昔ながらのテレビ的王道営業でも「左うちわ」なHulu:デジタルメディアなんぞ敵じゃない?

去る5月2日から13日まで、2週間に渡ってニューヨークで開催された、デジタルメディア広告枠の販売イベント「デジタルコンテンツ・ニューフロンツ 2016(Digital Content NewFronts 2016)」。広告主たちを前に、おびただしい数の企業がプレゼンテーションを行い、「動画コンテンツの未来を担うのは自分たちだ」という理由を訴えかけていた。

だが、Hulu(フールー)が自信ありげに披露したのは、やや時代遅れな感じがするもの、つまりテレビの未来だった。Huluは自社のプレゼンテーションに、テレビ広告枠の販売イベント「アップフロント(Upfront)」の名を含む「Hulu Upfront 2016」というタイトルを付けて来場者を歓迎していたのだ。

昔ながらのテレビ的王道営業

実際、マディソンスクエアガーデンで行われた90分近いプレゼンテーションで、Huluが「ニューフロント(NewFront)」という言葉を使うことは一度もなかった。「Facebook」「YouTube」「Snapchat(スナップチャット)」といった言葉も出てこない。Huluは、自らをNetflix(ネットフリックス)やAmazonなど、テレビ放送のストリーミング配信を手がける大手企業にとって、新たなライバルとして位置づける従来の姿勢を貫いていた。

デジタスLBi(DigitasLBi)の最高コンテンツ責任者であるスコット・ドナトン氏は、「(Huluは)ブランドと提携してオリジナルの番組を作ることに、あまり重点を置かない傾向がある。自分たちが所有するコンテンツのこともあって、彼らはテレビ広告枠販売により近いアプローチを採っている」。

たしかに、Huluのイベントでは、昔ながらのテレビ広告枠の販売イベント的な演出がなされていた。アーロン・ポール、ヒュー・ローリー、エイミー・ポーラーといった有名人たちがステージを飾るなか、Huluは彼らの出演した番組を紹介していたのだ。

強みは増え続ける会員数

Huluのユーザーは増え続けており、米国における登録会員数は1200万人に近づいている。Netflixの4750万人に比べれば、やや見劣りのする数字ではあるが、それでも2015年と比べて2016年は33%も増えているのだ。

Huluの最高経営責任者(CEO)を務めるマイク・ホプキンス氏によれば、すべての種類のデバイスを合わせたユニーク視聴者数は3000万人で、ネットに接続されたテレビからの視聴が、その70%を占めているという。「Huluでは、『我々と一緒にテレビを見よう』(Come TV with us)と視聴者に呼びかけており、彼らは大挙して、この誘いに応じてくれている」と、ホプキンス氏は語った。

Web番組に近い感覚のオリジナル番組を放送していたこともあるHuluは、高品質のコンテンツでも勝負に出ている。ジェームズ・フランコがタイムトラベラーとなって過去に戻り、ジョン・F・ケネディ元大統領の暗殺を阻止する連続ミニドラマ「11.22.63」(TOP画像)は、多くの視聴者を引き寄せたとホプキンス氏は言う。このドラマが初放映された日は、有料会員への申し込みが同社の歴史上、もっとも多い日となった。

また、この週は2015年におけるほかのどの週よりも多くの視聴者数を記録。このような傾向は、ほかのオリジナルシリーズ番組の初放映日にも観測されており、「チャンス(Chance)」や「ザ・ハンドメイズ・テイル(The Handmaid’s Tale)」といった2016年放送予定の番組でも同じ現象が期待できると、ホプキンス氏は述べている。

乱立するデジタルメディアを尻目に

Huluは、来年早々にもごく少数のテレビ番組をストリーミング配信する計画だと報じられているが、このことは同社がいかにテレビ好きであるかをよく示す出来事だろう。ホプキンス氏はこの報道を認めたものの、どのテレビ局の放送が含まれるのか明らかにはしていない。

巷の憶測では、ディズニーABCテレビジョングループ(Disney–ABC Television Group)やフォックス・ブロードキャスティング・カンパニー(Fox Broadcasting Company)がHuluの株主として名を連ねていることから、「ESPN」などのスポーツチャンネルが番組を提供すると見られている。

デジタルメディア広告枠の乱立に混乱している広告主らが、Huluに惹きつけられていることは間違いない。ホプキンス氏によれば、その理由のひとつは、「圧倒的大多数」の有料会員が、月額7.99ドル(約900円)の広告付きオプションを選んでいることだという。広告なしオプションは、月額11.99ドル(約1300円)で、あまり人気がないのだ。

テレビとデジタルの架け橋

「Huluはいつも非常によく練られたプレゼンテーションをしているが、騒々しさからは距離を置いている。彼らはニューフロントのイベントのなかでユニークな存在だ」と、ホライゾン・メディア(Horizon Media)でエグゼクティブバイスプレジデント兼マネージングディレクターを務めるサラ・バエル氏は指摘する。

メディアバイイングエージェンシーのホライゾンは自社の動画チームのメンバーをこのイベントに派遣したが、メーカースタジオ(Maker Studios)のイベントなどには、インフルエンサーマーケティング部門のメンバーを出席させるという。バエル氏は、Huluがテレビ広告枠の買い付けとデジタルメディア広告枠の買い付けの間にある溝を埋めてくれると考えている。

「Huluに魅力を感じたとしても、突飛なことではない。彼らはノーカットのコンテンツを所有しており、その規模とプラットフォームは、人々がコンテンツを視聴する方法と非常にマッチしている。これはもうひとつのネットワーク(テレビ局)なのだ」とバエル氏は語った。

新しい技術にも敏感に反応

Huluはどちらかといえば古いメディアを重視しているが、新しいものにまったく手を出さないわけではない。実際、仮想現実(VR)分野で実験的な取り組みも手がけている。同社のVRアプリでも、「ディスカバリーチャンネル(Discovery Channel)」「ナショナルジオグラフィックチャンネル(National Geographic Channel)」「ショータイム(Showtime)」など、25のパートナーのコンテンツを提供してきた。

Huluで広告販売担当シニアバイスプレジデントを務めるピーター・ネイラー氏によれば、ユーザーがこのアプリを利用する時間はセッションあたり12分。Huluはこの分野への取り組みをさらに進めるために、ライブイベントのプロデュースを手がけるライブ・ネイション(Live Nation)と提携し、トップミュージシャンが出演するVR番組シリーズを提供する計画だ。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)