出会い系「Tinder」、高コンバージョン率にブランドが熱視線。なぜ、そんなに誘導できるのか?

アメリカでは、ネットサービスを利用した「恋人探し」は一般的だ。細かな趣味嗜好を叶えるために、合理的なソリューションとして、多く利用されている。そのようないわゆる「出会い系」サービスに、日本で感じるようなネガティブな印象は少ない。

そんななか、スマホアプリの「Tinder(ティンダー)」というサービスが注目を集めている。まず目を引くのは、その手軽さだ。アカウント作成は、Facebookログインで一発。細かなプロフィールを作成する必要もない。

そして、特にユニークなのが、そのUI(ユーザーインターフェイス)である。基本的にはただスワイプするだけ。GPSデータで抽出された、近くに存在する恋愛対象候補のプロフィール写真が次々と画面上に表示され、それを興味の有無で左右に取捨選択していくのだ。

この「Tinder」を利用すると、ユーザーはまるでゲームをしているような感覚に陥るという。そのため、日常のストレスを忘れてスワイプに熱中してしまうほど、中毒性があるのだとか。この「Tinder」がいま、マーケティングの場として、ブランドの注目を集めている。

「Tinder(ティンダー)」のプロモーション動画。
再生開始から24秒くらいのところで、使い方の概要が紹介されている。

「Tinder」の広告需要は高まる一方

現在、ユーザー数は、全世界で約5000万人。1日あたりのスワイプ回数は、10億回にも上る。同社の共同創業者兼CEOシーン・ラッド氏によると、ユーザーの5人に1人がブランド系広告をスワイプしている状況らしく、広告需要は高まる一方だという。

実際に、広告主は「Tinder」に広告を出すことで、大きな効果を得ている。なにしろユーザーは、能動的に出会いを求めているため、心理的に振れ幅の大きい状態にあることが多い。なにかを期待しながら、もしくは感傷的になりながら、プロフィール写真を選り分けている最中に、ネイティブな形でブランド広告が表示されると、気休め的な役割を果たすという。しかも、操作は左右のスワイプしかないので、必然的にエンゲージメント率は高くなるのだ。

「Tinder」を使った、動物救助団体のプロモーション例。
さまざまな男性のプロフィール写真に捨て犬の写真が差し込まれる(via ギズモード・ジャパン)。

期待される高いコンバージョン率

一方、ブランドは、どうやったら出会いに積極的な男女にリーチできるか、日々模索している。このように積極的な人たちは、購買意欲も比較的高いと予測しているからだ。「Tinder」を利用するということは、ある意味、自分の現状に満足していないことを意味し、それは多くの広告主にとって、とても大きなチャンスなのである。

広告主はFacebookログインで利用できるほかのアプリ同様、「Tinder」ユーザーの年齢や位置情報、興味などのターゲティングができる。そのうえ、「Tinder」での行動をベースに、細かくユーザーの特徴を分類できることも、広告主にとってはおいしいところだ。オンライン広告のあり方を考えるネット広告サービス業界団体(NAI)が、12の広告ネットワークに行った調査によると、現状ではユーザー行動からターゲット化された広告のコンバージョン率は6.8%で、ターゲット化されなかった広告の2.8%を上回っている。

「Tinder」を使った、ビールブランドのプロモーション例。女性からのメッセージで、
「そんなことせずにパブで声を掛けて」と訴えられる内容。しかもクーポン付き。(via Ad Gang)。

ターゲティングによる広告の進化

「Tinder」が分析したユーザーの行動傾向によると、たとえば、スワイプを繰り返す回数が非常に多いユーザーは、自身の欲求を満たすための手段に、よりお金をかける傾向があるという。また、マッチング率の低い人は、ブランドが表示されるとスワイプしたがる傾向があり、何度も拒まれた後に得るマッチングによって自尊心が大きく満たされる傾向にあることもわかっている。

その他にも、1分間に10回以上スワイプしたり、2つ以上のメッセージを送ったりしているユーザーは、より高度なデータを提供していることになり、広告主たちはよりターゲティング化された広告オファーが出来るということになる。

だが、「Tinder」で広告キャンペーンを成功させるには、広告主はその独特なUIとUXを正確に理解しなければならない。目障りで押し付けがましいインタースティシャル広告と違い、ブランドは「Tinder」のユーザーにあたかも最初からあったような感覚をもたせるネイティブ広告を作ることが出来るはずだ。

しかし、広告主は「Tinder」でどのような広告を流し、どのようなUIにすればもっとも最適化できるのか、明確な答えを持っていない。ディスプレイとビデオの割合はどうするのか。マッチングしたあと、ユーザーといかに会話をもつのか、それともCTA(コール・トゥ・アクション)にeコマースページへ誘導させるのか。議論する余地はまだまだ残るが、それでもブランド各社は「Tinder」のユーザー行動などから、広告の最適化を模索し続けることで、得られるメリットは大きいだろう。

Max Marine(原文/ 訳:南如水)