡らされた「マーケットプレイス」を成立させるには、価格メカニズムが不可欠になる。アウトブレインはDFPを含むアドサーバーを介するあらゆる収益源の情報を獲得し、各ページのリアルタイムの収益性を把握できると主張している。

「パブリッシャーはもっとも人気のある記事を各種チャネルで拡散することで読者を増やし、リファラーのアクセスやキャンペーンによるPV(ページビュー)を追求してきた。このPV獲得コストと広告収益のバランスがパブリッシャーの割に合うのかは自信が持てないケースも少なくない」。

短期的利益を優先するパブリッシャーがPV最優先の戦略をとることは、不揃いの低質なインプレッションの束を生み出しうる。あまり効果的でないインプレッションを掴む広告主が増える可能性を意味しており、ひいては長期的にデジタル広告の評価を落としてしまうかもしれない。同時に買い手がクリックなどの単調な指標にのみ依存して評価、購入する傾向は、パブリッシャーが価値の低いPV群を生み出すインセンティブをつくりだす。プレイヤーが自分の利益を大きくしようとして互いに影響を与え合うことが、悲しいことにエコシステムに歪みをもたらすこともある。

ガライ氏は「(オートマティックイールドは)PVを取引通貨にしない。『エンゲージメントを通貨にしたユーザー中心のマーケットプレイス』」と説明する。

リアルタイムにページの収益性を把握

リアルタイムの価格決定にはトラフィックに対する粒度の細かい測定・評価も重要な要素になるはずだが、ここはレコメンデーションをするアウトブレインが得意にする分野だという。ガライ氏は「アウトブレインでは読者がどのコンテンツにエンゲージメントしやすいかを、さまざまなパラメータから分析している。多量のデータから『このタイプのユーザー群にはこのコンテンツが合う』ことを理解できている。パブリッシャーは流入するユーザーから自社にエンゲージしているユーザーとそうでないユーザーを判別できる。メディアの価値を向上させるためにはどのようなプラットフォームからどのようなユーザーを引き寄せるべきか、という判断の質を挙げられる」と説明する。

これは既存のデジタル広告の取引形態とは異なる枠組みを提案している、ということ。「通貨」と「市場」と「価格メカニズム」をアウトブレインがステークホルダーに提供しようという考えだ。

ガライ氏は「買い手にはプログラマティックの買い付けという利点を提供しようとしている。アップネクサス(AppNexus)を通じた入札が可能になった」と語った。海外ではアウトブレインプログラマティクアクセス(OPA)を通じた、DSPなどの買い付けを許容しており、買い手側にはプログラマティックですべてを完結できる利点が渡される。インタビュー後の7月25日にはソルベニア発のDSPであるZemantaの買収を発表。アウトブレインは買いから売りまで直通のサプライチェーンを獲得したことになる。

DSC_9841アウトブレイン(OutBrain)共同創設者兼CEO(最高経営責任者)ヤロン・ガライ氏(左)。主にAPACを担当しているマネージングダイレクターのエイタン・ガライ氏。吉田拓史撮影

ガライ氏は連続起業家でアウトブレインが4社目の設立。設立したスタートアップはAOL→Verizon(米Yahooとも統合)やAtlas(後にマイクロソフト→Facebook)に買収されている。つまり、デジタル広告の黎明期から業界に関与し続けており、とてもデジタル広告の世界に精通している。

Written by 吉田拓史 / Takushi Yoshida
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